IABPのウィーニング|いつ、どう減らして、何を見るのか

記事「IABPのウィーニング|いつ、どう減らして、何を見るのか」のアイキャッチ画像。夕方のやわらかい光が差し込むICUで、ベッドサイドのIABPの駆動装置の画面に、心電図(緑)、動脈圧波形(水色)、バルーン内圧波形(黄色)が補助比率1:2で映っている。左側に「補助循環・ICUの看護」「IABPのウィーニング」「いつ、どう減らして、何を見るのか」の文字。 🌿循環・補助循環の看護

IABPが入った患者さんを受け持っていると、いつか必ずこの日が来ます。

機械の助けを、減らしていく日です。

ウィーニングは、心臓が回復してきた証でもあります。でも同時に、いちばん慎重に見ていたい時間でもあります。減らした分を、心臓が自分で担えるかどうかを試しているからです。

※日本循環器学会のガイドライン(2023年)、IABPのカテーテルと駆動装置の添付文書をもとにしています。ウィーニングの方法や設定は、機種と施設の手順によって異なります。

Q1. ウィーニングとは、何をしているのですか?

IABPの助けを、少しずつ減らしていくことです。

ここで大切なのは、ウィーニングは「引き算のテスト」だということです。

機械が担っていた分を減らして、その分を心臓が自分で引き受けられるかどうかを見ている。うまくいけば離脱へ進み、うまくいかなければ戻します。

だから看護師が見るのは、「減らした分を、心臓が担えていないサイン」です。ここが分かっていると、何を観察すればいいかがはっきりすると思います。

Q2. いつ始めるのですか?

ガイドラインの考え方

ガイドライン(2023年)では、右心カテーテル検査などで血行動態をモニタリングし、その数値を離脱の基準にするのが一般的とされています。患者さんの背景や経過によって個別の判断が必要ですが、心係数の上昇や、肺動脈楔入圧(PAWP)の低下が離脱の目安になる、とされています。

同じガイドラインの図(ショックの重症度の段階ごとの対応)では、静注強心薬(±IABP)で治療を始めたあと、臓器の低灌流が続いていなければ、静注強心薬(±IABP)の離脱へ進む流れになっています。低灌流の目安として、次のものが挙げられています。これはショックでの低灌流の目安で、IABPの離脱の合格基準ではありません。

  • 混合静脈血酸素飽和度(SvO2)60%未満
  • 平均血圧 60mmHg未満
  • 乳酸値 2.0mmol/L以上
  • 心係数 2.2L/分/m²未満
  • cardiac power output(心臓のポンプの力を表す指標)0.6W未満

ただし、数値がそろえば自動的に離脱する、というものではありません。

カテコラミン使用中でも、離脱を検討することがある

ガイドラインには、カテコラミンの使用下に離脱を開始するのが安全と書かれています。

カテコラミンを使っていることだけで、IABPから離脱できないとは限りません。薬の種類や量と、補助を減らしたあとの循環の変化を、あわせて見ていくことになると思います。

不整脈が妨げにならないこと

ガイドラインには、不整脈が離脱の妨げとならない状態も必要、と書かれています。不整脈や高度の頻脈があると、IABPの効果そのものが弱くなることがあるとされています。

現場で見ていること

数字のほかに、現場ではこういうところも見ていると思います。

  • 循環動態の変動が小さくなってきた(血圧や心拍が、揺れなくなってきた)
  • 尿が出る、意識がはっきりしてくるなど、臓器の状態が持ち直してきた
  • 薬のサポートで、なんとかなりそうだと見通しが立った

IABPを外したあと、患者さんの循環は薬で支えていくことが多くなります。「機械がなくても、薬でやっていけそうか」という見通しも、判断の大事な中身なのだと思います。

現場では、IABPを減らしたあとに血圧が下がったとき、薬でもう一段支えられる余地が残っているか、という見方をすることもあります。

Q3. どうやって減らしていくのですか?

ガイドラインでは、補助比率を1:1〜1:2、さらに1:3と段階的に下げていくのが一般的とされ、バルーンの駆動ガス容量を徐々に下げていく方法もある、とされています。

IABPのウィーニングで補助比率を下げる図。上から1:1、1:2、1:3の3段で、それぞれ同じ心電図6拍と動脈圧波形を並べている。バルーンがふくらむ心拍では、ディクロティックノッチのあとに拡張期の2つめの山が出て、淡い青の帯で「バルーン拡張」と示している。1:1は1心拍ごとにふくらむ(ウィーニング前の基本)、1:2は2心拍に1回、1:3は3心拍に1回ふくらみ、ふくらまない心拍は2つめの山のないふつうの波形。下に、補助比率を段階的に下げていく方法が一般的(JCS2023)、もう1つの方法としてバルーンのガス容量を下げる(例:100%から70%)。
図:補助比率を下げる方法と、ガス容量を下げる方法。ガス容量をどこまで下げてよいかは、機種ごとに決まりがあります(Q3)。

① 補助比率を下げる

1心拍ごとに動いていたバルーンを、2心拍に1回(1:2)、3心拍に1回(1:3)と減らしていきます。

テレフレックスの駆動装置(ARROW AC3)の添付文書にも、ウィーニングの方法として、バルーンの容量は最大のまま、補助の頻度を徐々に減らす方法が挙げられています。

1:3まで来ていたら、抜去が近いことが多いと思います。看護師にとっては、抜去の準備を考え始める目安になります。

② ガス容量を下げる

バルーンをふくらませるガスの量を減らしていく方法です。ただ、駆動装置の添付文書には、どこまで下げてよいかについて注意が書かれています。

駆動装置書かれていること
CARDIOSAVE、CSシリーズ(ゲティンゲ)ガス容量を下げてウィーニングするとき、バルーンのふくらみの表示が50%に届かないところまでは下げない(バルーンに血栓が付くおそれがあるため)
ARROW AC3(テレフレックス)バルーンの容量を最大の3分の2以下に設定しない。容量で減らす場合でも、1〜2時間ごとに5分間は最大の容量で動かすことが推奨される
各駆動装置の添付文書(PMDA、2026年10月時点の最新版)をもとに作成

どちらの方法をとるか、どこまで下げるかは、機種と施設の手順によって違います。

だから、1:2はそれ自体が情報です

ウィーニングに入るまで、補助比率は1:1が基本です。

ですから、画面が1:2になっていたら、それ自体が「ウィーニングが始まった」という意味を持つことがあります。ただし、タイミングを合わせるときに、一時的に1:2にすることもあります。

設定が変わっているのに気づいたら、なぜ変わったのかを確認する。それも観察の一部だと思います。

Q4. 減らしているあいだに、気をつけることは?

バルーンを止めたままにしない

ウィーニングで助けを減らしていても、バルーンは体の中にあります。添付文書には、バルーンが動かない時間が長くならないようにという注意が書かれています。

  • ポンピングを30分以上止めない(血栓ができるおそれがあるため):ゲティンゲのIABカテーテル
  • 数分以上駆動を止める場合は、バルーンの表面に血栓ができる可能性があるので、医学的な措置をとる:ゼオンメディカルの駆動装置
  • ポンプが止まり、15〜30分以内に再開できない場合は、シリンジで1時間に数回、手動でふくらませてしぼませる。止まった時間を記録する:テレフレックスの駆動装置

「30分以上止めない」は、30分までは待ってよい、という意味ではありません。

一方で、ゲティンゲの駆動装置(CARDIOSAVE)の添付文書の警告には、バルーンのリークが疑われるときは、シリンジなどでバルーンをふくらませない(ガス塞栓で臓器を傷つけるおそれがあるため)と書かれています。停止の原因と機種によって、対応は違います。

装置の停止に気づいたら、患者さんの状態と停止時刻を確認し、直ちに医師・臨床工学技士へ連絡します。その後の対応は、機種の添付文書と院内の手順に従います。

抗凝固

ガイドラインでは、IABPの駆動中は、血栓塞栓症や出血の合併を防ぐために適切な抗凝固療法が必要とされています。血栓を防ぐための抗凝固は、出血を助長することもあります。ウィーニング中も、血栓と出血の両方に注意が必要です。抗凝固療法は、出血の有無や検査値、抜去の予定を踏まえて管理されます。

抜去の前には、抗凝固療法の中止や減量が検討されます(添付文書)。抜去の流れは、IABPの抜去|手順と、抜いたあとに見るところにまとめています。

Q5. ウィーニング中、看護師は何を見るのですか?

Q1で書いたとおり、見ているのは「減らした分を、心臓が担えていないサイン」です。

変更の前と後を比べる

補助を減らした時刻と設定を記録し、変更前と比べて何が変わったかを見ます。薬の量が同時に変わっていないかも、あわせて確認します。日本臨床工学技士会の集中治療業務指針にも、記録する項目としてアシスト比(補助比率)やトリガーのモードが挙げられています。

循環が悪くなっていないか

血圧が下がってきた。心拍が上がってきた。末梢が冷たくなってきた。尿量が減ってきた。

負荷がかかったと思われるバイタルサインの変化を、ひとつずつ拾っていきます。

心拍出量・心係数が保てているか

助けを減らした分、心拍出量が保てているか。ガイドラインでも、心係数は離脱の目安の1つです。数字が下がってきているなら、心臓が追いつけていないのかもしれません。

乳酸値が上がってきていないか

これは見逃したくない数字です。ガイドラインの図でも、乳酸値2.0mmol/L以上が低灌流の目安の1つに挙げられています。

血圧が保たれていても、組織に十分な血液が届いていなければ、乳酸は上がってきます。血液ガスを取ったときは、乳酸値の動きを前回と比べる習慣を持っておきたいところです。

呼吸が変わっていないか

息苦しさ、呼吸数、酸素化の変化も見ます。心臓が追いつけなくなると、肺のうっ血が出てくることがあるからです。なお、IABPの使用中は、パルスオキシメーターの値が不正確になる可能性がある、とされています(日本臨床工学技士会の指針)。血液ガスの値や、患者さんの様子とあわせて見ます。

胸痛や心電図の変化がないか

胸痛が出たり、心電図に変化が出たりしたときは、心筋虚血が疑われます。

IABPは、心筋に届く酸素を増やしていた装置です。その助けを減らしたことで、虚血が出てきたのかもしれません。すぐに医師に伝え、補助比率を戻すかどうかを判断してもらいます。

Q6. 戻すことは、失敗ではありません

ウィーニングの途中で状態が悪くなり、1:1に戻すことがあります。

これは失敗ではありません。その時点では、補助を減らすことに心臓が耐えられなかった、ということです。原因を確かめて、もう一度評価していきます。

むしろ怖いのは、悪くなっているのに気づかないまま進めてしまうことです。

そして、その変化にいちばん早く気づけるのは、そばで見ている看護師だと思います。血圧の数字、足の冷たさ、尿量、そして乳酸値。どれも看護師が日々触れているものです。

「なんとなく、さっきより悪い気がします」でかまいません。そこから確認が始まります。

おわりに

ウィーニングは、機械を外すための作業ではありません。

心臓が、自分の力を取り戻しているかどうかを確かめる時間です。

助けを少しずつ引いていって、その分を心臓が担えるか。担えていれば進み、担えていなければ戻す。その繰り返しの中で、患者さんは機械から離れていきます。

減らしていく過程を、いちばん近くで見ているのは看護師です。

抜いたあとは、刺入部の止血と、末梢側に虚血がないことを確かめるよう、ガイドラインに書かれています。抜去の看護は、IABPの抜去|手順と、抜いたあとに見るところにまとめています。

IABPそのものの仕組みや観察項目はIABPの看護と観察項目|仕組み・合併症・トラブル対応をQ&Aで整理、補助比率が変わったときの波形の見え方はIABPモニターの見方|拡張・収縮のタイミングとバルーン内圧波形をどうぞ。

わたしは、看護が好きです。
だからこそ、看護の価値を問い続けていたいと思っています。

参考にした資料

  • 2023年 JCS/JSCVS/JCC/CVIT ガイドライン フォーカスアップデート版 PCPS/ECMO/循環補助用心内留置型ポンプカテーテルの適応・操作(日本循環器学会ほか)── 第2章 1.2「駆動方法」(抗凝固)、1.3「離脱方法」、第1章 図2(SCAI Shock Stage C・Dにおける対応、低灌流の目安)
  • IABP駆動装置の添付文書(PMDA、2026年10月時点の最新版)── CARDIOSAVE・CSシリーズ(ゲティンゲグループ・ジャパン)の警告(ボリューム・ウィーニング)、ARROW 大動脈内バルーンポンプ AC3(テレフレックスメディカルジャパン)の警告(ポンプ停止時、バルーン容量、ウィーニング方法)、IABPコンソールZUIRYU・ゼメックスIABPコンソール908(ゼオンメディカル)の注意(駆動停止と血栓)
  • IABカテーテル TRANS-RAY 添付文書ほか、ゲティンゲグループ・ジャパンのIABカテーテルの添付文書(2024年)── ポンピングを30分以上停止しないこと
  • IABカテーテルの添付文書(ゼオンメディカルほか)── 抜去の前に抗凝固療法の中止または軽減を検討
  • CARDIOSAVE 添付文書(ゲティンゲグループ・ジャパン、2026年7月 第7版)── 警告(リークが疑われるときはシリンジなどで拡張させない)
  • 集中治療業務指針(日本臨床工学技士会、2012年)── IABPの治療中の記録、患者観察
  • 医療機器安全管理指針II(日本臨床工学技士会)── IABP施行中はパルスオキシメーターの値が不正確になる可能性
  • 2025年改訂版 心不全診療ガイドライン(日本循環器学会・日本心不全学会)── cardiac power outputの定義(単位W)

※この記事は一般的な情報であり、個別の医療判断に代わるものではありません。ウィーニングの判断や設定の変更は、必ず主治医・臨床工学技士・院内の基準にしたがってください。

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