IABPとインペラ(Impella)の違い|初めて担当する看護師の10の疑問

🌿補助循環・ICUの看護

Q1. IABPとImpellaって、そもそも何をする機械ですか?

どちらも心臓のポンプ機能が低下したときに、心臓の働きを補助する機械(補助循環デバイス)です。

心臓が自力で十分な血液を全身に送り出せなくなったとき、外からサポートすることで、臓器への血流を維持しながら心臓の回復を待ちます。

  • IABP(大動脈内バルーンポンプ):大動脈の中でバルーンを膨らませたり萎ませたりすることで、間接的に心臓を助ける装置です。
  • Impella(インペラ):小型のポンプを心臓の中(左心室)に直接入れ、左心室から大動脈へ血液を送り出す装置です。

Q2. どんな仕組みで心臓を助けているのですか?

2つは仕組みがまったく異なります。

IABPの仕組み:
心臓が収縮する直前にバルーンを素早く萎ませ、心臓が血液を送り出しやすくします(後負荷の軽減)。心臓が拡張しているときにバルーンを膨らませ、冠動脈への血流を増やします(拡張期増強)。心電図と連動してこの動きを繰り返します。

Impellaの仕組み:
左心室に置いた小さなプロペラ(アキシャルフローポンプ)が高速回転し、左心室内の血液を直接大動脈へ送り出します。心臓の動きに関係なく、常時ポンプとして働きます。

Q3. 心臓をどのくらい助けてくれるのですか?差はありますか?

補助できる血液の量(補助流量)に大きな差があります。

デバイス最大補助流量
IABP約0.3〜0.5 L/分
Impella CP最大約3.5 L/分
Impella 5.5最大約5.5 L/分

健康な成人の心拍出量は安静時で約5 L/分です。IABPはあくまで「補助」のレベルですが、Impellaはそれ自体が心臓の代わりにかなりの量を送り出せます。心機能が著しく低下した患者さんにはImpellaの方が強力なサポートができます。

Q4. カテーテルはどこから、どこまで入れますか?

どちらも主に大腿動脈(足の付け根の動脈)から挿入しますが、カテーテルの先端が届く場所が違います。

デバイス挿入部位先端の位置
IABP大腿動脈下行大動脈(左鎖骨下動脈の少し遠位)
Impella大腿動脈左心室内

Impellaは大動脈弁を越えて左心室の中までカテーテルが入ります。そのため挿入時の手技はImpellaの方が複雑で、透視(X線)下で行われます。

Q5. どんな患者さんに使われるのですか?

IABPが使われる主な場面:

  • 急性心筋梗塞後の心原性ショック
  • 緊急・高リスクの経皮的冠動脈インターベンション(PCI)前後のサポート
  • 内科的治療に反応しない不安定狭心症

Impellaが使われる主な場面:

  • IABPでは補助が不十分な重症の心原性ショック
  • 左心室補助を強力に必要とする場合
  • ECPELLAとしてVA-ECMOと組み合わせる超重症例

一般的にIABPは比較的軽症〜中等症、Impellaはより重症の患者さんに使われる傾向があります。

Q6. 駆動する仕組みは何が違いますか?

  • IABPヘリウムガスでバルーンを膨らませたり萎ませたりします。ヘリウムは分子が小さく動きが速いため、心拍に素早く同期できます。ボンベ残量の確認が看護師の重要な管理項目です。
  • Impella電動モーターでプロペラを高速回転させます。コントローラーからの電力で動くため、電源管理が必要です。また、カテーテル内部にパージ液(ヘパリン加ブドウ糖液)を流し続け、モータ内への血液の侵入と血栓を防ぎます。

Q7. 看護師が特に気をつけることは、それぞれ何ですか?

IABPで特に気をつけること:

  • バルーンの位置ずれ(胸部X線での確認)
  • 心電図との同期タイミングのずれ
  • 挿入側下肢の循環不全(色・温度・疼痛・脈拍)
  • ヘリウムガスの残量確認
  • バルーンリークの徴候(コントローラーのアラーム)

Impellaで特に気をつけること:

  • デバイスの位置確認(サクションイベント・波形変化)
  • 溶血の徴候(LDH・ハプトグロビン・尿の色調変化)
  • パージ液の流量・ヘパリン濃度の管理
  • 挿入側下肢の循環不全
  • コントローラーのアラーム対応(Pレベル変化)

Q8. 合併症はどんなものがありますか?

合併症IABPImpella
挿入部位の出血・血腫
挿入側下肢の虚血
大動脈解離・穿孔
溶血△(軽度)○(要モニタリング)
大動脈弁への影響なし○(弁を越えるため)
血小板減少

どちらも重篤な合併症を起こし得るデバイスです。変化にいち早く気づくことが看護師の役割です。

Q9. IABPとImpella、どちらが古い技術ですか?

  • IABP:1960年代後半に臨床応用が始まり、長年「補助循環の標準」として世界中で使われてきました。日本でも1970年代から普及しています。
  • Impella:2000年代にドイツで開発・実用化。日本では2011年に薬事承認、2016年に保険適用となった比較的新しいデバイスです。

Q10. IABPとImpella、同時に使うことはありますか?

通常は同時には使いません。どちらか一方を選択するのが基本です。

ただし、ImpellaとVA-ECMO(体外式膜型人工肺)を同時に使用するECPELLAという治療法は、超重症の心原性ショック患者さんに対して行われることがあります。

IABP・Impella・VA-ECMOの補助力を大まかに並べると以下のようになります:

弱い ← IABP < Impella CP < Impella 5.5 < ECPELLA → 強い

患者さんの重症度や心機能に応じて、最適なデバイスが選択されます。

まとめ

比較項目IABPImpella
仕組みバルーンの膨張・収縮電動ポンプによる直接補助
補助流量約0.3〜0.5 L/分最大3.5〜5.5 L/分
先端位置下行大動脈左心室内
駆動エネルギーヘリウムガス電動モーター+パージ液
歴史1960年代〜2000年代〜
補助の強さ比較的弱め強力

「どんな患者に使えないか」は「インペラの禁忌|使えない人・注意が必要な人」にまとめています。機械弁・大動脈弁逆流・左室内血栓の理由まで解説しました。

ECMOとインペラを同時に使う「エクペラ」については、ECPELLA(エクペラ)とは|VA-ECMOとインペラを併用する理由を看護師目線でにまとめています。

わたしは、看護が好きです。
だからこそ、看護の価値を問い続けていたいと思っています。

IABPそのものの仕組みや観察ポイントは、IABP看護Q&Aガイド|仕組み・観察・トラブル対応まとめにまとめています。