インペラ(Impella)のアラーム対応早見表|原因と最初にやること

インペラのアラーム対応早見表の記事のアイキャッチ。淡いグリーンの背景の右側に、アラームを表示したインペラの制御装置の画面がある。左側に文字「鳴った瞬間、まず何を見る?」「インペラ アラーム対応 早見表」、下に「まず確認」「モニター」「パージ圧・流量」「患者状態」「原因と対応」の5つのアイコン。 🌿循環・補助循環の看護

深夜3時。モニターのアラームに重なって、インペラの制御装置が鳴り出す。画面には見慣れないメッセージ——一瞬、手が止まる。

この記事は、そんな瞬間に開く「早見表」です。読み物ではなく、引く道具。ブックマークして、夜勤のお守りにしてください。

【はじめにお断り】機種(2.5/CP/5.0/5.5)やソフトウェアのバージョンによって、アラームの表記や対応は異なります。本記事は一般的な整理です。正式には制御装置の取扱説明書と自施設のプロトコル、医師の指示に従ってください。早見表と番外編は、Impella CP SmartAssist/5.5 SmartAssistのテキストブック(2022年版)、添付文書、日本循環器学会などのガイドライン(2023年)で確かめています。

まず患者さん、次に「色」を見る

アラームが鳴ったら、まず患者さんの意識・呼吸・循環を確かめます。急変していれば、アラームの色にかかわらず応援を呼びます。そのうえで、画面のメッセージと装置の状態を見ていきます。

インペラの制御装置のアラームは、重大度で3つに分かれています。テキストブックのアラーム一覧では、緊急アラームが赤、警戒アラームが黄色の帯で示されています。

  • 🔴 緊急アラーム(赤):たとえば、パージ圧の低下・上昇、パージシステムの閉塞・液漏れ、バッテリ残量わずか
  • 🟡 警戒アラーム(黄):たとえば、サクション、ポンプ流量低下、パージ液残量わずか
  • ⚪ 注意アラーム:たとえば、パージ流量の増加・減少、パージ液残量低下

テキストブックのICUのチェック項目には、制御装置にアラームが表示されたら必ず対応すること、とあります。メッセージをすぐに読み取れなくても、赤なら人を呼びながら動く。ここを押さえておくと、最初の動きが決めやすくなると思います。

アラーム別 早見表

アラーム 考えられる原因 最初にやること 報告の目安
ポンプ停止 制御装置やカテーテルの故障など(画面に停止の理由が表示される) 患者さんの循環を確認し、直ちに医師・CEへ連絡。画面のメッセージ・電源・接続を確認する。再始動の操作は停止の理由で異なるので、テキストブック・取扱説明書の手順に沿って医師・CEと行う 直ちに。テキストブックには、再始動しない場合は大動脈弁逆流を防ぐため、できるだけ早く心室から引き抜く(医師が行う)、とある
サクション(吸引) ポンプの位置が不適切(深すぎる・後ろの壁を向いている)/左室に入る血液が足りない(循環血液量不足・右心不全) 患者さんの循環状態と補助流量を確認し、速やかに医師・CEへ共有する。テキストブックと添付文書の対応は、補助レベルを1〜2段階下げる → CVPが10mmHg以下なら輸液を検討 → ポンプ位置画面や透視・心エコーで位置を確認 → 右心不全のサインがないか確認 → 補助レベルを元に戻す(補助レベルの変更は医師の指示・施設の取り決めで)。原因が右心不全のこともあり、輸液で解決するとは限らない アラームが出た時点で共有する。観察だけで待たない
位置のアラーム
(ポンプ位置 大動脈内/心室内、位置感知用信号 最小値 低値、ポンプ位置 不明 など)
カテーテルが抜けてきた・奥へ入りすぎた/自己心の拍動が弱く、位置が判定できない(ポンプ位置 不明) カテーテルを動かさず、固定と深度マーカの数字(記録してある値)を確認。自分で押し込まない・引かない 速やかに報告→透視・心エコーで位置を確認。位置の調整は画像を見ながら行う
パージ圧低下 接続部の液漏れや接続不良、ブドウ糖液の濃度が低い 黄コネクタやブドウ糖用サイドアームなど、接続部の漏れと緩みを確認して締める。漏れがなければブドウ糖液の濃度の変更(医師の指示で)。テキストブックでは、20分以上たっても解消しなければパージカセットの問題が疑われ、パージ用セットの交換が対象とされている(CE・施設の手順で) 確認した時点で医師・CEへ共有する
パージ圧上昇 パージ用セットからカテーテルシャフトまでのどこかの折れ曲がり、ブドウ糖液の濃度が高い 折れ曲がりを確認(とくにパージ用フィルタとカテーテルプラグのあいだ) 確認した時点で医師・CEへ共有する。見える折れ曲がりがなくても、体内のシャフトの折れ曲がりもありうる
パージ液の残量 バッグの残量が少ない(残量低下・残量わずかのメッセージ) 新しいパージ液を用意し、パージメニューの「パージ液の交換」へ 交換の手順は施設の取り決めに沿って
流量低下 サクション(位置の問題や、左室に入る血液の不足)、後負荷の上昇 制御装置の指示は「サクションを確認」「後負荷が増大していないことを確認」。血圧・CVP・尿量とあわせて評価 確認した時点で医師・CEへ共有する
電源・バッテリー 電源ケーブル外れ(AC電源切断)、バッテリー残量低下 電源接続を確認(検査・移送のあとは特に)。テキストブックでは、フル充電のバッテリで最低1時間の作動が可能、フル充電には5時間以上かかる、とされています 接続を直したうえで、CEへ共有する

サクションアラームの深掘りはサクションアラーム編で詳しく書いています。

位置のアラームが出たとき、モニターの位置波形とモータ波形をどう読むかは、インペラの波形の見方の記事に書きました。

「圧」と「流量」はセットで読む

パージ系のアラームは、圧と流量の組み合わせで意味が変わります。

  • パージ圧上昇 + パージ流量低下 → 折れ曲がり・閉塞などを疑う
  • パージ圧低下 + パージ流量増加 → 漏れなどを疑う(ブドウ糖液の濃度の影響もある)

テキストブックのトラブルシューティングでは、パージ圧の低下は「液漏れや接続不良」か「ブドウ糖液の濃度が低い」、上昇は「どこかの折れ曲がり」か「ブドウ糖液の濃度が高い」と整理されています。上昇や閉塞のときは、体の中に入っているカテーテルシャフトの折れ曲がりもありうるとして、モータ消費電流が上がっていないかを見張るよう書かれています。

パージの圧と流量(mL/hr)は、モータを守る仕組みの数字です。画面に出る補助流量(L/分)とは別の数字なので、どちらの異常なのかを分けて見ると整理しやすいと思います。

パージ圧の範囲と、4つのアラームが出る条件・対処の順番は、インペラのパージ圧とパージ流量にまとめました。

この「セットで読む」視点は臨床工学技士さんの得意分野です。迷ったら、早めにCEさんに相談できるといいと思います。夜間でも、遠慮しなくていい場面だと思います。

スマホ保存用:早見表の画像版

夜勤のポケットに入れておけるように、画像でもまとめました。長押しで保存できます。

インペラのアラーム対応早見表:まず患者さんを見て、急変なら色にかかわらず応援を呼ぶ、原因探しと並行して医師・CEへ共有。ポンプ停止、サクション、位置のアラーム、パージ圧低下・上昇、流量低下、電源・バッテリーの7種類の原因と最初にやることの一覧。下に、パージ圧上昇と流量低下は折れ曲がり・閉塞など、パージ圧低下と流量増加は漏れなどを疑う、の目安

どのアラームでも共通の5ステップ

  1. 患者さんを見る:アラームより先に、意識・血圧・波形。機械より人
  2. 色を見る:赤なら人を呼びながら動く
  3. メッセージと数値を見る:補助流量・パージ圧・パージ流量
  4. 原因を探す:上の早見表へ
  5. 報告する:「何のアラームが・いつから・患者さんはどうか」をセットで

報告や応援を呼ぶのは、原因が分かってからではなく、原因を探すのと並行して行えるといいと思います。
そして、やってはいけないことが2つ。

  • ミュートを押して終わりにしない——音を消すことと、原因が消えることは別です
  • 判断せずにP-levelを変えない——サポートレベルの変更は必ず医師の指示で

番外編:不整脈・心停止・除細動のとき、インペラはどうなる?

アラームと並んで、夜勤の不安が大きいのがこの3場面です。要点だけまとめます(時系列でのシミュレーションは急変シナリオの記事で詳しく書いています)。

不整脈が出たら——インペラは影響を受ける?

  • ガイドラインには、補助循環を使っているあいだでも、頻拍性の不整脈で血行動態が悪くなることがあると書かれています。悪くなったときは、除細動で止めることが第一選択とされています
  • インペラが入っていると、心室への物理的な刺激で不整脈が起こることも考えておく、とされています。添付文書の有害事象にも、心室細動・心室頻拍・心房細動が挙がっています
  • 心停止の蘇生時には、左室に血液が戻りにくくなり、インペラにサクションが起こって十分な補助流量を出せない、とも書かれています
  • 英国の多学会合意文書(2025年)には、心筋を吸い込むサクションが心室性不整脈を起こすことがあり、サクションそのものを解決しないと、除細動をしても止まらないことがある、と書かれています
  • 見るポイントは「不整脈の種類と血圧」+「インペラの流量とアラーム」。心電図とインペラ、両方をセットで報告できるといいと思います

心停止のとき——蘇生を優先する

テキストブックには、心停止のあいだはインペラで血行動態を補助することはできない、CPR中は留置位置や流量の表示が正確ではない、と書かれています。そのうえで、対応は次の順番です。

  1. インペラの補助レベルをP-2に下げる
  2. 院内の手順に沿って、直ちにCPRを行う
  3. 蘇生後、ポンプ位置画面と、透視や心エコーなどの画像で留置位置を評価し、補助レベルを元のレベルに戻す
  • 添付文書にも、CPRで留置位置が変わるおそれがあるので、CPR後は心エコーで位置を確かめるよう書かれています
  • CPR中は位置の表示が正確ではないので、位置のアラームに気を取られて圧迫を止めないことが大切だと思います
  • P-2に下げる理由について、英国の多学会合意文書(2025年)では、胸骨圧迫で胸の中が動くとインペラの吸入部が大動脈弁のほうへずれ、流量が高いままだと大動脈弁を巻き込んで傷つけ、重い大動脈弁逆流を起こすおそれがある、と説明されています。また、心停止中のサクションでは、逆流を防ぐためP-2より下げない、とされています
  • 補助レベルの変更は、医師の指示・使用している機種・施設の蘇生手順のもとで行います

除細動のとき——補助レベルはそのままで

  • テキストブックには、インペラの補助レベルはそのままで除細動を行うと書かれています。インペラは動かしたまま行う、ということになります。除細動を遅らせないことが大切だと思います
  • 実施後は、ポンプ位置画面と心エコーなどの画像で留置位置を評価します
  • エネルギー量や手順は、除細動器の機種と施設の手順に沿って行います

まとめ

  • 色で最初の動きを決める(赤は人を呼ぶ)
  • パージの圧と流量はセットで読む
  • 迷ったら患者さんを見て、早めに報告・早めにCEさんへ相談
  • 急変時は蘇生を優先——CPRは補助レベルをP-2に下げて、除細動は補助レベルそのままで(番外編参照)

溶血のサインは、インペラの溶血|尿の色・採血データで気づくサインで詳しく書いています。

シリーズ全体はインペラ看護Q&A完全ガイドから。離脱・抜去後の看護はこちらで書いています。

IABPのアラーム対応はIABPのアラーム対応早見表|原因と最初にやることにまとめています。

参考文献

補助循環の記事を、まとめて読む