深夜2時。医師から「そろそろPレベルを下げて、朝に抜去を考えようか」と言われた——。
挿入中の管理は勉強してきたけれど、「終わり方」って、ちゃんと教わりましたか?
インペラの離脱(ウィーニング)と抜去後の看護を、いつものように「質問」で整理していきます。
【はじめにお断り】本記事は一般的な情報を整理したものです。数値の基準や手順は施設・症例によって異なります。実際のケアは必ず自施設のプロトコルと医師の指示に従ってください。
Q1. そもそも「離脱できる」とは、どういう状態?
インペラは心臓の代わりをし続ける機械ではなく、心臓が回復するまでの「橋渡し」です(基本のおさらいはこちらの記事へ)。
心臓が自分の力を取り戻してきたサインには、こんなものがあります。
- カテコラミン:少量で血圧を維持できている
- 平均血圧(MAP):サポートを下げても保てる
- 尿量:保たれている
- 乳酸値:上がってこない
- 心エコー:心機能の改善が確認できる
学会の解説では、低いサポートレベル(P2程度)で「MAP 60〜65mmHg以上、CI 2.2以上、CPO 0.7以上、CVP 18未満、乳酸値の上昇なし」といった目安が示されています(参考文献2)。
ただし、これはあくまで目安です。「機械の数字が良い」ではなく「患者さん全体が回復に向かっている」——判断の軸はここにあります。
Q2. ウィーニングは、一般的にどうやって進める?
「よし、離脱できそう」と判断されても、いきなり抜くわけではありません。一般的には、次のような流れで進みます。
- サポートレベル(P-level)を段階的に下げる:一気に最低まで下げるのではなく、血行動態を確認しながら少しずつ。下げ方のペースや刻み方は、施設や症例によって異なります
- 下げるたびに血行動態を評価する:血圧・CPO・尿量・乳酸値など。肺動脈カテーテルが入っていれば、CIやPCWPも合わせて見ます
- 低いサポート(P2程度)で心エコー評価:インペラの助けがほぼない状態で、自己心がどれだけ動けているかを最終確認します
- 問題がなければ抜去へ。崩れたらサポートを戻す:ウィーニングは一方通行ではありません。「いつでも戻れる」ことも、この治療の強みです

この間、看護師が「下げた時刻」と「その後の変化」をセットで記録しておくと、医師が次の一手を判断する材料として非常に役立ちます。では、その「下げた直後」には何を見ればいいのでしょうか。
Q3. サポートレベルを下げたら、最初の30分で何を見る?
「P-levelを下げます」——その瞬間から、あなたの観察が始まります。
- 平均血圧(MAP)の推移:下げた直後の値だけでなく、その後の「傾向」を見る
- 動脈圧波形:自己心の拍出による拍動がしっかり出ているか
- CPO:心臓が自分で仕事をできているかの指標(見方はCPO編で詳しく)
- 患者さん自身:意識、呼吸、皮膚の冷感・湿潤、表情の変化
一方で、尿量や乳酸値はすぐには変化しません。「直後に見るもの」と「数時間かけて見るもの」を分けて考えるのがコツです。
Q4. 「離脱できそうにない」サインとは?
下げてみたけれど、心臓がまだ準備できていないこともあります。
- MAPがじわじわ下がってくる
- 乳酸値が上がり始める
- 尿量が減ってくる
- カテコラミンを増やさないと保てなくなる
- 呼吸苦・冷汗・不穏など、患者さんの様子が変わる
報告のタイミングは「数字が基準を割ってから」ではなく、「傾向が変わったと感じた時」。早めの報告で、サポートを戻すという選択肢を残せます。
急変時の動き方は急変シナリオの記事で扱っています。
Q5. 抜去はどこで、どうやって行われる?
カテ室で抜くか、ベッドサイドで抜くか。止血は用手圧迫か、圧迫デバイスか。——これは施設や症例によって異なります。
共通する看護師の役割はこの4つです。
- 物品の準備(止血・緊急対応の物品を含めて)
- 抜去中・抜去後のモニタリング継続
- 痛みや不安への配慮(鎮痛・声かけ)
- 抗凝固(ヘパリン)の中止時期・ACT確認など、医師指示のタイミングを外さないこと
Q6. 抜去後、今夜の勤務で何を観察する?
ここがこの記事の主役です。インペラが抜けても、看護は終わりません。
① 穿刺部——出血と血腫
目に見える出血だけでなく、後腹膜出血を忘れずに。腰背部痛、原因のはっきりしない頻脈や血圧低下、Hbの低下は要注意サインです。
② 下肢——虚血のサイン
足背動脈・後脛骨動脈の触知、皮膚の色、冷感、しびれ。必ず左右差で見るのがポイントです。
③ 血行動態——インペラなしで保てているか
サポートがなくなった状態で、血行動態をもう一度評価し直します。「抜去できた=安定」ではありません。
では、「インペラなしでも血行動態が保たれている」とは、どのような状態を指すのでしょうか。
ポイントは、血圧という1つの数字ではなく、「全身の臓器に血液が届いているか」を4つの窓から見ることです。

- 血圧・脈拍:カテコラミンが少量(または不要)のまま、MAPが目標値(一般に65mmHg前後以上)を維持できている。頻脈で無理に代償していない
- 脳(意識):意識がはっきりしていて、不穏やぼんやりした様子が出てこない
- 腎臓(尿量):尿量が保たれている(一般的な目安として0.5mL/kg/時以上)
- 末梢と代謝:手足が温かく、冷汗やまだら模様(網状皮斑)がない。乳酸値が上がらず、横ばい〜低下傾向
逆に言えば、血圧の数字だけが保てていても、尿が減る・乳酸が上がる・手足が冷たくなる——どれかが崩れ始めたら、それは「保たれていない」サインです。Q4で挙げた離脱困難のサインと同じ目で、抜去後も見続けてください。
④ 安静度
床上安静の期間や体位の制限は施設の基準によります。観察の間隔は、抜去直後ほど密に設定しましょう。
Q7. 患者さんと家族には、どう声をかける?
機械が外れることは、医療者にとっては回復の証。でも患者さんや家族にとっては、「あの機械がなくなって、本当に大丈夫なの?」という不安の始まりでもあります。
「心臓が自分の力を取り戻してきた証拠ですよ」——そう伝えた上で、外れた後もこれまでと同じように見守っていることを、言葉にして届けたい場面です。
☐ 穿刺部:出血・血腫(後腹膜出血のサインも)
☐ 下肢:足背・後脛骨動脈の触知、色調、冷感——左右差で
☐ 血行動態:血圧・意識・尿量・末梢の「4つの窓」
☐ 安静度と観察間隔:施設基準を確認、抜去直後ほど密に
まとめ
- 離脱は「終わり」ではなく、心臓が自分の力に戻っていく過程
- 数値の基準は施設で異なる。でも「傾向を見る」「患者さん全体を見る」はどこでも共通
- 抜去後は、穿刺部・下肢・血行動態・そして患者さんと家族の気持ちまでが観察の範囲
シリーズ全体の疑問はインペラ看護Q&A完全ガイドにまとめています。
参考文献
- 補助人工心臓治療関連学会協議会「IMPELLA適正使用指針」(最新の改訂版はインペラ部会サイトでご確認ください)
- 日本心臓血管外科学会「重症心不全に対する経皮的デバイス(IABP, ECMO, Impella)」
- PMDA「IMPELLA補助循環用ポンプカテーテル 添付文書」
- 看護roo!「循環補助用心内留置型ポンプカテーテル挿入患者の看護」



