VA-ECMO(PCPS)看護Q&Aガイド|仕組み・観察・トラブル対応まとめ

記事「VA-ECMO(PCPS)看護Q&Aガイド|仕組み・観察・トラブル対応まとめ」のアイキャッチ画像。明るいICUのベッドサイドに、ECMOの回路が置かれている。黒いモーターの上に透明な円盤型の遠心ポンプヘッドが乗り、その隣に中空糸の束が見える箱型の人工肺がある。両者を太い透明チューブが結び、中を血液が流れている。人工肺の上部から細い酸素のチューブが伸び、奥には窓と観葉植物、生体情報モニターがぼんやり見える。 🌿補助循環・ICUの看護

ECMOが入っている患者さんを、はじめて受け持つとき。

ベッドサイドに大きな機械があって、太いチューブが2本、足の付け根から出ている。中を血液が流れているのが見える。回転数と流量の数字が並んでいて、そのどれを見ればいいのかも分からない。

この記事では、VA-ECMOの基本をQ&Aで整理します。仕組みが分かると、見るべきところも変わってきます。

VA-ECMOで血液がどこを流れているかを示した図。体の中に大動脈と心臓、体の外に遠心ポンプと人工肺を描いている。大腿静脈から脱血した酸素の少ない血液(グレー)が遠心ポンプで回され、人工肺で酸素を渡されて緑になり、大腿動脈へ送血されて下行大動脈を足のほうから上へのぼる。いっぽう心臓が押し出した酸素の少ない血液は上行大動脈から大動脈弓の3本の枝へ流れる。両者がぶつかるところが下行大動脈の途中にできる。大動脈弓から出る枝のうち右上肢へ向かう枝に「ここで測ります」と示されている。

Q1. VA-ECMOとは、何をしている機械ですか?

静脈から血液を抜き出し、人工肺で酸素を渡して二酸化炭素を抜き、動脈へ返している機械です。

ここが、ほかの補助循環といちばん違うところです。

IABPは、大動脈の中の圧を変えることで心臓を助けています。自分の心臓が動いていることが前提の装置です。

でもVA-ECMOは違います。ポンプが血液そのものを汲み出して送り、人工肺が肺の代わりに酸素を渡します。心臓と肺の両方を、体の外から肩代わりしている。だから心臓が止まっていても、血液は回ります。

「PCPS」と、何が違うのですか

現場では両方の呼び方を聞くと思います。混乱しやすいところなので、先に整理します。

ECMOは血管のつなぎ方で2つに分かれます。

  • VA-ECMO(静脈から脱血、動脈へ送血)… 呼吸の補助に加えて、循環の補助もできる
  • VV-ECMO(静脈から脱血、静脈へ送血)… 呼吸の補助だけ

そして心停止や心原性ショックに対して使うVA-ECMOを、日本ではPCPS(経皮的心肺補助)と呼んできました。つまり、ほぼ同じものを指しています。

Q2. どこから抜いて、どこへ返しているのですか?

急を要する場面が多いので、大腿静脈から脱血、大腿動脈へ送血が第一選択になることがほとんどです。

血液は、こう流れています。

大腿静脈(脱血)→ 遠心ポンプ → 人工肺 → 大腿動脈(送血)

脱血管のほうが太く、日本循環器学会のガイドラインでは送血管が15〜17Fr、脱血管が21〜23Fr前後を体格に応じて選ぶ、とされています。心機能の低下が著しい場合は、もっと太いものを選ぶこともあります。

大腿動脈が使えないときは、右の鎖骨下動脈

ここに理由があります。

鎖骨下動脈から入れるとき、ガイドラインは右を第一選択としています。理由は、酸素化された血液を、冠動脈と頸部の分枝に届けるためです。

なぜそれが大事なのかは、Q4につながります。

Q3. 大動脈弁が開かなくなる、とはどういうことですか?

ここが、VA-ECMOを理解するうえでいちばん大事なところだと思います。

大腿動脈から送られた血液は、大動脈を下から上へ向かって流れます。心臓が血液を押し出す向きとは逆です。これを逆行性といいます。

心臓から見ると、抵抗が増えます

心臓は、大動脈へ血液を押し出そうとしています。そこへ逆向きの流れがぶつかる。心臓にとっては、開けなければならない扉が重くなったのと同じです。

つまり後負荷が増えます。

VA-ECMOは全身の血流を確保するという点では非常に優れていますが、心機能の回復という点では不利に働く。ガイドラインにもそう書かれています。

開かなくなると、左室が張ります

心機能が高度に落ちて、その抵抗に打ち勝てなくなると、大動脈弁が開かなくなります。

弁が開かなければ、左室に入ってきた血液は出ていけません。左室の中の圧が上がり、その圧は左房から肺へと伝わっていきます。肺うっ血です。

だから、左室の圧を下げる手立てが検討されます。IABP、インペラ、左室や左房へのベント挿入。ECMOにインペラを足す形が、エクペラ(ECPELLA)です。

看護師が気づけるのは、動脈圧波形です

弁が開いているかどうかは、動脈圧波形の脈圧である程度わかります。

自分の心臓が拍出していれば、波形に脈が出ます。その脈圧が小さくなって、波形が平たくなっていくとき、弁が開かなくなってきている可能性があります。

胸部X線の肺うっ血の進行も、間接的なサインになります。

Q4. なぜ、右手で採血するのですか?

Aラインが右の橈骨動脈に入っていること、SpO2のプローブが右手についていること。これには、はっきりした理由があります。

上半身と下半身で、酸素化が違うことがあります

こういう状況を考えてみてください。

  • 自分の心臓は、ある程度動いている
  • でも自分の肺の酸素化は悪い

このとき、心臓から押し出される血液は酸素化されていません。そしてその血液が向かうのは、大動脈の根元から分かれていく冠動脈と、頸部の分枝──つまり心臓と脳です。

いっぽう、ECMOがしっかり酸素化した血液は、足のほうから上ってきます。

結果として、下半身にはよく酸素化された血液が、上半身には酸素化されていない血液が流れるという状態が起こりえます。これをNorth-south syndromeといいます。

だから、右上肢で見ます

足でSpO2を測っていたら、この状態には気づけません。ECMOの血液を見ているだけだからです。

右上肢へ向かう血管は、大動脈から分かれていく枝の中で、いちばん心臓に近いところから出ています。だから右上肢の血液ガスとSpO2を見ることで、心臓と脳に届いている血液の酸素化を、いちばん近い形で知ることができます。

ガイドラインも、North-south syndromeが起きるため右上肢の血液ガス測定やSpO2モニタリングが必要だと明記しています。

この状態が見つかったときは、送血する場所や回路の組み方そのものを変えることが検討されます。静脈側にも送血管を足す形(V-AV ECMO)、自己肺が回復していればVV-ECMOへの移行、送血部位を右鎖骨下動脈へ変更する、などです。

Q5. 看護師は、何を見ればいいですか?

ガイドラインは、毎日評価する項目を挙げています。血行動態、ECMOの回転数と流量、人工肺の機能、自己肺の機能、自己心の機能、カニューラ刺入部の出血と感染、臓器障害の有無、凝固機能、神経学的評価。

この中で、ベッドサイドで数字として追えるものを挙げます。

  • 右上肢の血液ガスとSpO2 … 自己肺の酸素化を見る(Q4)
  • SvO2 … 酸素の需要と供給のバランス。VA-ECMOでは70%以上あれば酸素運搬は適切と考えられています
  • 乳酸値 … 全身に血液が足りているかどうか
  • 尿量 … 臓器に灌流が届いているかどうか
  • 動脈圧波形の脈圧 … 自分の心臓が拍出しているかどうか(Q3)
  • 刺入部 … 出血、血腫、感染
  • … Q7で詳しく書きます

ECMOは全身の血流を担保する機械なので、「機械が回っているか」ではなく「体に血が届いているか」を見ることになります。

Q6. 流量が下がったら、何を疑いますか?

まず疑うのは脱血不良です。

ガイドラインは、全身への灌流量が足りないときには血管内容量の不足による脱血不良を疑う必要があるとしています。抜きたくても抜けていない、という状態です。

十分な血管内容量があると確認できるのに流量が出ないときは、ほかの原因が探されます。カニューラのサイズが体格や必要量に対して足りていない場合もあります。

回路内の圧も、大事なサインです

脱血側が強い陰圧になっていたり、送血圧が高くなりすぎたりすると、溶血や回路の損傷につながります。

そして、いつもと圧が大きく違うとき。これは人工肺の中で血液が固まりかけていたり、カニューラに異常が起きていたりする可能性があります。「昨日と違う」に気づけるのは、続けて見ている人です。

なお、流量は多ければよいというものではありません。心拍出量や血圧を見ながら、適切な流量を保つことが目的です。

Q7. なぜ、足をあんなに見るのですか?

大腿動脈に、太い送血管が入っているからです。

血管の中を管が占めてしまうと、その先──つまり足のほうへ流れる血液が減ります。下肢虚血は、VA-ECMOで注意すべき合併症のひとつで、進行してから再灌流しても足を救えないことがあります。

だから、細い管をもう1本入れます

送血管が入っている足に、もう1本細い管が入っていることがあります。4〜7Frのシースを、大腿動脈の末梢側に入れて、足へ血液を送っているのです。ガイドラインは、これを予防的に行うことを勧めています。

「なぜこんなところにもう1本入っているのか」の答えが、これです。

見るもの

  • 冷感 … 左右を比べる
  • 足背動脈・後脛骨動脈の拍動 … 触知できるか
  • 下腿の筋の拘縮 … 進んでしまったサイン
  • CK(クレアチンキナーゼ)の上昇ミオグロビン尿 … 筋が壊れはじめている

施設によっては、NIRSで組織の酸素飽和度を見たり、ドプラエコーで末梢の血流を確認したりします。

Q8. 体位は、どこまで動かしていいのですか?

鼠径部から太い管が入っている状態なので、ここは慎重になります。

ベッド挙上は、段階的に30度程度まで

ガイドラインは、出血やカテーテルの移動・キンクがないことを確認しながら、段階的に30度程度までとしています。

挿入側の下肢が屈曲すると、出血やカテーテルの移動が起きやすくなります。そのため、関節拘縮の予防を目的とした限られた他動運動にとどめるとされています。

下肢を外旋させない

ここは、看護のケアそのものです。

穿刺部をまっすぐ保とうとして下肢が外旋位で固定されると、ベッド柵やクッションで腓骨神経が圧迫され、腓骨神経麻痺の原因になることがあります。

まっすぐ保つことと、外旋させないこと。この2つを両立させるポジショニングが要ります。

そして体位を変えたあとは、もう一度足を見ます。拍動が触れるか、CKが上がっていないか、尿の色は変わっていないか。

Q9. なぜヘパリンが要るのですか? ACTはどこを狙うのですか?

体の外に長い回路があり、その中を血液が流れ続けているからです。異物に触れた血液は、固まろうとします。

日本循環器学会のガイドラインは、ACT 180〜200秒、APTT 50〜60秒を目安にヘパリンの持続投与を行うとしています。出血のリスクがある患者さんでは、ACT 160〜180秒を目安に減量を検討することもできるとも書かれています。

ただし、ここは一次資料どうしで割れています

正直に書いておきます。

国際的な体外循環の組織であるELSOは、2021年の抗凝固ガイドラインで、ACTは歴史的に使われてきた検査であり、徐々に置き換えられつつあるとしています。多くの施設がanti-Xaによる評価へ移りつつある、という書き方です。

つまり「ACTで管理するのが正しい」と言い切れる状況ではありません。国内のガイドラインはACTとAPTTの数字を示していて、国際的にはanti-Xaへ向かっている。どの数字を使うかは、施設の取り決めによります。

看護師として大事なのは、数字そのものより自分の施設が何を、どの範囲で見ているのかを知っていることだと思います。

Q10. どう離脱していくのですか?

最初に、大事なことをひとつ。

VA-ECMOからの離脱基準は、確立されていません。ガイドライン自身が、各施設が症例ごとに判断しているのが現状だと書いています。

それでも、目安はあります

循環が安定し、全身の臓器灌流が保たれ、カテコラミンが少量ですんでいる、あるいは減らせている。そういう状況で、心機能を確認しながら離脱が考慮されます。

ガイドラインが示している進め方は、こうです。

  • 補助流量を0.5Lずつ、1.0〜1.5L/分まで下げる
  • 人工肺の酸素流量を2L/分まで下げる
  • その状態で、動脈圧波形の脈圧平均動脈圧60mmHg以上SvO2が60〜65%以上乳酸値2mmol/L未満を確認できれば、離脱を考慮する

時間の目安もあります

ここは、知っておくと患者さんの見え方が変わるところです。

ガイドラインは、可能であれば装着後48〜72時間での離脱が望ましく、それ以降では生存率が低下するという報告がある、としています。

そして7日以上VA-ECMOによる循環補助を必要とする場合は、心機能の改善による離脱の可能性は低いと考え、心臓移植やLVAD(補助人工心臓)の適応になりうるかを念頭に置く、と書かれています。

つまり日数そのものが、次の話し合いが始まる合図になっているということです。

おわりに

VA-ECMOは、心臓と肺の両方を、体の外から肩代わりする機械です。

でも、そのために血液を逆向きに流している。だから心臓にとっては抵抗が増え、大動脈弁が開かなくなれば左室が張る。そして自分の肺の酸素化が悪ければ、上半身と下半身で流れている血液が違ってくる。

ここが分かると、なぜ右手で採血するのか、なぜ動脈圧波形の脈圧を気にするのか、なぜ足をあれほど見るのかが、つながって見えてきます。

ECMOを必要とする患者を看護することは、緊張感がさらに増します。観察や記録、注射の管理、その他のME機器の管理、業務におわれることも日常です。そして考え続けることをしないと異常に気づけません。学びをやめなければ、きっと自分も患者さんも助かるとわたしは思っています。

回路、下肢虚血、North-south syndrome、左室の減圧、離脱、体位とリハビリ、抗凝固。細かい部分は、これから記事にしていく予定です。

わたしは、看護が好きです。
だからこそ、看護の価値を問い続けていたいと思っています。

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参考にした資料

※この記事は一般的な情報であり、個別の医療判断に代わるものではありません。実際の管理は、必ず主治医・指導者・院内の基準にしたがってください。数値はいずれも参考値であり、施設の基準を優先してください。