VA-ECMOのアセスメントQ&A 7つ|受け持った日に、どこから見ていくか

記事「VA-ECMOのアセスメントQ&A 7つ|受け持った日に、どこから見ていくか」のアイキャッチ画像。朝の光が差し込む明るいICU。右側に、黒いモーターの上に乗った透明な円盤型の遠心ポンプヘッドと、箱型の人工肺、それらをつなぐ太い透明チューブが並ぶ。奥には波形だけを映した生体情報モニターと、整えられたベッド、窓と観葉植物が見える。左側に「補助循環・ICUの看護」の緑色のバッジと、記事タイトルが置かれている。 🌿循環・補助循環の看護

VA-ECMOの患者さんを受け持った日に、何を見ていくか。

日本循環器学会のガイドラインに、「毎日行う」と名指しで並べてある一節があります。見る順番までは決まっていませんが、見落としてはいけないものの一覧にはなっています。

それを、ひとつずつたどります。

※この記事はVA-ECMO(PCPS)を前提にしています。VV-ECMOでは見るところが変わるところがあります。

VA-ECMOを受け持った日の見かたを示した早見図。①なぜ右手で見るのか。自分の心臓から出た血液は、自己肺の酸素化が悪いと酸素の少ないまま流れる(青)。ECMOの血液は大腿から上へ流れ、大動脈弓の途中でぶつかる(赤)。ぶつかる高さはECMOの流量で動き、流量が多いほど上になる。左腕へはECMOの血液が先に届くため、左手のSpO2を見ていると気づけないことがある。心臓に近い側の枝は冠動脈・右腕・脳で、この3つには同じ血液が流れていく。だから右上肢のSpO2と血液ガスで見る(North-south syndrome)。②毎日見るもの。ECMOはどれだけ送り出しているか=回転数・流量、人工肺、回路の圧(P1・P2・P3とΔP)。体に届いているか=灌流圧(右橈骨動脈)、SvO2、乳酸、尿量・肝機能、CVP、下肢。自分の心臓と肺はどうなってきたか=動脈圧波形の脈圧(大動脈弁が開いているか)、右上肢の血ガス・SpO2。③手でさわって分かるもの。下肢虚血は17%に発生し5%で切断の報告があり、リスクは20Fr以上の送血カニューラと若年で、進行してからでは救肢できないこともある。サインは色調の変化、冷感、下腿筋の拘縮、CKの上昇。予防として4〜7Frのシースを大腿動脈の末梢側に入れることが推奨されている。脈圧が小さくなっていないか。動脈圧波形は大動脈弁が開いているかを映しており、平らに近づいてきたら左室の後負荷が増えていないかを考える。

※この図は保存して使えます(スマホは長押し、パソコンは右クリック)。手元に入れておくと、必要なときにすぐ開けます。

Q1. まず、何が「毎日」なのでしょう

日本循環器学会のガイドラインには、こう書かれています。

血行動態のモニタリング、V-A ECMOの回転数・流量、人工肺機能、自己肺機能、自己心機能(左室機能、右室機能、心腔内・大動脈cuspの血栓、左室の減圧)、カニューラ刺入部の出血や感染の有無、全身臓器灌流不全による臓器障害の有無、凝固機能、神経学的評価を毎日行う。

JCS2023 第2章 2.3「V-A ECMOの管理」

読み返すと、機械の話と、体の話が交互に出てくるのが分かります。回転数・流量と人工肺は機械。自己肺・自己心・臓器障害・凝固・神経は体。そして刺入部は、その境目にあります。

わたしは、これを3つのまとまりに分けます。

  • ECMOは、どれだけ送り出しているか(回転数・流量・人工肺・回路の圧)
  • 体に、届いているか(灌流圧・SvO2・乳酸・尿量・肝機能・下肢)
  • 自分の心臓と肺は、どうなってきたか(大動脈弁の開放・右上肢の酸素化)

そこに刺入部・凝固・神経が加わる、という形です。

Q2. なぜ「右手」で見るのでしょう

ガイドラインは、モニタリングについてこう書いています。

右橈骨動脈ラインから全身灌流圧、右心カテーテル検査から混合静脈血酸素飽和度による全身酸素需給バランス、CVPによる血管内volume、PAWPによる肺うっ血の有無や左室内圧負荷の状況、肺動脈圧による右心機能の継続的なモニタリングを行う。

JCS2023 第2章 2.4

右上肢の血液ガスやSpO2により、自己肺酸素化能の評価を行う。

JCS2023 第2章 2.4

左手ではなく、右手。それには理由があるようです。

血液が、ぶつかっているから

大腿動脈から送血しているVA-ECMOでは、ECMOの血液は足のほうから、体の上に向かって流れてきます。いっぽう自分の心臓が動いていれば、そこから出た血液は大動脈を下りてきます。

2つの流れが、どこかでぶつかります。

問題は、自分の肺の酸素化がよくないときです。ガイドラインは、こう説明しています。

自己心拍出機能が残っているものの自己肺酸素化不良な場合、十分に酸素化されていない血液が左室から拍出され、冠動脈や頸部分枝を灌流してしまうNorth-south syndromeが起きるため、右上肢の血液ガス測定やSpO2モニタリングが必要である。

JCS2023 第2章 2.7

心臓と、脳へ向かう枝。そこを流れるのが、ECMOのきれいな血液ではなく、自分の肺を通った酸素の少ない血液になってしまう。これがNorth-south syndromeと呼ばれるものだそうです。

ECMOの血液は大腿から逆向きに上がってくるので、大動脈のどこかで自分の血液とぶつかります。ELSOのGeneral Guidelinesは、混ざるのは大動脈の中ほどで、流量が多いほど混ざる位置は高くなるとしています。

ぶつかる位置より心臓側にあるのが、冠動脈と、右腕・脳へ行く枝です。ELSOのVA-ECMOガイドラインは、自己肺の酸素化が悪いときに酸素の少ない血液を受けとる場所として「冠動脈・右腕・脳」を挙げています。左腕は入っていません。

JCS2023には、こうもありました。

冠循環の酸素化は非侵襲的には評価できないため、脳循環の酸素化の指標となる右上肢の酸素飽和度を用いて、ECMO、IMPELLA、人工呼吸器の設定を調節する。

JCS2023 第2章

心臓に行っている血液は、直接には測れない。だから、いちばん近いところにある右手を見る。ECMOで右手にSpO2をつけるのは、このためだと思います。

Q3. 大動脈弁は、開いているでしょうか

ガイドラインは、全身灌流が確立したあとに「動脈圧波形や心エコーで大動脈弁開放の有無を確認する」としています。

開かないと、何が起きるのか

心機能が高度に障害され、大動脈弁が開放しない状態では、ECMOによる左室の後負荷増加、LVEDPの上昇から肺うっ血をきたすリスクが高く、肺うっ血の進行が認められる症例には左室減圧を検討する必要がある。

JCS2023 第2章 2.6

ECMOは、足から体の中心に向かって血液を押し込んでいます。心臓から見ると、押し返さなければいけない圧が増えているということになります。弁が開かなくなると、行き場のなくなった血液が左室にたまり、そのうしろの肺にうっ血が及ぶ。

看護師が見られるのは、動脈圧波形です

ガイドラインは、見る方法をいくつか挙げています。

  • 動脈圧波形による大動脈弁開放の有無
  • 心エコーによる大動脈開放の有無、左室拡張の有無
  • 胸部X線による肺うっ血の進行
  • スワンガンツカテーテルによるPAWPや肺動脈拡張期圧(もっとも直接的に左室内圧の上昇を察知できる、とされています)

このうち、ベッドサイドでいつでも見えているのは動脈圧波形です。弁が開いていれば、そのたびに波が立ちます。開かなくなると、波形は平らに近づいていきます。

「昨日より、脈圧が小さくなっていませんか」。それが言えるのは、続けて見ている人だけなのかなと思います。

Q4. 足は、どうでしょう

見落とすと、取り返しがつかなくなるところです。

V-A ECMO確立において大腿動脈からアクセスする場合、17%において送血側下肢虚血が発生し、5%に下肢切断が必要であったと報告がある。20 Fr以上の大きな送血カニューラの使用や、若年が下肢虚血のリスクであることが報告されている。

JCS2023 第2章 2.2

6人に1人くらいで起きて、20人に1人が切断。そしてリスクなのは「若い人」。これは、少し意外に感じるかもしれません。

下肢虚血が進行してからの再灌流では救肢出来ない可能性もあり、下肢の色調の変化、冷感、下腿筋の拘縮、CK(クレアチンキナーゼ)などの筋逸脱酵素の上昇、近赤外線分光法(NIRS)による組織酸素飽和度の確認、ドプラエコーでの末梢動脈血流の確認により、下肢虚血の早期診断が必要である。

並んでいるもののうち、色調の変化・冷感・下腿筋の拘縮は、機械がなくても分かります。触って、見て、気づけるものです。

わたしが気になったのは「下腿筋の拘縮」でした。色や冷たさより、少しあとに出てくるサインだと思います。ふくらはぎが硬い。他動で動かすと抵抗がある。そこに気づけるかどうかは、毎日さわっているかどうかで変わるのではないでしょうか。

なお、予防として4〜7Frのシースを大腿動脈の末梢側に挿入し、下肢灌流を保つことが推奨されるとも書かれています。入っているかどうか、確認しておきたいところです。

Q5. 体に、届いているでしょうか

流量の数字が出ていても、それは「機械から出た量」です。体に足りているかどうかは、別に見る必要があるということのようです。

見るもの 何を映しているか
右橈骨動脈の圧 全身の灌流圧
SvO2(混合静脈血酸素飽和度) 全身の酸素の需要と供給のバランス
CVP 血管内のvolume
PAWP 肺うっ血の有無、左室内圧の負荷
肺動脈圧 右心機能
乳酸値 循環不全の有無
尿量・肝機能 臓器が灌流されているか
JCS2023 第2章 2.4・2.5より

日本呼吸療法医学会のテキストは、VA-ECMOについて「SvO2は酸素運搬が適切かどうかの指標となる。70%以上であれば、酸素運搬は適切と考えられる」としています。

そして流量が足りないときは、こうありました。

尿量や肝臓機能障害の有無など、全身臓器灌流不全がないか注意深く観察し、全身への灌流量不足を認める場合には血管内容量不足による脱血不良を疑う必要がある。

JCS2023 第2章 2.5

「流量が下がった」と「体に届いていない」は、別々に見るものなのですね。回路の圧から原因をたどる話は、流量と3つの圧の記事に書きました。

体に届いているかを採血の数字で見る方法は、補助循環中の採血データにまとめました。

Q6. 残りの3つ ── 刺入部・凝固・神経

最初の一節に戻ると、あと3つ残っています。

カニューラ刺入部

出血と感染の有無、と書かれています。太い管が鼠径部から入っているので、体位を変えたあとや、ドレッシングを替えるときが見るタイミングになるのだと思います。体位とリハビリの記事とつながる話です。

凝固機能

ガイドラインはACT 180〜200秒、APTT 50〜60秒を目安とし、出血リスクのある患者にはACT 160〜180秒を目安にヘパリン減量を検討することも可能、としています。

ただ、ここは資料によって立場が分かれるところでした。ELSOの2021年の抗凝固ガイドラインは、ACTを「歴史的な検査」と位置づけて、anti-Xaへ置き換わりつつあるとしています。施設ごとの取り決めを確認するのがよさそうです。

神経学的評価

鎮静がかかっていると、いちばん見えにくくなるところかもしれません。それでも「毎日行う」に入っています。瞳孔、鎮静を浅くしたときの反応、左右差。見えにくいからこそ、決まった時刻に決まった見方で、ということなのだろうと思います。

Q7. 「離脱できそうか」も、毎日の目です

ガイドラインには、こう書かれています。

動脈圧波形から大動脈弁開放の有無、肺動脈圧波形から右室収縮能の推移、心エコー検査により左室収縮機能、大動脈弁開放時間の評価などにより、自己心機能の評価を1日1回は行うことが推奨される。

JCS2023 第2章 2.8

そして、離脱については「V-A ECMO装着後48時間〜72時間で離脱を行うことが望ましく、それ以降では生存率が低下するという報告がある」ともあります。

つまり「今日はどうか」を見ることと、「そろそろ外せないか」を見ることは、同じ目の中にあるということなのだと思います。維持することだけを見ていると、そこが抜けてしまうのかもしれません。

離脱試験のあいだに何を見るかは、離脱と抜去後の看護の記事に書きました。

まとめ ── この4つ

  1. 右手で見るのには理由がある。脳と心臓へ行く血液に、いちばん近いから
  2. 動脈圧波形の脈圧は、大動脈弁が開いているかを映している
  3. 下肢虚血は17%に起きる。色・冷感・下腿筋の拘縮は、さわれば分かる
  4. 流量の数字と、体に届いているかは別。SvO2・乳酸・尿量で見る

ECMOのアセスメントは、覚えることが多いように見えます。でも、ガイドラインが「毎日」と言っているものを並べてみると、そのうちのいくつかは、手で触れて分かるものでした。

機械の数字は、臨床工学技士さんや医師のほうが詳しいと思います。わたしたちが持っているのは、毎日さわっていることと、昨日を知っていることなのかなと思っています。

わたしは、看護が好きです。
だからこそ、看護の価値を問い続けていたいと思っています。

機械が身体の「生きる」を肩代わりしているとき、看護師には何ができるのか。そのことを書いた記事があります。→ 「生きる」と看護師|死に向き合う仕事で考えたこと

補助循環の記事を、まとめて読む

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参考にした資料

※この記事は一般的な情報であり、個別の医療判断に代わるものではありません。実際の管理は、必ず主治医・指導者・院内の基準にしたがってください。数値はいずれも参考値であり、施設の基準を優先してください。回路や機器の設定は機種によって異なります。