深夜3時。モニターのアラームに重なって、インペラの制御装置が鳴り出す。画面には英語のメッセージ——一瞬、手が止まる。
この記事は、そんな瞬間に開く「早見表」です。読み物ではなく、引く道具。ブックマークして、夜勤のお守りにしてください。
【はじめにお断り】機種(2.5/CP/5.0/5.5)やソフトウェアのバージョンによって、アラームの表記や対応は異なります。本記事は一般的な整理です。正式には制御装置の取扱説明書と自施設のプロトコル、医師の指示に従ってください。
まず「色」を見る——アラームは3色で緊急度がわかる
インペラの制御装置のアラームは、緊急度で色分けされています。
- 🔴 赤:補助が止まっている・重大 → その場を離れず、人を呼ぶ
- 🟡 黄:ポンプは動いているが、補助が不十分 → 原因検索を始める
- ⚪ 白:情報のお知らせ → 落ち着いて内容を確認
英語のメッセージがすぐ読めなくても、色だけで「最初の動き」は決められます。まずここを押さえてください。
アラーム別 早見表
| アラーム | 考えられる原因 | 最初にやること | 報告の目安 |
|---|---|---|---|
| サクション(吸引) | 脱血不良——循環血液量不足、位置ずれ、右心機能の低下 | 輸液状況・体位・動脈圧波形を確認 | 繰り返す、流量低下を伴うなら報告 |
| 位置異常 | カテーテルのずれ(体動や自己心機能の回復でも起こる) | 動かさず固定状態を確認。自分で押し込まない・引かない | 速やかに報告→エコー・X線で確認へ |
| パージ圧低下 | 回路のリーク、接続のゆるみ、パージ液切れ | 回路の接続とパージ液の残量を目視 | 原因が見つからない・改善しないなら報告 |
| パージ圧上昇 | パージルートの閉塞・血栓の疑い | 回路の屈曲・クランプのかけ忘れを確認 | 屈曲がないのに上昇していれば早めに報告 |
| 流量低下 | 前負荷不足、後負荷上昇、位置の問題 | 血圧・CVP・尿量とあわせて評価 | 血行動態の変化を伴うなら報告 |
| 電源・バッテリー | 電源ケーブル外れ、バッテリー残量低下 | 電源接続を確認(検査・移送のあとは特に) | 復帰しなければ臨床工学技士へ |
サクションアラームの深掘りはサクションアラーム編で詳しく書いています。
「圧」と「流量」はセットで読む
パージ系のアラームは、圧と流量の組み合わせで意味が変わります。
- パージ圧上昇 + パージ流量低下 → 閉塞・血栓を疑う
- パージ圧低下 + パージ流量増加 → リークを疑う
さらに、インペラの補助流量(画面に出るL/分の流量)も組み合わせると、「所見から逆引き」ができます。
| 所見 | 最初に疑うこと |
|---|---|
| パージ圧↑ | パージルートの閉塞・ポンプ内血栓 |
| パージ圧↓ | 回路のリーク・接続のゆるみ・パージ液切れ |
| 補助流量↓ | サクション・位置ずれ・右心機能低下・循環血液量不足 |
| 補助流量↓ + パージ圧↑ | ポンプ内血栓を強く疑う→早めに報告・CE相談 |
| 補助流量↓ + パージ圧↓ | パージシステム側の異常を先に確認(機械側の問題の可能性) |
この「セットで読む」視点は臨床工学技士さんの得意分野です。迷ったら、早めにCEさんに相談してください。夜間でも、遠慮する場面ではありません。
スマホ保存用:早見表の画像版
夜勤のポケットに入れておけるように、画像でもまとめました。長押しで保存できます。

どのアラームでも共通の5ステップ
- 患者さんを見る:アラームより先に、意識・血圧・波形。機械より人
- 色を見る:赤なら人を呼びながら動く
- メッセージと数値を見る:補助流量・パージ圧・パージ流量
- 原因を探す:上の早見表へ
- 報告する:「何のアラームが・いつから・患者さんはどうか」をセットで
そして、やってはいけないことが2つ。
- ミュートを押して終わりにしない——音を消すことと、原因が消えることは別です
- 判断せずにP-levelを変えない——サポートレベルの変更は必ず医師の指示で
番外編:不整脈・心停止・除細動のとき、インペラはどうなる?
アラームと並んで、夜勤の不安が大きいのがこの3場面です。要点だけまとめます(時系列でのシミュレーションは急変シナリオの記事で詳しく書いています)。
不整脈が出たら——インペラは影響を受ける?
- インペラは連続流ポンプ。心臓のリズムとは独立して回り続けるため、期外収縮や一過性の不整脈で即座に止まることはありません
- ただしVT・Vfなど左室がほぼ空打ちになる不整脈では、左室に血液が入ってこなくなり、流量低下・サクションアラームが出やすくなります
- 見るポイントは「不整脈の種類と血圧」+「インペラの流量とアラーム」。心電図とインペラ、両方をセットで報告してください
心停止のとき——胸骨圧迫はためらわない
- 蘇生が最優先。胸骨圧迫でカテーテル位置がずれる可能性はありますが、それを理由に圧迫をためらってはいけません
- インペラは止めません。ただし高いサポートのままではサクションの危険があるため、P2へ下げるのが一般的です(医師の指示・施設プロトコルのもと)
- CPR中にポジションアラームが鳴っても、それだけでCPRを中断しない
- 蘇生後は、カテーテルのマーカー深さを確認し、エコーで先端位置を確認してから、医師の指示で段階的にサポートを戻します
除細動のとき——インペラは外さなくていい
- 除細動はインペラを装着したまま実施できます。外す・止める必要はありません。除細動を遅らせないことが何より大切です
- 実施後は、流量・アラーム・マーカー深さ(位置ずれの目安)を確認
- エネルギー量や手順は、除細動器の機種と施設プロトコルに従ってください
まとめ
- 色で最初の動きを決める(赤は人を呼ぶ)
- パージの圧と流量はセットで読む
- 迷ったら患者さんを見て、早めに報告・早めにCEさんへ相談
- 急変時は蘇生が最優先——胸骨圧迫はためらわず、除細動も装着のまま(番外編参照)
パージ圧上昇の先にある「溶血」のサインは、インペラの溶血|尿の色・採血データで気づくサインで詳しく書いています。
シリーズ全体はインペラ看護Q&A完全ガイドから。離脱・抜去後の看護はこちらで書いています。
参考文献
- 日本アビオメッド「IMPELLA制御装置 取扱説明書」(アラームの分類・名称の原典)
- PMDA「IMPELLA補助循環用ポンプカテーテル 添付文書」
- 臨床工学技士のななめ読みななめ書き「やさしく「インペラーの管理とトラブル対応」をまなぶ」
- 看護roo!「循環補助用心内留置型ポンプカテーテル挿入患者の看護」



