IABPの合併症|なぜ起きるのか、どう気づくのか

記事「IABPの合併症|なぜ起きるのか、どう気づくのか」のアイキャッチ画像。ICUのベッドサイドに、点滴スタンド、輸液ポンプ、波形が表示されたモニターが並び、窓から光が差し込んでいる。左側に「補助循環・ICUの看護」「IABPの合併症」「なぜ起きるのか、どう気づくのか」の文字。 🌿循環・補助循環の看護

IABPの合併症は、覚えることが多くて大変です。下肢虚血、出血、感染、血小板減少、バルーンの破裂……。並べられると、それだけで気が重くなります。

でも、合併症を知るのは、怖がるためではありません。早く気づくためです。

この記事では、合併症を3つの視点に分けて整理してみます。資料にある分け方ではなく、覚えるための整理です。理由が分かると、覚えるリストではなくなると思います。

※IABPカテーテルの添付文書(東海メディカルプロダクツ、ゲティンゲ)、日本循環器学会のガイドライン、臨床工学技士向けの教育資料(JSEPTIC、2014年)をもとにしています。実際の管理は、施設の手順に従ってください。

Q1. 合併症は、なぜ起きるのですか?

この記事では、次の3つの視点で考えます。

  1. 管が、動脈に入っていること
  2. バルーンが、大動脈の中で動いていること
  3. 血を固まりにくくしていること

添付文書に書かれている原因をたどると、多くの合併症がこのどれか、またはいくつかに当てはまります。たとえば、下肢虚血はシースやカテーテルが血流を妨げることや血栓(1)、出血は動脈の損傷やカテーテルの動き(1・2)と抗凝固薬(3)、血小板減少はバルーンの動きとカテーテルという異物そのもの(1・2)が、原因として挙げられています。

そう考えると、なぜその観察が必要なのかが見えてくると思います。

どのくらい起きるのか

IABP-SHOCK II試験(急性心筋梗塞の心原性ショック600人)では、IABPを使った群と使わなかった群で、重大な出血(3.3%と4.4%)、末梢の虚血による合併症(4.3%と3.4%)、敗血症(15.7%と20.5%)、脳卒中(0.7%と1.7%)に、はっきりした差はありませんでした(原著論文)。

ただ、これは1つの試験の、限られた条件での数字です。目の前の患者さんで起きないという意味ではないので、観察の大切さは変わらないと思います。

Q2. 下肢虚血 ── 挿入中も、抜去後も見る

主に視点1(管が動脈に入っている)から起きます。

添付文書には、原因として、血栓ができること、血管の内膜がはがれること(フラップ)、シースやカテーテルが血流を妨げることが挙げられています。ゲティンゲ社の添付文書には、シースを使わない挿入や、太さ7.5Fr以下のカテーテルを使うことで、起こる頻度を少なくできる、とも書かれています。

ガイドライン(2023年)でも、バルーンを入れた側の動脈の合併症、とくに下肢虚血に注意が必要とされています。

いつ起きるのか

挿入した直後だけではありません。使っている間や、抜去したあとにも起こることがあります(添付文書)。

見つけ方

教育資料には、次のような所見が挙げられています。

  • 足の動脈の拍動が触れにくくなる
  • 冷感
  • しびれ
  • 左右差

駆動を始めた直後から、末梢の循環を定期的に確かめます。とくに体の小さい患者さん、体動のある患者さん、凝固が亢進している可能性のある患者さんでは、こまめに脈を確かめるよう書かれています(東海メディカルプロダクツの添付文書)。

日本臨床工学技士会の集中治療業務指針(2012年)にも、IABPの使用中は、血圧・尿量・下肢の血流を確認し、下肢の色や阻血の有無を観察する、と書かれています。

左右差は手がかり。でも、それだけでは決められない

資料では「左右差を見る」とされています。循環不全そのものなら両足に、IABPによる下肢虚血なら挿入した側に出やすい、と考える手がかりになると思います。

ただ、左右差がはっきりしなくても、血流障害がないとは言い切れません。挿入前からの足の状態や、時間の経過とあわせて見ます。

見つけたら

新しい冷感やしびれ、脈の弱まりなどに気づいたら、挿入前や直前の状態と比べて、速やかに医師へ報告します。左右差がはっきりするまで待つ必要はありません。症状を早く見つけることで、重い健康被害に至る可能性を小さくできる、とされています(ゲティンゲ社の添付文書)。

教育資料では、血行障害が出た場合は、早期の抜去を目指すか、ほかの部位からの挿入を検討する、とされています。添付文書でも、症状が確認されたら抜去し、足の状態によっては血管の手術が必要になることがある、とされています。

看護師が気づいて伝えることが、治療の判断につながります。

Q3. 出血・貧血・血小板減少

視点1・2・3が重なって起きます。

刺入部の出血

添付文書には、刺入部からの出血や皮下の血腫の原因として、挿入のときの動脈の損傷、姿勢の変化などでカテーテルが大きく動くこと、抗凝固薬の投与が挙げられています。

東海メディカルプロダクツの添付文書には、体動や移乗のときに、上体と下肢が屈曲しないよう注意することも書かれています(カテーテルの破損や血管の損傷を防ぐため)。

血小板が減る理由

添付文書には、ポンピングによるバルーンやカテーテルの動きと、カテーテルという異物そのものによって、血小板が物理的に傷つくことが挙げられています。対応として、血小板数をモニターし、必要に応じて補充する、とされています。

教育資料にも、IABPの施行中は血小板や赤血球が減る、と書かれています。

ヘパリンを使っている場合は、HIT(ヘパリン起因性血小板減少症)との見分けも必要になります。補助循環中のヘパリン|なぜ使い、いつ止めて、いつ再開するのかにまとめています。

そこに抗凝固が重なる

ガイドライン(2023年)では、IABPの駆動中は、血栓塞栓症や出血の合併を防ぐために、適切な抗凝固療法が必要とされています。血栓を防ぐための抗凝固は、出血を助長することもあります。

ACTなどの具体的な目標値は、ガイドラインには示されていません。目標の値は、施設の手順に従います。開胸術後などでは、抗凝固を行わないこともあります(教育資料)。

教育資料には、出血が続くと、貧血や感染の原因になる、とも書かれています。

見るところ

  • 刺入部の出血、血腫
  • 採血データ(ヘモグロビン、血小板、凝固)
  • ほかの部位からの出血(ドレーンの排液、消化管出血の徴候など)

Q4. バルーンの穿孔 ── 気づいたら、すぐに動く

主に視点2(バルーンが動いている)から起きます。

なぜ穴があくのか

添付文書と教育資料には、原因として次のものが挙げられています。

  • 石灰化した部分との接触による擦り傷・消耗
  • バルーンの不自然な折れ曲がりによる、材質の疲労
  • 鋭利な器具との接触や、挿入時の損傷

穴があくまでの時間は予測できません。ポンピングを始めて数時間以内のことも、1週間以上たってからのこともあります(ゲティンゲ社の添付文書)。

また、穴があいた原因が患者さんの血管の状態にある場合、新しく入れたバルーンにも、また穴があく可能性があるとされています。

気づくきっかけ

ゲティンゲ社の添付文書では、穿孔を疑う所見として、次の3つが挙げられています。

  • リークのアラームが鳴る
  • ヘリウムが通るチューブ(体外のチューブや延長チューブ)の中に、砂のような血のかたまりや、水滴のような血液が見える
  • 拡張期のオーグメンテーション波形が、突然変わる

ただし、初期の小さい穴では、ヘリウムのチューブに血液が見えないことがあります。そのため、駆動装置の警報に十分注意する、とされています。血液が見えないから大丈夫、とは言えません。逆に、警報が鳴らなくても、カテーテルに血液の逆流が見られたら抜去する、とされています(東海メディカルプロダクツの添付文書)。

気づいたら

ヘリウムが通るチューブの中の血液や、リークのアラームなど、穿孔が疑われるときは緊急です。添付文書では、直ちにポンプを止め、カテーテルを抜去する処置が示されています。ポンピングを止めて、医師・臨床工学技士にすぐ連絡します。そのあとの操作は、使っている機種の添付文書と院内の手順に従います。

添付文書には、リークを起こしたカテーテルでそのままポンピングを続けると、ガス塞栓で臓器を傷つけたり、バルーンの中に大きな血のかたまりができて外科的に抜去しなければならなくなったりするおそれがある、と警告されています。

ヘリウムが通るチューブを頻繁に観察することも、添付文書に書かれています(東海メディカルプロダクツ)。定期的に見る習慣が、ここで効いてきます。バルーン内圧波形の見方は、IABPモニターの見方|拡張・収縮のタイミングとバルーン内圧波形にまとめています。

Q5. 大動脈の枝の血流障害と、血栓症

主に視点2から起きます。大動脈からは、あちこちに血管が枝分かれしています。その枝の血流が悪くなることがあります。

教育資料では、経路は2つとされています。

ひとつは、血栓が飛ぶこと。大動脈の中の血栓が遊離して、塞栓症を起こします。添付文書にも、カテーテルに対する異物反応として、ポンピング中に血栓ができることがある(血栓症)と書かれています。

もうひとつは、バルーンが物理的にふさぐこと。バルーンの先端が弓部の枝を、バルーンの側壁が腹部の枝をふさぐ可能性があります。だから、適切な位置に留置することと、バルーンのサイズを把握しておくことが重要とされています。

位置がずれると

ゲティンゲ社の添付文書には、バルーンの位置が高すぎると左鎖骨下動脈の閉塞に、低すぎると腎動脈や腸間膜動脈の閉塞や、バルーンのリーク・移動につながる可能性がある、と書かれています。ガイドライン(2023年)も、腹腔動脈より下にバルーンがかかると、腹部の枝の虚血を起こす危険がある、としています。

ですから、左腕の脈や血圧、尿量、お腹の症状は、位置の問題に気づく手がかりになると思います。添付文書には、正しい位置に留置し、定期的にその位置を確認することも書かれています。

大動脈の枝とIABPバルーンの位置関係を示した図。大動脈弓からは腕頭動脈・左総頸動脈・左鎖骨下動脈が、腹部大動脈からは腹腔動脈・上腸間膜動脈・腎動脈が枝分かれしている。バルーンは左鎖骨下動脈のすぐ下から腹腔動脈より上までの位置にある。図では一部の細い枝を省略している。上にずれると大動脈弓の枝を、下にずれると腹部の枝を妨げる可能性がある。
図:バルーンは、左鎖骨下動脈や、お腹の臓器へ向かう主な枝をふさがない位置に留置します。上にずれれば脳や上肢へ向かう枝を、下にずれれば腎臓などへ向かう枝を妨げる可能性があります。図では、位置関係を分かりやすくするため、一部の枝を省いています。

なお、バルーンの下端の目安は、資料によって「腹腔動脈より上」「左鎖骨下動脈から腎動脈までの間」と書き方が違います。くわしくはIABPの看護と観察項目|仕組み・合併症・トラブル対応をQ&Aで整理にまとめています。

Q6. 大動脈の損傷・解離 ── 痛みと血圧の変化に気づく

教育資料では、挿入のときに、シースやガイドワイヤで動脈を傷つける可能性がある、とされています。

添付文書では、さらに大動脈の損傷や解離が重大な有害事象として挙げられています。挿入のときだけでなく、カテーテルの先端が血管の壁に当たったままポンピングしたときや、患者さんの体動などで先端の力が壁に集中したときにも起こる、とされています(ゲティンゲ)。

気づくきっかけ

添付文書には、次のような兆候が挙げられています。

  • 背中やお腹の痛み
  • ヘマトクリット値の低下
  • 血行動態が不安定になる、急な血圧低下

こうした兆候に早く気づいて対応することで、重い健康被害に至る可能性を小さくできる、と書かれています。痛みの訴えや、説明のつかない血圧低下があれば、すぐに伝えたいところです。

抜いたあとにも

抜去したあとは、足の付け根の腫れ、いつもと違う痛み、皮下出血、しこりなどに気をつけます。挿入部に仮性動脈瘤ができることがあるためです(東海メディカルプロダクツの添付文書)。

米国心臓病学会の解説では、ほかに、触れたときの振動(スリル)や、聴診での血管の雑音も手がかりに挙げられています。確定には超音波検査が使われる、とされています。気づいたら医師へ報告します。

抜いたあとの観察は、IABPの抜去|手順と、抜いたあとに見るところをどうぞ。

Q7. 感染

主に視点1から起きます。刺入部の発赤・熱感・排膿や、発熱などを観察し、挿入部の周りを保護します。

挿入部の皮膚が本来の防御機能を保てないために起こる(添付文書)、免疫機能の低下や挿入時の操作で起こることがある(教育資料)、とされています。

挿入時やガーゼ交換のときは、無菌的に操作します(ゲティンゲ社の添付文書)。体の外に出ているカテーテルを覆うスリーブは無菌性を保つものではないので、スリーブの内側も外側も同じように管理する、という注意もあります(東海メディカルプロダクツの添付文書)。

ガイドライン(2023年)には、IABPを入れた60人を調べた報告として、52%に全身性炎症反応症候群(SIRS)、22%に血液培養の陽性がみられ、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌が多かった、と紹介されています。これは60人を対象にした1つの報告です。SIRSや血液培養の陽性が、そのままIABPによる感染を意味するわけではありません。予防的な抗菌薬の投与は望ましいと考えられるものの、エビデンスに基づいた推奨はない、とされています。

合併症のまとめ

合併症主な原因(資料より)どう気づくか
下肢虚血血栓、内膜のはがれ、シースやカテーテルによる血流の阻害足の脈、冷感、しびれ、左右差。使用中・抜去後も
出血・貧血挿入時の動脈の損傷、カテーテルの動き、抗凝固薬刺入部の出血・血腫、採血データ、ほかの部位からの出血
血小板減少バルーンやカテーテルの動き、異物そのもの採血データ(血小板数)
バルーンの穿孔石灰化との接触、折れ曲がりによる疲労、鋭利な器具リークのアラーム、ヘリウムが通るチューブ内の血液や血のかたまり、オーグメンテーション波形の突然の変化
大動脈の枝の血流障害・血栓症血栓、バルーンが枝をふさぐ(位置)左腕の脈・血圧、尿量、お腹の症状
大動脈の損傷・解離挿入時の操作、先端が壁に当たったままのポンピング背中やお腹の痛み、ヘマトクリット値の低下、血圧低下
感染挿入部の皮膚の防御機能が保てない刺入部の発赤・熱感・排膿、発熱
仮性動脈瘤挿入・抜去時の動脈の損傷など抜去後の足の付け根の腫れ、痛み、皮下出血、しこり
IABPカテーテルの添付文書(東海メディカルプロダクツ、ゲティンゲ)、JSEPTIC教材、米国心臓病学会の解説をもとに作成

「なぜ起きるか」が分かると、「どう気づくか」がつながって見えてくると思います。

おわりに

合併症の一覧を丸暗記しようとすると、しんどくなります。

でも、管が入っていること。バルーンが動いていること。血を固まりにくくしていること。この3つに戻れば、なぜその観察をするのかが説明しやすくなります。

そして、合併症の多くは看護師が最初に気づける場所に現れます。足の脈と冷たさ、刺入部、ヘリウムのチューブの中、痛みの訴え、採血データ。どれも、そばにいる人が見ているものです。

気づいて、伝える。それだけで、患者さんの経過が変わることがあると思います。

IABPそのものの仕組みや観察項目は、IABPの看護と観察項目|仕組み・合併症・トラブル対応をQ&Aで整理にまとめています。

アラームが鳴ったときは、IABPのアラーム対応早見表|原因と最初にやることをどうぞ。

わたしは、看護が好きです。
だからこそ、看護の価値を問い続けていたいと思っています。

参考にした資料

※この記事は一般的な情報であり、個別の医療判断に代わるものではありません。実際の管理は、必ず主治医・指導者・院内の基準にしたがってください。数値はいずれも参考値であり、施設の基準を優先してください。

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