インペラの制御装置には、位置波形とモータ波形の2本が出ています。制御装置は、この2本の組み合わせでポンプの位置を見張っています。
基本の組み合わせはインペラの見方の基本に書きました。この記事では、位置に関するアラームの5つのパターンと、LV位置波形の読み方、サクションのときのモータ波形をまとめます。
※Impella CP SmartAssist/5.5 SmartAssistを前提に、日本アビオメッドのテキストブック(2022年版)をもとにしています。表示や数値は、機種やソフトウェアのバージョンによって異なります。

※この図は保存して使えます(スマホは長押し、パソコンは右クリック)。
Q1. 2本の波形は、それぞれ何を映しているのですか?
テキストブックは、こう説明しています。
- 位置波形(Ao位置波形) … 光学センサで得られる位置感知用信号の圧と波形
- モータ波形 … 吸入部と吐出部の圧差、およびモータ速度によって変動するモータ消費電流の波形
光学センサは、吐出部のすぐそばにあります。テキストブックの図では、正しい位置のときセンサは大動脈弁より上にあり、位置波形は大動脈圧波形になっています。カテーテルが左室に入りすぎてセンサまで弁の下に入ると、位置波形は心室圧波形に変わります。
モータ波形は、吸入部と吐出部の圧差で変わります。吸入部が左室、吐出部が大動脈と、大動脈弁をまたいでいれば、心臓が動くたびに圧差が変わるので、波形はパルス状になる。両方が同じ側に入ってしまうとフラットになる。テキストブックの5つのパターンは、この考え方でつながっていると思います。
Q2. 正しい位置のとき、どう見えるのですか?
正しい組み合わせは、位置波形(Ao位置波形)が大動脈圧波形、モータ波形がパルス状の波形です。
Impellaテキストブック(2022)「Impellaポンプ位置モニタリングの仕組み」
留置位置の目安は、吸入部が大動脈弁からCPで約3.5cm下、5.5で約5.0cm下。吐出部は大動脈弁に接触せず、弁より上にあることです。吸入部が僧帽弁尖や乳頭筋などに接触していないことも、確認の項目に入っています。
CPと5.5の違い(入れる場所、流量、想定されている期間)は、インペラCPと5.5の違いにまとめました。
Q3. 位置のアラームは、どんなパターンで出ますか?
テキストブックの「位置関連アラームのトラブルシューティング」を並べると、正しい位置を含めて5つになります。図の上の段が位置波形(赤)、下の段がモータ波形(緑)です。
1. 正しい位置

| 位置波形 | 大動脈圧波形 |
| モータ波形 | パルス状 |
| 位置 | 吸入部が左室、吐出部が大動脈弁より上 |
2. ポンプ位置 大動脈内

| 位置波形 | 大動脈圧波形 |
| モータ波形 | フラット |
| 位置 | 吸入部と吐出部が大動脈内。吸入部が弁の近くにあるか、完全に抜けている |
| 対処 | 1. 透視または心エコーで位置を確認する 2. 補助レベルをP-2まで下げ、位置を調整する。位置波形が大動脈圧波形、モータ波形がパルス状になったことを確かめる 3. 任意の補助レベルに戻し、透視または心エコーで位置を確認する |
制御装置の画面には「画像で位置を確認」と出ますが、テキストブックの対処の手順では、この「画像」は透視(X線)または心エコーと書かれています。テキストブックの「留置位置のモニタリング方法」の図では、挿入時は透視、循環補助時は制御装置のポンプ位置画面と心エコーと分けて描かれています。ICUで補助しているあいだに使うのは、おもに心エコーということになると思います。心エコーでは、経胸壁なら傍胸骨左縁長軸像、経食道なら中部食道長軸像で、吸入部が大動脈弁からCPで約3.5cm、5.5で約5.0cm下にあるかを確かめます。
テキストブックは、カテーテルが完全に心室の外に出ている場合、ガイドワイヤなしで大動脈弁を通して入れ直そうとしないよう書いています。
3. ポンプ位置 心室内

| 位置波形 | 心室圧波形 |
| モータ波形 | フラット |
| 位置 | 吸入部と吐出部が心室内。吐出部が弁より下にある |
| 対処 | 1. 補助レベルをP-2まで下げ、透視または心エコーで見ながら、大動脈圧波形に変わるまで慎重に引き戻す 2. 大動脈圧波形に変わってから、さらに約3cm引き戻す 3. 適切な位置に戻したら、任意の補助レベルに戻す |
制御装置には、この手順を画面で案内する「位置調整ガイド」もあります。
4. 位置感知用信号 最小値 低値

| 位置波形 | 最小値が30mmHg未満 |
| モータ波形 | パルス状 |
| 位置 | 吐出部が大動脈弁の周辺にある。カテーテルが心室の奥まで入りすぎている |
| 対処 | 1. 心機能を評価する 2. 患者の拡張期血圧が30mmHg以上の場合は、必要に応じて透視または心エコーでポンプ位置を確認し、調整する |
モータ波形はパルス状のままなので、見た目は正しい位置に近いパターンです。対処の2つめに「拡張期血圧が30mmHg以上の場合は」という条件がついています。このアラームが出たら、まず患者さんの拡張期血圧を確かめておくと、医師に伝えやすいと思います。
5. ポンプ位置 不明

| 位置波形 | フラット、または振幅の減衰 |
| モータ波形 | フラット、または振幅の減衰 |
| 状態 | 自己心の拍動が低下していて、位置が分からない |
| 対処 | 1. 心機能を評価する 2. 必要な場合は、心エコーでカテーテルの位置を確認する |
制御装置には「心拍動の低下によりポンプ位置が不明です 心機能を評価して下さい」と出ます。2本の波形はどちらも、心臓が動くことで振れています。その拍動が弱くなると、制御装置は位置を判定できなくなる、ということのようです。テキストブックには「定期的に位置確認が必要」とも書かれています。
※5つのパターンの波形・位置・対処は、Impellaテキストブック(2022)「位置関連アラームのトラブルシューティング」より。図は模式図です。
Q4. LV位置波形は、どう見ればいいのですか?
LV位置波形は、測った値ではありません。Ao位置波形とモータ波形から算出した、吸入部の圧の推定です。補助レベルがP-4以上(AUTOを含む)のときに自動で表示され、P-3以下では表示されません。
テキストブックは、診断目的では使わず、正しい位置で安定して動いているときの経時的な変化(トレンド)を見るものとして参照するよう勧めています。
正しい位置のときの見え方
- 収縮期のLV位置波形は、ふつう収縮期のAo位置波形より高い値になる
- 吸入部には血液を吸い込む力がかかっているので、正しい位置でもマイナスの値(0〜−10程度)が出ることがある
マイナスが出ても、それだけで異常とはかぎらない、ということです。
ずれ方で分かること
左室内のボリュームが減ったり、吸入部が左室内の構造物と干渉したりすると、LV位置波形がAo位置波形から離れたり、拡張期にマイナスになったりする、とされています。
| LV位置波形の変化 | 示唆されること |
|---|---|
| 収縮期・拡張期ともに、Ao位置波形から離れる | ポンプ位置が不適正で、脱血不良の可能性 |
| 拡張期にマイナスを表示する | 左室内腔が狭い、左室フィリングが少ない、などによる脱血不良の可能性 |
VA-ECMOと一緒に使っているとき
テキストブックには、VA-ECMOとの併用などで脈圧が消え、大動脈弁が開かなくなったときの例も載っています。平均動脈圧は保たれていても、LV位置波形とAo位置波形が離れた(アンカップリング)状態になる。心機能が戻ってくると脈圧も戻り、2本は再び重なる、とされています。ECPELLAのことはECPELLAの記事に書きました。
正しく出ないことがある場面
LV位置波形は、モータ消費電流やAo位置波形の影響を受けます。テキストブックは、次のような場面で波形に影響が出たり、正しく機能しなかったりする場合があるとしています。
- アラームが出ているとき、補助レベルが低いとき、自己心の拍動が低下しているとき
- ポンプカテーテルの長期使用、モータ内やカニュラ内への血栓などの付着、パージ液の濃度の変更など、モータ消費電流に影響する事象があるとき
パージ液のブドウ糖濃度を変えたときは、「LV波形の調整」で補正値の提案があるかを確認するよう書かれています。パージ液のことはパージ液の記事に書きました。
Q5. サクションのとき、モータ波形はどうなりますか?
テキストブックは、サクションのときに画面に出るものとして、次の4つを挙げています。
- 「サクション」アラーム、「ポンプ流量 低下」アラーム
- 補助流量が目標流量を下回る
- 平均モータ消費電流が徐々に減少(時間目盛:5分)
- 患者の血圧の低下
原因として書かれているのは2つです。カテーテルの位置が深い、後壁を向いているなどで、吸入部が左室内の構造物に当たっている場合。そして、循環血液量の不足や右心不全で、左室のフィリングが足りない場合です。
モータ電流の平均は、5分の時間目盛で見ると、ゆっくり下がっていく形で出ます。1回の値より、流れで見たほうが気づきやすいところだと思います。サクションの対応はサクションの記事に詳しく書きました。
Q6. 看護師は、いつ、何を見ればいいのですか?
IMPELLAは座位や立位などの体位変換時にカテーテルの位置が移動することがあり、吸入部と吐出部が適切な位置にあるか、溶血が起こっていないかなどの確認が必要である。
JCS2023 第3章 3.5「MCS管理中のリハビリテーション」
テキストブックのICU患者管理のチェック項目には、次のものが入っています。
- 制御装置でのポンプ位置の確認(位置波形が大動脈圧波形、モータ波形がパルス状)
- 位置波形とモータ波形の数値の記録
- 留置用シースの固定リングがきちんと締まっていること
- カテーテルシャフトの深度マーカの数字を記録し、位置が移動していないかを確認すること
そして、位置に関するアラームが出たときは必ず対応するよう書かれています。位置の調整は、心エコーや透視などの画像を見ながら行うことが勧められています。
体位を変えたあと、ベッドを動かしたあと、検査から戻ったあと。そのたびに波形と深度マーカを見ておくと、ずれたときに前と比べられると思います。
まとめ ── この4つ
- 位置は、位置波形とモータ波形の組み合わせで読む
- 正しいのは「大動脈圧波形+パルス状」。位置のアラームは5つのパターンで出る
- LV位置波形は算出値。診断には使わず、トレンドで見る
- 体位を変えたら、波形と深度マーカを見る
わたしは、看護が好きです。
だからこそ、看護の価値を問い続けていたいと思っています。
画面の波形は、患者さんのどこを映しているのか。「見る」ことについて書いた記事があります。→ 看護における「見る」とは|観察との違いを考える
補助循環の記事を、まとめて読む
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参考にした資料
- Impella テキストブック(2022年版・日本アビオメッド)── 各デバイスの比較、ポンプ位置モニタリングの仕組み、位置関連アラームのトラブルシューティング、ポンプパフォーマンスメトリクス(LV位置波形)、サクションアラーム、ICU患者管理のチェック項目
- 2023年 JCS/JSCVS/JCC/CVIT ガイドライン フォーカスアップデート版 PCPS/ECMO/循環補助用心内留置型ポンプカテーテルの適応・操作(日本循環器学会ほか)── 第3章 3.5 MCS管理中のリハビリテーション
※この記事は一般的な情報であり、個別の医療判断に代わるものではありません。表示や数値は機種・ソフトウェアのバージョンによって異なります。位置の調整や補助レベルの変更は、必ず主治医・臨床工学技士・院内の基準にしたがってください。



