Impellaが入っている患者さんを見ていると、血圧が保たれていることに、つい安心してしまう場面があります。
けれど、血圧だけでは「流れているかどうか」は分かりません。
制御装置の画面に出ているCPOは、圧と流量を同時に見るための数字です。そして、いくつなら大丈夫なのかという区切りもあります。
この記事では、その区切りと、看護師が見るところを整理します。
Q1. CPOとは、何を見ている数字ですか?
圧と流量を、かけ算したものです。
式はこうです。
CPO(W)= MAP(平均血圧)× CO(心拍出量)÷ 451
451という数字は、圧と流量をかけた値をワットという単位に直すための決まった数です。意味を考える必要はありません。
大事なのは、どちらか一方だけでは足りないということです。
- 血圧が保たれていても、流れが少なければCPOは低い
- 血圧がやや低くても、流れが保たれていればCPOは維持される
血圧という「条件」と、心拍出量という「結果」。その両方をひとつの数字にしたのがCPOです。心臓が、どれだけの仕事をしているかを表しています。
Q2. いくつなら大丈夫なのですか?
ここが、この記事でいちばん伝えたいところです。
0.6W が、ひとつの分かれ目になっています。
制御装置も、この数字で表示の色を変えています。
- CPO > 0.6 ── 白色で表示
- CPO ≦ 0.6 ── 黄色で表示
画面の色が変わったら、それは「0.6を下回った」という合図です。数字を読まなくても、色で気づけるようになっています。
なぜ0.6なのか
根拠になっている研究があります。
心原性ショックの患者さん541例を調べた研究(SHOCK試験のレジストリ)で、cardiac power は院内死亡ともっとも強く相関する血行動態の指標でした。血圧でも心拍出量でもなく、その積であるCPOがいちばん予後を反映していた、という結果です。
そのなかで0.6Wを下回ることが、死亡と結びつく独立した因子として挙げられました。
ちなみに、健康な人の安静時のCPOはおよそ1.0Wとされています(資料によって幅があります)。0.6は「正常の下限」ではなく、「ここを切ると危ない」という臨床の区切りだと思っておくとよいと思います。
0.6は、いろいろな場面で出てきます
ハンドブックを読むと、この数字が判断の節目に何度も出てきます。
- カテーテル室を出るとき ── CPO > 0.6 でICUへ帰室
- ウィニングを考えるとき ── 強心薬・昇圧薬から離脱していて、CPO > 0.6 で乳酸値が改善している
- 治療を強めるか考えるとき ── 薬を増やさざるを得ず、CPO < 0.6 で乳酸値も改善しない
ひとつの数字が、進むか戻るかの判断に使われています。看護師が「0.6を切っている」と気づいて伝えられることには、意味があります。
Q3. 画面のCPOは、どうやって出ているのですか?
ここは、知っておいたほうがよいところです。
画面のCPOは、直接測った値ではありません。計算して推定した値です。
流れはこうなっています。
- 肺動脈カテーテルなどで実際に測った心拍出量を、制御装置に入力する
- それを基準にして、そこからは脈圧をもとに心拍出量を連続して計算する(自己心拍出量と脈圧が比例関係にあるため)
- その心拍出量と、光学センサから得られる圧の情報を使って、CPOを計算する
だから「心拍出量を入力」というアラームが出ます
基準がずれてくると、制御装置がこう言ってきます。
- 「心拍出量を入力」 ── 入力から7時間が経ったので、もう一度入力してほしい
- 「心拍出量を更新」 ── 血管の状態に大きな変化を検知したので、新しい基準を入れてほしい
このアラームは機械の不具合ではありません。「基準が古くなったので、測り直した値をください」という意味です。放っておくと、表示されるCPOがずれていきます。
メーカーが、はっきり注意を書いています
ここは省略できないところなので、そのまま引用します。
ポンプパフォーマンスメトリクス情報として表示されるパラメータは診断目的で使用しないでください。表示されたすべてのパラメータは、承認を得た診断装置を使用して個別に検証する必要があり、患者モニタリングに使用することはできません
つまり、画面のCPOだけで判断してはいけないということです。
では意味がないのかというと、そうではありません。変化に気づくための材料としては十分に使えます。「さっきより下がってきている」に気づいて、実際の測定や医師の評価につなぐ。そこが看護師の使い方だと思います。
Q4. 血圧は高いのに、CPOが低いときは?
後負荷が上がりすぎていることを疑います。
血圧は、こう分解できます。
MAP ≒ CO × SVR(血管の抵抗)
血圧が高いという結果には、2つの道すじがあります。流れているから高いのか、血管が締まっているから高いのか。
後者だと、血圧の数字は保たれていても、流れは足りていません。CPOはそれを見抜きます。
数字を入れてみると、はっきりします
2人の患者さんで、実際に計算してみます。
| 患者A | 患者B | |
|---|---|---|
| MAP(平均血圧) | 75 mmHg | 90 mmHg |
| CO(心拍出量) | 5.0 L/分 | 2.5 L/分 |
| CPO | 0.83 W | 0.50 W |
| 制御装置の表示 | 白 | 黄色 |
血圧が高いのは、患者Bのほうです。90と75。血圧だけを見ていれば、Bのほうが安心に見えます。
でもCPOは、Bのほうが低い。しかも0.6を下回っています。
血圧が高いのに流れが足りない。数字にすると、こういうことが起きています。
脈圧を一緒に見ると、はっきりします
MAPが高い + 脈圧が狭い + CPOが低い。
この3つがそろったら、後負荷が上がりすぎている可能性が高くなります。脈圧が狭いのは、1回に押し出せている量が少ないことのあらわれだからです。
「血圧はいいですよ」で終わらせず、脈圧とCPOを並べて見る。ここが分かれ目になります。
Q5. 補助率を下げたとき、CPOはどう読むのですか?
ウィニングの場面です。機械の助けを減らして、心臓が自分で担えるかを試している時間になります。
| 補助率を下げたら | 読み方 |
|---|---|
| CPOが保たれた | 減らした分を、心臓が自分で担えている。回復のきざし |
| CPOが下がった | まだ機械に頼っている。戻すことを考える |
ハンドブックでは、ウィニングを考える条件が2つセットで書かれています。
- 強心薬・昇圧薬から離脱している
- CPO > 0.6 で、乳酸値が改善している
CPOだけでは決めていません。薬が減らせているか、乳酸値が下がってきているか。そろって初めて「進んでよさそうだ」となります。
なお、VA-ECMO(PCPS)と併用しているときは、別の数字が使われます。Impella単独で安定といえるのはCPO > 0.8W かつ 心係数 2.2以上。CPO < 0.7Wなら単独では不十分と判断されます。併用中は、求められる水準が上がります。
Q6. CPOと一緒に、何を見ればいいですか?
CPOは単独では判断しません。ハンドブックのICU管理のチェック項目でも、CPOはこう並んでいます。
HR・MAP・CVP・PCWP・CO/CI・SvO2・CPO・PAPi・乳酸値。
改善と悪化は、まとまって動きます
| よくなっているとき | わるくなっているとき |
|---|---|
| 心拍出量が増える | 心拍出量が減る |
| CPOが上がる | CPOが下がる |
| 乳酸値が下がる(12〜24時間後) | 乳酸値が上がる |
| 尿量が増える | 尿量が減る |
| 強心薬が減らせている | 強心薬から離れられない |
ばらばらに動いているときは、判断を急がない。いくつかは良くなっているのに薬が減らせない、といった「まざった状態」もあります。そのときは、まだ待つ時期だということです。
PAPi ── 右心を見るための相棒
CPOとセットでよく出てくるのがPAPiです。
PAPi =(肺動脈収縮期圧 − 肺動脈拡張期圧)÷ 右房圧
CPOが0.6を下回ったとき、PAPiがその先を分けます。
- PAPi < 1 ── 右心を評価し、右心の補助を考える
- PAPi > 1 ── 左心の補助を強めることを考える
「CPOが低い」の一歩先で、左と右のどちらが弱っているのかを分けるための数字です。ここは医師の判断ですが、意味を知っていると、カンファレンスの話が追えるようになります。
看護師のチェックポイント
- MAPだけを見て安心しない
- 0.6を切っていないかを見る(画面が黄色になっていないか)
- 脈圧を確認する
- 補助率を下げたときの反応を見る
- 乳酸値と尿量を並べて見る
- 「心拍出量を入力」のアラームを放置しない
- 画面の値は推計値だと知っておく
おわりに
CPOは「圧 × 流量」です。式にすればそれだけの数字です。
でも、血圧という結果だけを見ていると、見えなくなるものがあります。血管が締まって血圧が保たれているとき、数字はきれいでも、臓器には届いていません。
0.6という区切りは、そのことを教えてくれます。
そして、この数字を最初に見るのは、たいてい看護師です。医師が回ってくる前に、画面の色が変わっていることに気づけるのは、そばにいる人だけです。
いま見ている血圧は、流れを伴っていますか。
サクションアラームとの関係は、インペラ(Impella)のサクションアラーム|原因と看護の対応にまとめています。
アラーム全般の対応は、インペラ(Impella)のアラーム対応早見表|原因と最初にやることをどうぞ。
離脱を進めるときに見るものは、インペラ(Impella)の離脱と抜去後の看護|サポートを下げる時、何を見る?に書いています。
インペラ全体の観察項目は、インペラ(Impella)看護Q&A完全ガイド|観察項目・アラーム対応まとめにまとめています。
わたしは、看護が好きです。
だからこそ、看護の価値を問い続けていたいと思っています。
参考にした資料
- Impella テキストブック(2022年版・日本アビオメッド)── CPOの算出方法と表示、0.6を境にした色分け、心拍出量の入力アラーム、ウィニングとエスカレーションの基準、ICU管理のチェック項目、PAPi
- Cardiac power is the strongest hemodynamic correlate of mortality in cardiogenic shock: a report from the SHOCK trial registry(J Am Coll Cardiol. 2004)── 0.6Wという区切りの根拠
※この記事は一般的な情報であり、個別の医療判断に代わるものではありません。制御装置に表示されるCPOは算出・推計値であり、メーカーは診断目的での使用を認めていません。補助率の変更やウィニングの判断は、必ず主治医・臨床工学技士・院内の基準にしたがってください。数値は機種やバージョン、患者さんの状態によって異なります。



