Impellaを受け持っていて、いちばんよく出会うアラームがサクションだと思います。
鳴るたびに補助レベルを下げて、しばらくすると落ち着く。そういう対応をしている方も多いのではないでしょうか。
ただ、サクションは「機械の都合」ではありません。患者さんの体で何かが起きているサインです。
この記事では、何が起きているのか、何を見て、どの順で動くのかを整理します。
Q1. サクションでは、何が起きているのですか?
Impellaが、吸いたいだけ吸えていない状態です。
Impellaは左室から血液を吸って、大動脈へ送り出しています。そのためには左室に血液が入っていることが前提になります。
左室が空に近かったり、吸入部が壁や構造物に当たっていたりすると、吸えません。ハンドブックにはこう書かれています。
Impella が吸入できる血液量が不十分、または制限されると、サクションが起こることがあります
起きることは、3つあります
- 循環補助が制限される ── 結果として動脈圧と心拍出量が下がります
- 溶血につながる ── 血球を損傷する可能性があります
- 右心不全のサインであることがある ── 左室に血液が届いていないのは、右心が送れていないからかもしれません
3つめが見落とされやすいところです。サクションは、左心の問題とはかぎりません。
Q2. 何を見て気づくのですか?
アラームが鳴る前から、いくつかサインが出ています。
| どこを見るか | サクションのとき |
|---|---|
| アラーム | 「サクション」または「ポンプ流量 低下」 |
| 補助流量 | 設定した目標流量を下回る |
| 平均モータ消費電流 | 徐々に減っていく(画面の時間目盛は5分) |
| 血圧 | 下がってくる |
| 波形 | いつもと違う乱れが出る |
モータ消費電流の「徐々に減る」は、目を留めておきたいところです。アラームは鳴った瞬間に気づきますが、電流はその前から動いています。5分の目盛で見ていると、下り坂に入っているのが分かります。
Q3. 原因は、大きく2つに分けられます
ハンドブックは、原因を2つに整理しています。この分け方を持っていると、対応の順番が決まります。
① 位置の問題 ── 吸入部が、壁に当たっている
Impellaが深く入りすぎている、あるいは後壁のほうを向いている。そうすると吸入部が左室内の構造物に当たって、脱血が妨げられます。
左室に血液があっても、位置が悪ければ吸えません。ここは大事なところです。
② 左室が満たされていない
そもそも左室に血液が入ってきていない場合です。背景はいくつかあります。
- 循環血液量の不足(出血、脱水)
- 右心不全(右心が肺へ送れていない)
- 肺血管抵抗の上昇
- VA-ECMO(PCPS)併用による影響
ハンドブックには、こう書かれています。
Impella の動作の安定性は左室のフィリングに依存します。左室内に血液がないと安定的に脱血ができません
Q4. 対応は、この順番です
制御装置の画面には、3つの指示が出ます。
- 補助レベルを下げてください
- 左室フィリングと循環血液量を確認してください
- ポンプ位置を確認してください
ハンドブックには、もう少し具体的な5つの手順があります。
- 補助レベルを1〜2段階下げる
- インアウトバランスを確認する。中心静脈圧が10mmHg以下なら、補液を検討する
- 留置位置を確認する(制御装置のポンプ位置画面、透視、心エコー)
- 右心不全の兆候がないことを確認する(中心静脈圧の測定や画像診断で)
- 補助レベルを、アラームが出る前の設定に戻す
5番目を忘れないでください。下げたままにしておくと、必要な補助が足りない状態が続きます。原因が片づいたら、元に戻すところまでが対応です。
2番の「中心静脈圧が10mmHg以下なら補液を検討」という数字は、覚えておくと役に立ちます。「なんとなく足りなさそう」ではなく、見るべき数字があるということです。
ただし、補液も補助レベルの変更も、看護師だけで決めることではありません。気づいて、確認して、医師や臨床工学技士に伝える。そこまでが看護師の動きになります。
Q5. CVPが高いのに、サクションが出るときは?
右心不全を考えます。
中心静脈圧が高いということは、右心の手前には血液がたまっているということです。それなのに左室が満たされていない。
つまり、右心から肺を通って左心へ、血液が渡れていないということになります。ここで補液をしても、たまっている側をさらに増やすだけです。
「サクション=水分が足りない」と一本道で考えると、ここで判断を誤ります。CVPを一緒に見る意味は、そこにあります。
Q6. 何度も繰り返すときは?
ハンドブックは、サクションが頻発すること自体を「安定して作動していないサイン」として扱っています。
その場合の順番も決まっています。
- まず、Impellaが適正な位置にあることを確認する
- 次に、補助に必要なだけの左室フィリングがあるかを評価する
位置が先です。ボリュームをいくら足しても、位置が悪ければ吸えないからです。
そのうえで、全身の循環血液量(出血や脱水がないか)、肺循環(右心機能、肺血管抵抗、VA-ECMO併用の影響)まで見ていくことになります。
アラーム音は消せます。ただし
サクションアラームは、画面に表示したまま音だけを消すことができます(メニュー → サービス用設定)。
ただし、ハンドブックにこう書かれています。
アラームが解除されてもアラーム音オフ機能は自動で解除されません
消したら、戻す。消したままにしておくと、次のサクションに音で気づけなくなります。申し送りで伝えることでもあります。
看護師のチェックポイント
- 補助流量が目標を下回っていないか
- 平均モータ消費電流が、じわじわ下がっていないか
- 血圧が下がってきていないか
- CVPは高いのか、低いのか(10mmHg以下か、それとも高いのか)
- 尿の色(溶血の可能性)
- 体位を変えたあとではないか(位置がずれる場面です)
- 補助レベルを下げたまま、戻し忘れていないか
- アラーム音を消したまま、戻し忘れていないか
おわりに
サクションは、鳴りやませば終わり、という所見ではありません。
「吸えていない」という事実の裏に、必ず理由があります。位置なのか、血が足りないのか、右心が送れていないのか。
補助レベルを下げれば、たいていアラームは止まります。でもそれは症状を消しただけで、理由はまだそこにあります。
下げたあとに何を確かめるか。そして、確かめ終わったら元に戻せているか。そこまでが、ひとつの対応です。
アラーム全般の対応は、インペラ(Impella)のアラーム対応早見表|原因と最初にやることにまとめています。
サクションの先にある溶血については、インペラ(Impella)の溶血とは|尿の色・採血データで気づくサインをどうぞ。
圧と流量をあわせて見る指標は、インペラ(Impella)のCPOとは|数値の見方と看護アセスメントに書いています。
インペラ全体の観察項目は、インペラ(Impella)看護Q&A完全ガイド|観察項目・アラーム対応まとめにまとめています。
わたしは、看護が好きです。
だからこそ、看護の価値を問い続けていたいと思っています。
参考にした資料
- Impella テキストブック(2022年版・日本アビオメッド)── サクションの原因と結果、制御装置の指示、対応の5手順、中心静脈圧10mmHgの目安、モータ消費電流の変化、左室フィリングと安定的なポンプ駆動環境、アラーム音オフ機能
※この記事は一般的な情報であり、個別の医療判断に代わるものではありません。補助レベルの変更、補液、位置の調整は、必ず主治医・臨床工学技士・院内の基準にしたがってください。数値は機種やバージョン、患者さんの状態によって異なります。



