インペラのパージ液|なぜブドウ糖なのか、濃度で何が変わるのか

インペラのパージ液の記事のアイキャッチ。明るい集中治療室で、点滴スタンドにつるした透明な輸液バッグから細いチューブが装置へつながり、奥に整えられたベッドとモニターが見える。左側に深い緑のバッジ「補助循環・ICUの看護」と、文字「インペラのパージ液」「なぜブドウ糖なのか、濃度で何が変わるのか」。 🌿循環・補助循環の看護

インペラを受け持つと、必ず一度は思うことがあります。

「なぜ、ブドウ糖なんだろう」

生理食塩液ではいけないのか。なぜ濃度を変えることがあるのか。この記事は、そこに絞って書きます。

Q1. パージ液は、何をしているのですか?

モータの中に血液が入らないよう、圧の壁をつくっています。

インペラには、羽根車を高速で回す小さなモータがあります。モータの内部に血液が入り込んで固まると、ポンプの動きを妨げるおそれがあります。

そこで、パージ液を持続的に送り、血液がモータの内部へ入り込まないようにします。この圧の壁(圧バリア)で機械を守るのが、パージシステムの役割です。

ただし、機械を守るための液も、患者さんの体内に流れ込みます。ヘパリンが添加されている場合は、別ルートからの投与分と合わせて、抗凝固作用や出血を評価する必要があります。

Q2. なぜ、ブドウ糖なのですか?

パージ液には、装置で指定されたブドウ糖液を使用します。生理食塩液は代用できません。

生理食塩液を使わない理由は、「濃度を調整できないから」ではありません。国内の承認時資料では、ポンプ内部の金属の電解腐食を避けるためと説明されています。使用する液は、機器との適合性が確認されたものを選ぶ必要があります。[PMDA承認時資料]

濃度が変わると、圧だけでなく流量も変わる

ブドウ糖液は、濃いほど粘度が上がり、流れにくくなります。同じ流量なら、流れにくい液ほど高い圧が必要になります。

一方、制御装置は、パージ圧が決められた範囲に収まるように、流量を自動調節しています。そのため、濃度を変えた影響は、圧だけではなく流量も合わせて確認します。

ブドウ糖濃度液の性質自動調節下での流量の傾向
高くなる粘度が上がり、流れにくくなる同じ圧を保つための流量は少なくなる傾向
低くなる粘度が下がり、流れやすくなる同じ圧を保つための流量は多くなる傾向
同じ装置・流路条件で考えた関係です。実際の圧と流量は、流路の抵抗や装置の制御範囲にも影響されます。濃度変更の指示表ではありません。

低圧・高圧アラームへの対応として、ブドウ糖濃度の変更が検討されることはあります。ただし、先に液漏れや折れ曲がりなどの原因を確認し、医師・臨床工学技士と相談して、使用機種の手順に沿って判断します。

Q3. 何を、どれだけ入れるのですか?

ヘパリンを添加するパージ液では、5%ブドウ糖液を基本とする推奨があります。ただし、使用できる組成・濃度は、使用機種の添付文書・取扱説明書と施設の手順を確認します。

たとえば、国内のIMPELLA CP添付文書(2024年4月・第6版)では、ヘパリン加ブドウ糖注射液500mLバッグを用い、ヘパリン濃度は50単位/mLを推奨しつつ、患者さんの状態に応じて25単位/mLなどに調整すると記載されています。50単位/mLが、すべての患者さんに共通する固定値ではありません。[国内添付文書]

装置で入力・選択できる濃度と、実際に調製した液の組成が一致しているかも確認します。選択肢は機種やソフトウェアの版によって異なるため、画面の選択肢だけで使用可能な液を判断しません。

パージ流量が変わると、ヘパリン投与量も変わる

ヘパリン濃度が同じでも、パージ流量が増えれば、時間あたりに体内へ入るヘパリン量も増えます。濃度だけでなく、流量と別ルートの投与量を合わせて確認します。出血の有無や、施設で用いる抗凝固の検査値も大切です。[SCAI管理指針]

ヘパリンが使えない場合

HIT(ヘパリン起因性血小板減少症)などでヘパリンが使えない場合には、ブドウ糖液に炭酸水素ナトリウム(重炭酸ナトリウム)を添加したパージ液が検討されます。重炭酸ナトリウム注射液をそのまま使う、という意味ではありません。使用条件と調製方法は、国内の機器資料と施設の手順に従います。

また、パージ液からヘパリンを除くことと、全身の抗凝固療法が不要になることは別です。全身の抗凝固療法は、血栓・出血のリスクやHITの有無などから医師が判断します。[メーカー資料・米国向け]

濃度変更時は、装置の交換手順に従う

濃度を変えるときは、装置の「パージ液交換」の手順に従い、必要に応じてパージカセット内の液を置換します。古い液が残ることもあるため、交換直後の数値だけで効果を判断しません。

ここでいうフラッシュは、シリンジで患者側へ液を押し込む操作ではありません。装置の画面案内と使用機種の取扱説明書に従う操作です。接続の扱いを含め、訓練を受けたスタッフが施設の手順に沿って行います。[メーカー取扱説明書・Impella 2.5、米国版]

Q4. パージのアラームが鳴ったら

まず、患者さんの循環状態と、インペラの補助が維持されているかを確認し、医師・臨床工学技士へ速やかに共有します。アラーム名、パージ圧と流量の現在値・推移を一緒に伝えます。

圧の上昇と流量の低下は流路の抵抗増加、圧の低下と流量の増加は漏れなどを考える手がかりです。ただし、数値の組み合わせだけで原因を確定することはできません。

以下は初期確認の整理です。アラームの名称・発報条件や交換手順は、機種・ソフトウェアの版によって異なります。具体的な数値と操作は、使用中の装置の画面案内・取扱説明書を確認してください。

アラーム・変化最初に確認することチームで判断する対応
パージ圧低下・液漏れ液の残量、接続部の緩み・漏れ、圧と流量の推移原因に応じたパージ用セット交換など。低圧が続く場合の濃度変更は、漏れ等を評価して検討
パージ圧上昇・閉塞見える範囲のラインの折れ曲がり・圧迫、現在の液の濃度、流量の低下流路やカテーテルの異常を評価。濃度変更や機器の交換が必要かを判断
パージシステム故障画面のアラーム内容、補助の状態、接続状態装置の手順に沿って、パージ用セットや制御装置の交換などを判断

濃度変更だけで解決しようとしないこと、一定時間を待ってから報告するわけではないことが大切です。対応中も患者さんの状態と装置の動きを継続して確認します。

折れ曲がりは、体の中に入っているカテーテルで起きていることもあります。見えるところに異常がなくても、アラームが続けば評価が必要です。カテーテルを自己判断で動かさず、チームへつなぎます。

Q5. 毎日、看護師が見るところ

  • パージ圧・流量と、その推移(今の値だけでなく、いつからどう変わったか)
  • パージ液の組成・濃度(ブドウ糖、ヘパリン、炭酸水素ナトリウムなど。指示・バッグ表示・装置入力の一致)
  • パージ経由と別ルートの抗凝固薬(投与量、出血所見、施設で用いる検査値)
  • 液の残量と交換予定(供給が途切れる前に準備する)
  • 接続部の漏れ、ラインの折れ曲がり・圧迫
  • 液の色の変化(赤みなどの異常があれば、場所と圧・流量の変化を添えて報告する。色だけで溶血と断定しない)

履歴表示を使うと、「今の値」だけでなく「どう変わってきたか」を共有できます。確認できる項目や時間の範囲は、使用中の装置で確認してください。

それともうひとつ、大切にしたいことがあります。

ベッドを動かすとき、インペラを引っ張らないこと。

検査へ出すとき、部屋を移るとき、体位を変えるとき。「動かす前に、線をたどる」を習慣にし、引っ張りや折れ曲がり、接続の外れを防ぎます。

おわりに

パージ液の主な役割は、モータを守り、インペラの働きを維持することです。同時に、体内に入る液と薬剤としての影響にも目を向ける必要があります。

供給が途切れ、モータの中で血液が固まれば、ポンプそのものが止まりかねません。だからこそ、残量や接続の確認が、患者さんの循環を守ることにつながります。

ブドウ糖液は、装置で指定されたものを使う。その濃度は粘度に影響し、パージ圧・流量、ヘパリン添加時の投与量にも関わります。

意味が分かると、残量を見る目も、ラインをたどる手も、少し変わってくるのではないかと思います。

パージ圧と流量の読み方は、インペラ(Impella)のアラーム対応早見表|原因と最初にやることにまとめています。

パージ圧の範囲と、4つのアラームが出る条件は、インペラのパージ圧とパージ流量にまとめました。

溶血の観察については、インペラ(Impella)の溶血とは|尿の色・採血データで気づくサインをどうぞ。

ヘパリンが使えないときの考え方は、インペラ(Impella)の禁忌とは|看護師が知っておきたい「使えない人・注意が必要な人」に書いています。

インペラ全体の観察項目は、インペラ(Impella)看護Q&A完全ガイド|観察項目・アラーム対応まとめにまとめています。

わたしは、看護が好きです。
だからこそ、看護の価値を問い続けていたいと思っています。

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参考にした資料

資料の対象機種・地域・版はそれぞれ異なります。海外資料や承認時資料の操作を、そのまま現在の国内機種に適用するものではありません。使用時には、インペラ部会の承認製品一覧などから対象機種の添付文書を確認し、手元の取扱説明書と照合してください。

※この記事は一般的な情報であり、個別の医療判断に代わるものではありません。パージ液の組成・濃度の変更・アラームへの対応は、必ず使用機種の添付文書・取扱説明書、主治医・臨床工学技士の指示、院内の基準に従ってください。