IABPのアラーム対応早見表|原因と最初にやること

記事「IABPのアラーム対応早見表|原因と最初にやること」のアイキャッチ画像。明るいICUのベッドサイドに、IABPの駆動装置が置かれている。画面には緑色の心電図波形が3段に表示され、手前の操作パネルとヘリウムのチューブが見える。奥にベッドと輸液ポンプ、窓の外には緑。左側に「補助循環・ICUの看護」「IABPのアラーム対応」「原因と、最初にやること」の文字。 🌿循環・補助循環の看護

IABPのアラームが鳴ったとき、原因として何が考えられ、まず何をすればいいのかをまとめました。

読み物ではなく、その場で引く早見表として使ってください。

【はじめにお断り】アラームの名前も、鳴ったときに止まるかどうかも、対処の手順も、機種やソフトウェアのバージョンによって違います。この記事は、日本で販売されているIABPの駆動装置8機種とカテーテルの添付文書、メーカーの資料をもとにした一般的な整理です。実際の対応は、装置の取扱説明書と、自施設の手順にしたがってください。

まず、これだけは ── 血液が見えたら、駆動を再開しない

ほかのことを全部忘れても、ここだけは覚えておいてください。

ヘリウムガスの通るチューブに血液が見えたら、バルーンのリーク(穴)が疑われます。

カテーテルの添付文書には、こう書かれています。

ガス漏れ検出アラームが発生した時にヘリウムガスルーメンに血液が混在している場合は、バルーンリーク等が疑われるため、ポンピングを再開せず速やかにバルーンカテーテルを抜去すること。

東海メディカルプロダクツ「TMP IABカテーテル Lightning」添付文書(2024年9月 第4版)

「様子を見てもう一度動かしてみる」は、してはいけない対応です。リークしたまま使い続けると、ガス塞栓(ヘリウム塞栓)などの重い健康被害を起こすおそれがあり、バルーンの中に入った血液が固まって抜去がとても難しくなるおそれもある、と同じ添付文書に書かれています。

リークが疑われるときは、シリンジなどでバルーンをふくらませない、とも書かれています(ゲティンゲのCARDIOSAVE、泉工医科工業のコラートBP21・BP3)。

見えるサイン

ゲティンゲの駆動装置の添付文書には、バルーンのリークが疑われる所見として、次の3つが挙げられています。

  • リークのアラームが鳴る
  • 体の外に出ているチューブや延長チューブの中に、砂のような血の塊や水滴のような血液が見える
  • 拡張期のオーグメンテーションの波形が、突然変わる

メーカーのガイド(Cardiosave、英語)では、チューブの中に見えるものとして、鮮やかな赤い血液、乾いた血の粒、薄く血の混じった液体が挙げられています。

そして大事なのは、小さなリークでは、アラームが鳴らないことがあるという点です(ゼオンメディカルのZUIRYU、ゲティンゲのCARDIOSAVE・CSシリーズ)。アラームが鳴っていなくても、チューブの中と波形は見ておきます。

血液が見えたら

駆動を再開せず、すぐに医師と臨床工学技士を呼びます。抜去の準備に入ります。

添付文書には、リークが疑われるときは、ポンプを止めてカテーテルを抜去すること、患者さんの頭を低くする体位(トレンデレンブルグ体位)をとることが書かれているものもあります(ゲティンゲの駆動装置、テレフレックスのカテーテル)。止めたあとの装置の操作(チューブの外し方やクランプなど)は機種ごとに決まっているので、臨床工学技士と装置の手順にしたがいます。

アラーム別 早見表

アラームの名前は機種によって違うので、ここでは「何が起きているか」で分けています。( )の中は、添付文書やメーカーの資料に出てくる表示の例です。

どのアラームでも、まずチューブの中に血液がないかを見ます。

アラーム考えられる原因最初にやること
ガスが漏れている
(ヘリウム・ガスモレ、ガス漏れ検出、Gas Loss in IAB Circuit など)
バルーンのリーク(穴)/チューブの接続のゆるみ・外れ/カテーテルやチューブの折れ(キンク)/心拍数が速い(140回/分以上)・不整脈まずチューブの中の血液を見る。あれば駆動を再開せず、医師・臨床工学技士へ。なければ、接続のゆるみ・外れと折れを確認する。再開後にまた鳴るときは、すぐに再開せず確認し直す
ガスの通り道がふさがっている
(ライン・ヘイソク、IAB Catheter Restriction など)
カテーテルやチューブの折れ・つぶれ(体の外、または体の中)/入れた直後で、バルーンが広がりきっていない・シースから出きっていない/血圧が高い装置までチューブをたどり、折れ、体の下敷き、脚の付け根の曲がりを見る。体の外に折れがなければ、体の中の折れを考えてX線で確認する
合図が拾えない
(トリガー不良 など)
心電図の電極のはがれ・浮き/信号が弱い/電気メスなどのノイズ/不整脈/動脈圧の波形が悪い電極を確認し、貼り直して固定する。誘導を変える。電気メスを使うときの対応は機種によって違う
補助の効きが下がった
(オーグメンテーション低下、Augmentation Below Limit Set など)
患者さんの循環の変化/アラームの設定値が高すぎる/バルーンの容量の設定が低い/バルーンの位置のずれ/タイミングのずれ/バルーンのリーク患者さんの血圧と状態を見る。チューブの中の血液を見る。設定、位置(X線)、タイミングの確認は医師・臨床工学技士と
血圧が取れない
(動脈圧のアラーム、No Pressure Source Available など)
圧ラインの外れ/三方活栓が大気に開いたまま/ラインの中の詰まり/トランスデューサーやケーブルの不具合ラインのつながりと三方活栓を確認する。外れていたら、そこから出血していないかを見る。信号源を切り替えてアラームを消さない
ヘリウムの残りが少ないボンベの残量が少ない臨床工学技士に連絡して、ボンベを交換する。残量は勤務ごとに見ておく
バッテリー・電源電源プラグが抜けている/バッテリーで動いている・残りが少ないまず電源プラグを確認し、AC電源につなぐ。移動やベッド移乗の直後は特に
駆動装置8機種・カテーテルの添付文書(PMDA、2026年10月時点の最新版)、Cardiosaveクイックリファレンスガイド(英語)、日本臨床工学技士会の集中治療業務指針をもとに作成

表の補足

  • ガス漏れ:血液が見えないときの確認として、シリンジで吸って血液が戻ってこないかを見る手順も、添付文書に挙げられています(東海メディカルプロダクツ、泉工医科工業)。テレフレックスのカテーテルの添付文書では、まず心拍数が速い(140回/分以上)か、不整脈かを確かめる、とされています。ゼオンメディカルの駆動装置の添付文書には、ガス漏れのアラームがくり返し鳴るときは、血液が見えなくても小さな穴(ピンホール)の可能性は否定できないため、抜去を推奨する、と書かれています。
  • ガスの通り道がふさがっている:日本臨床工学技士会の指針では、カテーテルの折れが疑われるときは、挿入部の固定や足の向きを整える、とされています。ゼオンメディカルの駆動装置では、血圧が高い(オーグメンテーションがおよそ180mmHg以上)と、折れていなくてもこのアラームが出ることがある、とされています。
  • 合図が拾えない:心電図の入力が弱い・不安定なときは、アルコール綿で皮膚の汚れや皮脂をふき取り、電極を貼り替えたり、位置を変えたりすると安定することがある、とされています(ゼオンメディカル)。電気メスや除細動器を使うときは、駆動を止めて使うとする機種(ゼオンメディカル)もあり、対応は機種によって違います。詳しくはIABPのトリガー|心電図と圧、どちらを使うのかにまとめています。
  • 補助の効きが下がった:ゲティンゲの駆動装置では、オーグメンテーションのアラームは、患者さんのオーグメンテーション圧より約10mmHg低い値に設定することになっています。自動で設定されるこのアラームは、心拍数が速いときにガス漏れなどのアラームの代わりにもなるので、手動で解除しない、とされています。
  • 血圧が取れない:テレフレックスのARROW AC3の添付文書には、動脈圧のアラームのときに信号源を切り替えないこと、と書かれています。チューブが外れているような重大な状態でも、アラームがリセットされてしまうおそれがあるためです。アラームがリセットされたときは、圧ラインに問題がないこと、出血がないことを確認する、とされています。
  • ヘリウム:ボンベの交換は、高圧ガスボンベの扱いに慣れた人が行う、とされています(ゼオンメディカル、ゲティンゲ)。日本臨床工学技士会の指針では、1日1回以上の使用中点検でヘリウムの残圧を確認する、とされています。Cardiosaveでは、ヘリウムのアラームが鳴った時点で、自動充填24回分が残っている、とされています。
  • バッテリー:バッテリーでの運転は、停電などのときの補助の手段です(ゲティンゲ)。Cardiosaveでは、バッテリーの残りが30分を切ると黄色、15分を切ると赤の表示になり、すぐにAC電源につなぐか、充電済みのバッテリーに入れ替える、とされています。搬送のときは、移動中の電源を確保する、とされています(テレフレックス、ゲティンゲ)。

止まるアラームと、動き続けるアラーム

アラームには、鳴るとポンピングが止まるものと、動き続けたまま知らせるものがあります(ゼオンメディカルのZUIRYU、Cardiosaveのガイド)。

止まったときは、止まった時刻を確認して、すぐに医師・臨床工学技士へ連絡します。テレフレックスの駆動装置の添付文書にも、停止時間を記録して、システムに詳しいスタッフに連絡する、とあります。

バルーンを動かさないまま長く置くと、表面に血栓ができるおそれがあります。どのくらいで手を打つかは機種で違い、添付文書には「数分以上」(ゼオンメディカル)、「30分以上動かさないままにしない」(ゲティンゲ)、「15〜30分以内に再開できなければ、シリンジで手動でふくらませてしぼませる」(テレフレックス)と書かれています。ただし、リークが疑われるときは、シリンジでふくらませません。止まったときの対応は、IABPのウィーニング|いつ、どう減らして、何を見るのかのQ4にもまとめています。

アラームを消す・切るときの注意

  • 消音しても、原因はなくなっていません。Cardiosaveの一時消音は60秒です。
  • アラームは、原因を直す短い間を除いてオフにしない。オフにするときは、経験のある人が装置と患者さんを見続ける(テレフレックスのARROW AC3・AutoCAT2)
  • アラームを止める機能を使っている間は、ガス漏れなどを検知できない(ゼオンメディカル、泉工医科工業)
  • アラームの音量は、まわりの音の中でも聞こえる大きさにしておく(テレフレックス、ゼオンメディカル、ゲティンゲ)

スマホ保存用:早見表の画像版

同じ内容を1枚にまとめました。長押しで保存して、夜勤のお守りにしてください。

IABPのアラーム早見表。冒頭に「まず、これだけは:ヘリウムの管に血液が見えたら、駆動を再開しない。すぐ医師・臨床工学技士へ。小さな穴ではアラームが鳴らないこともあるので、管の中はいつも見る」。表は、ガスが漏れている、ガスの通り道がふさがる、合図が拾えない(トリガー不良)、補助の効きが下がる(オーグメンテーション低下)、血圧が取れない(動脈圧)、ヘリウムが少ない、バッテリー・電源の7項目について、考えられる原因と最初にやることを並べている。下部に共通の初動として、患者さんを見る、血圧と波形を見る、管の血液を見る、チューブをたどる、人を呼ぶの5段階と、「消音しても、原因は残っています」。表示名や対応は機種によって異なると注記。

どのアラームでも共通の初動

表を引く前に、体が動く順番として持っておきたいものです。

  1. 患者さんを見る(意識、顔色、呼吸、冷や汗。装置より先に人を見ます)
  2. 血圧と波形を見る(オーグメンテーションが消えていないか)
  3. ヘリウムの管に血液がないか見る(ここで分岐します)
  4. チューブをたどる(接続の緩み、折れ、体の下敷き、脚の屈曲)
  5. 人を呼ぶ(医師・臨床工学技士。ためらわない)

3番でつまずいたら、そこで止めて人を呼んでかまいません。呼ぶのが早すぎて困ることはありません。呼んだあとも、観察と原因の確認は続きます。

添付文書にも、アラームが出たら必ず早急に対応すること(テレフレックス)、装置の警報や患者さんの異常に気づいたら、患者さんに安全な状態で装置を止めるなど適切な処置を速やかに行うこと(泉工医科工業)、と書かれています。

鳴らさないための備え

心電図トリガー中は、電極が命綱です

心電図で合図をとっているとき、電極がはがれると、バルーンを動かす合図が取れなくなります。

そのとき装置がどう動くかは、機種と設定で違います。たとえばゼオンメディカルの908では、トリガーの自動切り替えがONなら約12秒でほかの合図(血圧)に切り替わり、OFFならアラームを鳴らしてポンピングが止まる、とされています。

汗、体位変換、清拭、シーツ交換。はがれる場面はいくらでもあります。だから電極は、貼るだけでなく補強して固定する。ここは、看護師がいちばん守りやすい備えだと思います。

動かしたあとは、必ず見る

体位変換のあと、ベッドを動かしたあと、検査から戻ったあと。アラームはこういうときに鳴ります。

  • チューブが体の下敷きになっていないか
  • 脚の付け根が曲がっていないか
  • 電源プラグが抜けていないか
  • 波形が動く前と同じか

この4つを「動かしたらセットで見る」と決めておくと、鳴る前に気づけます。

体を動かすときやベッドを移るときは、上体や足を曲げないように注意する、と添付文書にもあります。カテーテルが押されて、先端が血管の壁を傷つけるおそれがあるためです(泉工医科工業)。

まとめ

アラームが鳴ると、どうしても装置の画面に目が行きます。

でも、最初に見るのは患者さんです。装置は「何かが変わった」と教えてくれているだけで、何が起きているかを知っているのは患者さんの体のほうです。

そして、覚えておくのは結局ひとつだけでいいのだと思います。

血液が見えたら、動かさない。

あとは表を引けば足ります。全部を覚えている必要はありません。

波形からタイミングのずれを読む方法は、IABPモニターの見方|拡張・収縮のタイミングとバルーン内圧波形にまとめています。

バルーンの穿孔そのものについては、IABPの合併症|なぜ起きるのか、どう気づくのかをどうぞ。

どの合図でバルーンを動かしているのかは、IABPのトリガー|心電図と圧、どちらを使うのかにまとめています。

IABPそのものの仕組みや観察ポイントは、IABPの看護と観察項目|仕組み・合併症・トラブル対応をQ&Aで整理にまとめています。

わたしは、看護が好きです。
だからこそ、看護の価値を問い続けていたいと思っています。

参考にした資料

  • IABP駆動装置の添付文書(PMDA、2026年10月時点の最新版)── ARROW 大動脈内バルーンポンプ AC3・アローIABP装置 AutoCAT2(テレフレックスメディカルジャパン)、IABPコンソール ZUIRYU・ゼメックスIABPコンソール 908(ゼオンメディカル)、コラートBP21・BP3(泉工医科工業)、CARDIOSAVE・CSシリーズ(ゲティンゲグループ・ジャパン)── アラーム、バルーンリーク、停止時の対応、電気メス、電源・バッテリー、ヘリウム
  • IABカテーテルの添付文書(PMDA、2026年10月時点の最新版)── 東海メディカルプロダクツ「TMP IABカテーテル Lightning」(2024年9月 第4版)ほか、テレフレックス、泉工医科工業、ゼオンメディカル、ゲティンゲの製品 ── ガス漏れ検出アラームが出たときの確認手順、十分な効果が得られない要因、体動の注意
  • Cardiosave IABP Quick Reference Guide(Getinge、ソフトウェアD.03、英語)── 25〜48ページ(バルーン穿孔の所見と対応、アラームの種類、各アラームの考えられる原因と対処、バッテリー、ヘリウム)
  • 集中治療業務指針(日本臨床工学技士会、2012年)── IABPの使用中点検(ヘリウム残圧)、緊急時の対応(キンクが疑われるとき)

※この記事は一般的な情報であり、個別の医療判断に代わるものではありません。アラームの表記・原因・対応は機種によって異なります。実際の対応は、必ず装置の取扱説明書、主治医・臨床工学技士の指示、院内の基準にしたがってください。

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