VA-ECMOの離脱には、決まった基準がありません。日本循環器学会のガイドライン(JCS2023)も、離脱基準は「確立されておらず、各施設において症例ごとに離脱の可否を判断しているのが現状」としています。
それでも、流量を下げていく手順と、そのあいだに確かめる数字は、JCS2023と国際的な団体(ELSO)のガイドラインに書かれています。この記事では、流量を下げているあいだに何を見るかと、抜いたあとに何に気をつけるかをまとめます。
※この記事はVA-ECMO(PCPS)を前提にしています。VV-ECMOの離脱試験は自分の肺のガス交換だけを試すもので、進め方が違います。

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離脱を考えはじめるのは、いつか
V-A ECMO装着により循環動態が安定し、全身臓器灌流が保たれており、カテコラミンが少量、もしくは減量できている状況であれば、心機能を確認しながら離脱を考慮する。
JCS2023 第2章 2.9「ECMO離脱」
ELSOのGeneral Guidelinesは、ECMOの補助が全体の30%未満になったら離脱試験の適応があり、30〜50%を超えているうちは適応がない、としています。
「カテコラミンが少量」がどのくらいかは、JCS2023には数字がありません。ELSOのVA-ECMOガイドラインは、離脱がうまくいきそうな条件に「1〜2種類の強心薬・昇圧薬が低用量で」を入れていて、低用量をこう定めています。
| 薬剤 | 低用量の目安 |
|---|---|
| ドパミン | 3 µg/kg/分 未満 |
| ドブタミン | 3 µg/kg/分 未満 |
| ミルリノン | 0.3 µg/kg/分 未満 |
| ノルアドレナリン | 0.06 µg/kg/分 未満 |
| アドレナリン | 0.1 µg/kg/分 未満 |
流量は、どう下げていくか
JCS2023とELSOで、下げ方が少し違います。
| JCS2023 | ELSO(2021) | |
|---|---|---|
| 下げ方 | 0.5Lずつ | 500mLずつ、5〜10分ごと |
| どこまで | 1.0〜1.5L/分 | 回路をクランプして3〜5分、または最低1L/分 |
| 人工肺 | 酸素流量を2L/分まで下げる | 記載なし |
| 確かめる数字 | 脈圧、平均動脈圧60mmHg超、SvO2 60〜65%超、乳酸2mmol/L未満 | 平均動脈圧60mmHg超、CVP 10mmHg以下、心エコーの指標 |
いちばん大きな違いは、どこまで下げるかです。JCS2023は1.0〜1.5L/分で確かめる形、ELSOは回路をクランプしてECMOを止めた状態まで含めています。どちらで進めるかは、施設の手順によると思います。
下げているあいだ、何を見るか
脈圧
ELSOは、右橈骨動脈の脈圧を「自己心の収縮力とECMOの流量の関係を映すもの」としています。離脱を考えはじめる目安は脈圧10mmHg超です。
流量を下げたときに脈圧がしっかり出てくれば、自分の心臓が押し出す分が増えている、ということなのだと思います。脈圧が大動脈弁の開放を映していることは、アセスメントの記事のQ3に書きました。
平均動脈圧
JCS2023は60mmHg超を目安にしています。ELSOは、離脱を考えはじめる段階で65mmHg超、試験がうまくいったと判断する段階で60mmHg超としています。
SvO2と乳酸
流量を下げても体に届いているか、を見る数字です。JCS2023はSvO2 60〜65%超、乳酸2mmol/L未満を目安にしています。
SvO2は全身の酸素の需要と供給のバランスを、乳酸は循環不全の有無を映します(JCS2023 第2章 2.4)。流量を下げてSvO2が下がり、乳酸が上がってくるなら、自分の心臓だけではまだ体に足りていない、ということなのだと思います。
CVP
ELSOは、試験がうまくいったと判断する条件にCVP 10mmHg以下を入れています。
右手のSpO2
ECMOの血液と自分の心臓から出た血液がぶつかる位置は、流量が多いほど高くなります(ELSO General Guidelines)。流量を下げていけば、ぶつかる位置は下がっていきます。
JCS2023は、自己肺の酸素化を右上肢の血液ガスとSpO2で評価するとしています。なぜ右手なのかは、アセスメントの記事のQ2に書きました。
心エコーと、スワンガンツカテーテル
ELSOは、離脱試験のあいだの心エコーを欠かせないものとしています。左右の心室の動き、弁の異常、心拍出量の代わりになるLVOT VTIを見るためです。スワンガンツカテーテルも、左心系の圧と心拍出量を客観的に見るのに役立つかもしれない、としています。
ELSOが挙げる「うまくいきそう」の条件には、左室駆出率25〜30%以上など、エコーで測るものが入っています。
下げているあいだに、気をつけること
血栓
ELSOのVA-ECMOガイドラインは、流量を下げている時期と離脱試験のあいだは、抗凝固を十分に保つよう書いています。General Guidelinesも、離脱試験のあいだ抗凝固は続け、血液がよどまないように回路とカニューレのクランプを定期的に外す、としています。
ヘパリンとACTのことは、補助循環中のヘパリンの記事に書きました。
右心は、試しきれない
ELSOは、わずかな流量でも右室の前負荷が減るので、クランプや「ゼロフロー」で試しても右心機能は十分に評価できないことがある、としています。JCS2023も、右心機能の評価に使われるPAPiについて、前負荷の少ないVA-ECMO管理下では値の解釈を慎重に、と書いています。
試験の結果だけでは、右心の状態は分かりきらない、ということだと思います。
積極的なリハビリは、控える
MCS離脱に向けてウィーニングを実施している最中は、バイタルや血行動態が不安定になることも少なくなく、積極的リハビリテーションは避ける。
JCS2023 第3章 3.5「MCS管理中のリハビリテーション」
試験がうまくいったら
ELSOのVA-ECMOガイドラインは、離脱試験がうまくいったら、ECMOに伴う合併症を避けるために速やかに抜去するとしています。
General Guidelinesには、もうひとつのやり方も書かれています。試験はうまくいったけれど状態が危ういときは、回路だけを外してカニューレを残し、低用量のヘパリン加生食を流しながら頻回に再評価する。カニューレは24時間以上残しておけるとしています。ただし、ECMOに戻す必要がないとはっきりしているなら、試験のあとに抜くほうがよい、とも書かれています。
抜くのは、ヘパリンを止めて30〜60分たってからが理想としています(ELSO General Guidelines)。
抜くとき、抜いたあと
抜きかた
ELSO General Guidelinesによると、経皮的に入れたカニューレは、そのまま抜いて圧迫で止血します。カットダウンで入れたものはカットダウンで抜き、血管を結紮するか修復します。大腿動脈をカットダウンで入れた場合は、血管の修復が必要になります。
脱血管を抜くときの空気
ELSO General Guidelinesは、脱血管を抜くとき、患者さんが自発呼吸をしていると、脱血管の側孔から静脈に空気が入ることがある、としています。
なぜ自発呼吸だと入るのか。
- 空気が血管に入るには、空気との通り道と、血管の中の圧が外より低いことの2つがそろう必要がある(Gordy ら, 2013)
- 脱血管を抜くとき、側孔が通り道になる(ELSO)
- 自分の力で息を吸うと、胸の中の圧が下がり、右房の圧も下がる(Mahmood ら, 2018)。大気圧との差が大きくなり、空気が入りやすくなる(McCarthy ら, 2017)
- 通り道と圧の差がそろい、側孔から空気が引き込まれる
人工呼吸器が送り込む吸気では、逆に胸の中の圧は上がります(Mahmood ら, 2018)。ELSOが挙げる防ぎ方は、人工呼吸器でバルサルバをかけることと、短時間だけ筋弛緩薬を使って自発呼吸を止めることの2つです。
ここでいう自発呼吸は、人工呼吸器がついているかどうかではなく、患者さんが自分の力で吸っているかどうかです。人工呼吸器がついていても、自分で吸えば胸の中の圧は下がります。ただ、強制換気なら空気は入らない、とまではELSOは書いていません。抜管している患者さんでどう防ぐかも、書かれていませんでした。
抜く前に、自発呼吸があるか、人工呼吸器のモードはどうか、抜管しているかを確かめて、どの方法で防ぐかを医師と共有しておきたいところです。
抜いたあとに見るもの
ELSOのVA-ECMOガイドラインは、合併症の対策として次のものを挙げています。
- 深部静脈血栓 … ECMO中も離脱後も抗凝固を十分に行い、抜去後は血管を超音波で確認する
- 下肢の虚血 … 下腿の筋肉のNIRSを、ECMOの前・最中・離脱後にも見る
下肢虚血のサインはアセスメントの記事のQ4に書きました。カニューレが抜けたあとも、観察は続きます。
書かれていなかったこと
圧迫する時間と、安静にする時間は、JCS2023にもELSOのガイドラインにも書かれていませんでした。施設の手順に従うことになります。
離床
MCSの離脱に成功した場合は、禁忌となる病態の出現がないか、創部に問題がないか、血行動態が安定しているかなどを確認したうえで離床に向けてのリハビリテーションを行っていく。MCS離脱後は早期からのリハビリテーションが望ましいが、特に離脱後早期は心拍出量のサポートがなくなり、カテコラミンも高用量で投与されていることも多く、離床やADL(日常生活動作)訓練は段階的に慎重に行う。
JCS2023 第3章 3.5「MCS管理中のリハビリテーション」
ECMO中の体位とリハビリは、体位とリハビリの記事に書きました。
離脱できないとき
日数の目安は、資料によって少しずつ違います。
- JCS2023 … 可能であれば装着後48〜72時間での離脱が望ましく、それ以降では生存率が低下するという報告がある。7日以上必要な場合は、心機能の改善による離脱の可能性は低いと考え、心臓移植やLVADの適応を念頭に置く
- ELSO(2021) … 5〜7日で離脱できなければ、右室の収縮が保たれていれば一時的なLVADを考える
- ELSO General Guidelines … 心機能が3〜5日戻らず、VADや移植の対象でもない場合は、多くの施設で「無益(futility)」と考えられている
JCS2023は、MCSを要する心不全でも緩和ケアは必須としています。MCSは緊急で導入されることが少なくなく、本人の意思を確認できないまま始まることもある。限られた時間の中でも、可能な限り複数回にわたって話し合いの場を設けるよう書かれています。終末期かどうかの判断は、医師、看護師、臨床工学技士などの多職種チームで客観的に行うべき、ともしています。
ELSOのVA-ECMOガイドラインも、すべての患者で早い段階から緩和ケアの関わりを考えるよう書いています。見通しの共有、治療のゴール、家族の支えのためです。General Guidelinesは、中止の可能性はECMOを始める前に家族へ説明しておき、回復の期限も早いうちに決めておく、としています。
離脱の話と終末期の話は、同じ日数の上で進んでいきます。
まとめ ── この4つ
- 離脱の基準は確立されていない。JCS2023とELSOで、下げ方と数字が少し違う
- 流量を下げたら、脈圧・平均動脈圧・SvO2・乳酸がどう動くかを見る
- 流量を下げているあいだは血栓に気をつける。ガイドラインは抗凝固を続けるとしている
- 抜いたあとも、血管と下肢の観察は続く
わたしは、看護が好きです。
だからこそ、看護の価値を問い続けていたいと思っています。
数字を見ることと、その人を見ることは、同じなのか。そのことを書いた記事があります。→ 看護における「見る」とは|観察との違いを考える
補助循環の記事を、まとめて読む
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参考にした資料
- 2023年 JCS/JSCVS/JCC/CVIT ガイドライン フォーカスアップデート版 PCPS/ECMO/循環補助用心内留置型ポンプカテーテルの適応・操作(日本循環器学会ほか)── 第2章 2.4 モニタリング、2.9 ECMO離脱、第3章 リハビリテーション、3.7 緩和ケア・終末期医療
- ELSO Interim Guidelines for Venoarterial Extracorporeal Membrane Oxygenation in Adult Cardiac Patients(ASAIO Journal 2021)── 離脱を考える条件と手順、低用量の定義、脈圧の位置づけ、抜去後の合併症対策、緩和ケア
- ELSO General Guidelines v1.4(Extracorporeal Life Support Organization)── 離脱試験、抜去、抜去時の空気、血液が混ざる位置、futility
- Vascular air embolism(Gordy S, Rowell S. Int J Crit Illn Inj Sci. 2013)── 空気が血管に入る条件
- Air Embolism: Diagnosis, Clinical Management and Outcomes(McCarthy CJ, et al. Diagnostics. 2017)── 吸気と中心静脈圧
- Heart-lung interactions during mechanical ventilation: the basics(Mahmood SS, Pinsky MR. Ann Transl Med. 2018)── 自発呼吸と陽圧換気での胸腔内圧
※この記事は一般的な情報であり、個別の医療判断に代わるものではありません。実際の管理は、必ず主治医・指導者・院内の基準にしたがってください。数値はいずれも参考値であり、施設の基準を優先してください。回路や機器の設定は機種によって異なります。



