「Impellaが入った患者さんを担当することになった…でも正直まだよくわかっていない」
そんな経験はありませんか?
Impella(インペラ)は近年急速に普及している補助循環デバイスですが、構造・管理・アラーム対応など、覚えることが多くて戸惑う看護師も多いのが現状です。
この記事では、ICU・CCUで実際によく出る疑問20問をQ&A形式でまとめました。ポジション管理からパージ液の使い分け・除細動時の対応まで、現場でそのまま使える内容を目指しています。
難しい用語はできるだけ噛み砕いて解説していますので、Impellaを初めて担当する方にも、復習したい方にもお役立てください。
「インペラって何をしているデバイス?」「アラームが鳴ったらどうすれば?」「体位変換はどこまで動かしていいの?」
現場でよく挙がる疑問を、Q&A形式でわかりやすくまとめました。
目次
- Impellaの基本
- IABPとの違いは?
- 日常管理・観察のポイント
- ポジション管理
- パージ液の管理
- アラーム対応
- 合併症と看護観察
- 体位変換・日常ケア
- ドクターにすぐ報告すべき状況
- 除細動(DC)時の対応
- ECPELLAって何?
基本編
Q1. Impella(インペラ)とは何ですか?
A. Impellaは、心臓の左心室に直接挿入する超小型の補助循環用ポンプカテーテルです。カテーテルの先端についた小さなプロペラ(インペラブレード)が毎分数万回転し、左心室から大動脈へ血液を送り出すことで、弱った心臓の代わりに全身へ血液を届けます。
ポイントは「心臓を休ませながら、血液を送る」こと。心原性ショックや急性心筋梗塞などで心臓が限界のときに活躍するデバイスです。
ひとことメモ
IABPが「心臓のタイミングを補助する」デバイスなのに対して、Impellaは「心臓の代わりにポンプで血液を送る」能動的なデバイスです。
Q2. 日本で使われているImpellaの種類を教えてください
A. 現在、日本で使用できる主なモデルは以下のとおりです。
| モデル | 挿入方法 | 最大補助流量 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| Impella 2.5 | 経皮的(大腿動脈) | 約2.5 L/min | 比較的細く挿入しやすい |
| Impella CP | 経皮的(大腿動脈) | 約3.5 L/min | 最もよく使われる標準モデル |
| Impella 5.0 / 5.5 | 外科的切開が必要 | 約5.0 L/min | 大きな補助が必要な重症例に |
補助レベルはP0(最小)〜P9(最大)の10段階で調整します。P0はほぼ補助なし、P8〜P9が最大補助です。
Q3. どんな患者さんに使われますか?
A. 主な適応は以下のとおりです。
- 心原性ショック(急性心筋梗塞、急性心筋炎など)
- 薬物療法では血行動態が保てない重症心不全
- カテーテル治療(PCI)の補助
- 心臓手術の周術期管理
内科的治療(昇圧薬や利尿剤)でも改善が見込めない場合の「最後の砦」として使われることが多いです。
IABPとの比較
Q4. IABPとの違いは何ですか?
A. 補助循環デバイスとしてよく比較されますが、根本的な仕組みが違います。
| 比較項目 | IABP | Impella |
|---|---|---|
| 仕組み | バルーンの膨張・収縮で補助 | プロペラポンプが能動的に血液を送る |
| 挿入部位 | 大動脈(胸部) | 左心室〜大動脈弁をまたぐ |
| 補助流量 | 約0.5 L/min | 2.5〜5.0 L/min |
| 心拍への依存 | あり(心拍数・リズムに同期) | なし(独立して動く) |
| 左室アンロード | 弱い | 強い(左室の負担を大きく軽減) |
Impellaは心臓が止まっていても補助できる点が大きな強みです。
日常管理
Q5. 毎日・毎勤務で確認すべきことは何ですか?
A. 以下のチェックポイントを必ず確認しましょう。
【コントローラーの確認】
- 補助レベル(P0〜P9)が指示通りか
- モーターカレント(モーター電流)の数値
- パージ液の残量・流速
- アラームの有無
【患者さんの全身状態の確認】
- 血圧・心拍数・SpO2
- 心拍出量(CO)・心係数(CI)
- 尿量(腎灌流の指標)
- 穿刺部(大腿部)の出血・血腫・腫れの有無
- 挿入側の下肢:色・温度・末梢動脈触知・痺れや痛みの訴え
【固定の確認】
- シース固定リング(2か所)がしっかり閉まっているか
- 滅菌スリーブ接続部が外れていないか
- カテーテルシャフトのマーカー深さに変化がないか
ポジション管理
Q6. Impellaのポジションがずれるとどうなりますか?
A. Impellaは大動脈弁をまたいで、先端を左心室内、本体を大動脈内に置いた状態で使用します。このポジションがずれると…
- 先端が左心室に入りすぎ(深すぎ) → 心室壁を傷つける・不整脈のリスク
- 先端が大動脈弁より出すぎ(浅すぎ) → 大動脈弁にダメージ・補助効果が激減
- 不安定な位置 → アラームが鳴り続け、十分な補助ができない
そのため、ポジションは毎日エコーで確認することが推奨されています。
Q7. ポジション異常を示すアラームにはどんな種類がありますか?
A. コントローラーに表示される主なポジションアラームは以下のとおりです。
| アラーム名 | 意味 |
|---|---|
| ポンプ位置:心室内 | Impellaが左心室内に入りすぎている |
| ポンプ位置不良 | 適切な位置からずれている |
| ポンプ位置不明 | センサーで位置が確認できない状態 |
いずれのアラームも即座に医師へ報告し、心エコーでの位置確認と再調整を依頼してください。
パージ液
Q8. パージ液とは何ですか?なぜ必要ですか?
A. パージ液とは、Impellaのモーター部分を保護するために使用する液体です。
目的: モーター内への血液の侵入を防ぎ、血栓形成を予防するため
モーター側から血流と逆方向にパージ液を流し続けることで、モーター内で血液が固まらないようにしています。パージ液には主に2種類あり、患者さんの状態や施設のプロトコルによって使い分けられます。
Q9. ヘパリン加パージ液と重炭酸ナトリウム(炭酸水素ナトリウム)パージ液、何が違うのですか?
A. それぞれの特徴と使い分けの理由を整理します。
| 比較項目 | ヘパリン加パージ液 | 重炭酸ナトリウムパージ液 |
|---|---|---|
| 組成の例 | 5%ブドウ糖液 500mL+ヘパリン(施設によって濃度は異なる) | 炭酸水素ナトリウム注射液(7.0%など) |
| 抗凝固の仕組み | ヘパリンが直接トロンビンを阻害し血栓を予防 | アルカリ性(pH高い)環境がタンパク変性・血液凝固を抑制 |
| 主な使用場面 | 標準的な第一選択。全身抗凝固が必要な症例 | ヘパリンが使えない症例 |
| ヘパリン禁忌の例 | — | HIT(ヘパリン起因性血小板減少症)、ヘパリンアレルギー |
| 注意点 | 出血リスクのある患者では調整が必要 | 電解質(ナトリウム)バランスへの影響に注意 |
ポイント:なぜ重炭酸ナトリウムが使われるのか?
ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)とは、ヘパリン投与によって血小板が減少し、逆に血栓リスクが高まる重篤な副作用です。HITが疑われる・診断されている患者さんにヘパリンを使うと状態が悪化するため、代替として重炭酸ナトリウムのアルカリ性環境を利用して血栓を防ぎます。
現場のポイント
どちらのパージ液を使用しているかは、患者さんの既往・アレルギー歴・血液データと合わせて把握しておきましょう。使用しているパージ液の種類は引き継ぎ・申し送りで必ず確認を。
Q10. パージ液の管理で注意することは?
A.
- 残量確認:空になるとモーターが損傷するので、残量が少なくなる前に交換
- 流速確認:設定された流速(mL/h)が保たれているか定期確認
- パージ圧:コントローラー画面でパージ圧が正常範囲内かチェック
- 色調変化:パージ液が赤くなっている場合は溶血・デバイス異常の可能性 → 医師へ報告
- パージ液の種類の確認:ヘパリン加か重炭酸ナトリウムかを申し送りで必ず引き継ぐ
アラーム対応
Q11. アラームが鳴ったとき、最初にすることは何ですか?
A. まず焦らずコントローラーの画面を確認しましょう。アラームの種類によって対応が変わります。
アラーム対応の基本ステップ:
- アラーム内容を画面で確認する
- 患者さんのバイタルサインと全身状態を確認する
- アラームの種類に応じて対応する(下表参照)
- 改善しない・状態悪化の場合はすぐ医師・臨床工学技士へ連絡
| アラームの種類 | 主な原因 | 対応 |
|---|---|---|
| ポジションアラーム | Impellaの位置ずれ | 医師へ報告・エコーで確認 |
| サクションアラーム | 流量多すぎ・前負荷低下 | 補助レベルを下げる・医師へ報告 |
| パージ圧低下 | パージ液残量低下・閉塞 | パージ液確認・交換 |
| モーター異常 | モーター故障・血栓 | 臨床工学技士・医師へ緊急連絡 |
Q12. サクションアラームとはどういう意味ですか?
A. サクションアラームとは、Impellaが左心室から血液を吸い込もうとしても、吸い込む血液が足りていない状態(過剰吸引)を示すアラームです。
原因として考えられること:
- 前負荷の低下(脱水・出血・輸液不足)
- 補助レベル(P数)が高すぎる
- Impellaの位置ずれで心室壁を吸ってしまっている
対応:
補助レベルを一段階下げて様子を見る、輸液の検討、医師へ報告、ポジション確認を行います。
合併症
Q13. Impella使用中に起こりやすい合併症は何ですか?
A. 代表的な合併症と観察ポイントをまとめました。
① 溶血(ヘモリシス)
- 回転するプロペラが赤血球を壊すことで起こる
- 観察:尿の色(血尿・ポートワイン色)、LDH・ハプトグロビン値、血清遊離ヘモグロビン
② 穿刺部の出血・血腫
- 挿入部(大腿部)からの出血
- 観察:穿刺部の視診(腫れ・硬結・滲み出し)、バイタルサイン、Hb値の推移
③ 下肢虚血
- 太いカテーテルが大腿動脈を部分的に塞ぐため
- 観察:挿入側の足の色(蒼白・チアノーゼ)、皮膚温度、末梢動脈拍動(足背・後脛骨動脈)、しびれや痛みの訴え
④ 感染
- カテーテル留置に伴う感染リスク
- 観察:穿刺部の発赤・熱感・膿性分泌物、発熱、白血球・CRP値
⑤ 不整脈
- Impellaの位置ずれで心室を刺激した場合
- 観察:心電図モニタリング、不整脈の種類・頻度
Q14. 下肢虚血はどのタイミングで医師に報告すればいいですか?
A. 以下のような変化があればすぐに報告してください。
- 挿入側の足が蒼白・冷たくなった
- 足背動脈・後脛骨動脈の拍動が弱くなった・触れなくなった
- 患者さんが「足がしびれる」「足が痛い」と訴えている
- 挿入側と反対側の足の色や温度に明らかな差がある
早期発見・早期対応が下肢の虚血壊死を防ぐために非常に重要です。
体位変換
Q15. Impella挿入中はどこまでベッドを上げられますか?
A. 一般的にはベッドアップ30°までが目安とされています。
理由:
- ベッドフラット(0°)のまま長時間いると、誤嚥や無気肺のリスクが高まる
- ベッドを上げすぎると、下肢虚血のリスクやImpellaのポジションずれが起きやすくなる
ただし、施設のプロトコルや患者さんの状態によって異なります。必ず主治医・担当医に確認を取ってから行いましょう。
Q16. 体位変換のときに気をつけることは?
A. 以下のポイントを守って、安全に体位変換を行いましょう。
- 必ず2名で実施する(血行動態の急変に備えて)
- 挿入側の下肢は伸展位を保つ(膝を曲げない・股関節屈曲を避ける)
- 体位変換後にバイタルサインを確認する
- カテーテルのマーカー深さが変わっていないか確認する
- アラームが鳴った場合はすぐ医師へ報告
報告基準
Q17. Impella管理中に「すぐ医師へ報告」すべき状況をまとめて教えてください
A. 以下の状況では迷わず報告してください。
| 状況 | 緊急度 |
|---|---|
| ポジションアラームが鳴っている | 高 |
| 血圧が急激に低下した | 高 |
| 挿入側の下肢が蒼白・冷感・動脈触れない | 高 |
| 穿刺部から大量出血している | 高 |
| 尿が赤い・コーラ色になった | 高 |
| パージ液が赤く染まっている | 高 |
| 不整脈が頻発している | 高 |
| SpO2が急に低下した | 高 |
| サクションアラームが繰り返す | 中〜高 |
| 穿刺部に新たな腫れ・硬さが出た | 中 |
「なんかおかしい」と感じたら、まず報告する姿勢が大切です。
除細動(DC)時の対応
Q18. 除細動(DC)をかけるとき、Impellaはどうすればよいですか?
A. 結論から言うと、Impellaは原則として停止せずそのまま稼働させたままで除細動を行うことができます。
Impellaのコントローラーは除細動(電気ショック)に耐えられる設計になっていますが、いくつかの注意点があります。
除細動前に確認すること:
- パドル(電極)をImpellaのコントローラーや挿入部の上に直接当てない
- パドルは標準的な位置(前胸部・背部、または前胸部・側胸部)に正しく配置する
- 接触不良がないかゲルや電極の確認をする
除細動後に確認すること:
| 確認項目 | なぜ確認するか |
|---|---|
| コントローラーのアラーム | 電気ショックでリセットや誤作動が起きていないか |
| 補助レベル(P数)の表示 | 設定値が変わっていないか |
| Impellaのポジション | 心臓の動きが変わりポジションがずれた可能性がある |
| パージ液の流速・残量 | 異常がないか |
| 患者の血行動態 | 除細動後の循環状態を素早く評価 |
現場のポイント
CPR(心肺蘇生)中もImpellaは稼働し続けることができます。ただし、CPR中は補助レベルをP2に下げるのが原則です。心停止中は左室への血液流入がないため、高い補助レベルのままでは心室壁を吸い込むサクションが起きてしまうためです。ROSC(自己心拍再開)後に元の補助レベルに戻し、ポジションも必ず確認しましょう。
Q19. 除細動中にサクションアラームが鳴りました。どうすればよいですか?
A. 心室細動(Vf)や心停止の状態では心臓が拍出できていないため、Impellaが左心室から血液を吸い込もうとしてもうまく吸えず、サクションアラームが鳴ることがあります。
対応の考え方:
- 補助レベルをP2に下げる → 心停止中は左心室への流入血液がほぼなく、高い補助レベルのままでは心室壁を吸い込む過剰吸引が起きるため
- CPR・除細動を継続する
- ROSC(自己心拍再開)後に補助レベルを元の設定に戻す
- ポジション・パージ液・全身状態を再確認する
なぜP2なのか?
P0(最小)にすると補助がほぼゼロになりますが、P2はモーターを最低限動かしつつ吸引力を大きく抑えられる設定です。完全に停止させるよりもデバイスの保護と最低限の循環補助を両立できるため、P2が推奨されています(施設プロトコルに従うこと)。
注意
アラームが鳴っているからといって除細動やCPRを中断してはいけません。患者さんの蘇生を最優先にしながら、Impellaの状態は後から確認するという順番を覚えておきましょう。
ECPELLA
Q20. 「ECPELLA」という言葉を聞きましたが、何ですか?
A. ECPELLAとは、ECMO(体外式膜型人工肺)とImpellaを同時に使用する治療法のことです。
それぞれの特徴を組み合わせることで、より重症な心原性ショックの患者さんに対応します。
| デバイス | 得意なこと |
|---|---|
| ECMO | 全身への血流・酸素化を代行 |
| Impella | 左室のアンロード(心臓の負担軽減) |
ECMOだけでは左室に血液が溜まりやすく、心臓への負担が増えることがあります。そこにImpellaを組み合わせることで、左室を積極的にアンロードし、心臓の回復を助けます。
非常に重症な患者さんへの管理になるため、ICU・CCUでの厳密な観察と多職種チームの連携が欠かせません。
まとめ
Impellaは、弱った心臓を「休ませながら助ける」革新的なデバイスです。複雑に見えますが、基本を押さえれば看護の視点でしっかり管理できます。
看護師として特に大切な3つのこと:
- ポジションと固定の確認を怠らない
- 合併症(溶血・出血・下肢虚血)の早期発見
- アラームの意味を理解し、落ち着いて対応する
「わからないこと・気になること」は一人で抱え込まず、医師や臨床工学技士に積極的に相談しましょう。チームで守る、患者さんの命です。
参考資料:
・看護roo! 「循環補助用心内留置型ポンプカテーテル挿入患者の看護」
・長崎大学病院 循環器内科「心原性ショックに対する補助循環装置 IMPELLA(インペラ)とは」
・東京都健康長寿医療センター「インペラ(IMPELLA):補助循環用ポンプカテーテル」
・水戸済生会総合病院「インぺラについて」
ECMOと併用する「エクペラ」については、ECPELLA(エクペラ)とは|VA-ECMOとインペラを併用する理由を看護師目線でにまとめています。
インペラシリーズの記事一覧
インペラについては、次の記事を書いています。気になるところから読んでみてください。
基本を知る
- インペラ(Impella)看護Q&A完全ガイド(この記事)
- インペラ(Impella)の見方の基本|看護師のためのアセスメント入門
- インペラ(Impella)のCPOとは|数値の見方と看護アセスメント
どんな患者さんに使うのか
困ったときに読む
- インペラ(Impella)のアラーム対応早見表|原因と最初にやること
- インペラ(Impella)のサクションアラーム|原因と看護の対応
- インペラ(Impella)の溶血とは|尿の色・採血データで気づくサイン
- インペラ(Impella)装着中の急変対応|深夜のVf発生シナリオで学ぶ
終わりに向かって
ほかの機械と比べる・組み合わせる
- IABPとインペラ(Impella)の違い|初めて担当する看護師の10の疑問
- ECPELLA(エクペラ)とは|VA-ECMOとインペラを併用する理由を看護師目線で
- VA-ECMO(PCPS)看護Q&Aガイド|仕組み・観察・トラブル対応まとめ
- 補助循環の未来を、勝手に語る
わたしは、看護が好きです。
だからこそ、看護の価値を問い続けていたいと思っています。



