VA-ECMOの流量が下がったとき|まず疑うことと、3つの圧の見方

記事「VA-ECMOの流量が下がったとき|まず疑うことと、3つの圧の見方」のアイキャッチ画像。明るく清潔なテーブルの上に、ECMOの回路が置かれている。透明な円盤型の遠心ポンプヘッドが黒いモーターの台に乗り、そこから透明なチューブが伸びて、四角い箱型の人工肺につながっている。人工肺の上部からは細い酸素チューブが1本、上へ伸びている。チューブの途中には円盤型のコネクタがついている。左側に「補助循環・ICUの看護」の緑色のバッジと、記事タイトルが置かれている。 🌿補助循環・ICUの看護

流量の数字が、さっきより下がっている。

ECMOを見ていて、いちばん心臓に悪い瞬間だと思います。機械のことなのか、患者さんのことなのか。それが分からないまま、数字だけが目に入ってくる。

この記事では、流量が下がったときに何を疑うかと、回路の圧が何を教えてくれるかを整理します。

先に結論を言うと、圧は原因を考える手がかりになります。流量や回転数、患者さんの状態とあわせて読むことが大切です。

ECMO回路の圧を読む図。患者から遠心ポンプ、人工肺、患者への順に血液が流れる。P1はポンプの手前、P2は人工肺の手前、P3は人工肺の後。ΔPはP2−P3で、血流量でも変化し、増大だけで血栓とは断定しない。圧の絶対値と変化、流量、患者の状態をあわせて評価する。急激な流量低下や循環悪化では応援を呼び、患者と回路・装置を確認する。
圧は、測定位置・流量・患者さんの状態とあわせて評価します。

※この図は保存して使えます(スマホは長押し、パソコンは右クリック)。手元に入れておくと、必要なときにすぐ開けます。

Q1. 患者さんと回路を確認し、脱血不良も疑います

日本循環器学会のガイドラインは、こう書いています。

全身への灌流量不足を認める場合には、血管内容量不足による脱血不良を疑う必要がある

流量が急に下がったときは、患者さんの状態と、回路・装置の状態をあわせて確認します。急激な低下や循環の悪化がある場合は、すぐに応援を呼び、院内の緊急対応手順に従います。そのうえで、脱血不良を重要な原因のひとつとして考えます。

なぜ、抜けなくなるのか

ECMOの脱血は、陰圧で引いています。ストローで吸うのと同じで、引くものがなければ、引けません。ポンプは回っているのに、流量が出ないという状態になります。

だから、こちらを見ます

  • 出血していないか … 刺入部、ドレーン、消化管
  • 尿量の推移 … 急変時の対応と並行して、経過を確認します
  • CVPの推移 … 単独で血管内容量を判断せず、ほかの所見とあわせます
  • 体位を変えた直後ではないか

最後のひとつは、意外と見落とされます。体位変換のあとに流量が落ちたなら、カテーテルの位置が変わった可能性があります。これは体位とリハビリの記事とつながる話です。

ただし「水分が足りない」だけとは限りません

ここは、はっきり書いておきたいところです。日本呼吸療法医学会のテキストは、脱血不良のサインを見つけたときの対応を、こう書いています。

単に輸液負荷で対応するのではなく、レントゲンやエコーなどで、その原因の検索に務める

同じテキストが挙げている、脱血不良のよくある原因は4つです。

  1. 脱血カニューレの径が細い
  2. カニューレがkink(折れ曲がり)している
  3. 脱血カニューレの先端の位置が悪い
  4. 高い胸腔内圧・腹腔内圧、または血腫・心タンポナーデなどで、下大静脈や右房が圧排されている

さらに、ECMO中の高いPEEPは静脈還流量を低下させ、脱血不良の原因となりえるとも書かれています。

日本循環器学会のガイドラインは、鼠径部から挿入している側は、屈曲によってカテーテルが移動するリスクがあるとしています。②と③は、体位や体の動きで起こりうる、ということです。

Q2. 血管内容量だけでは説明できないとき

血管内容量だけで説明できない場合も、原因はひとつではありません。回路やカニューラの折れ曲がり・位置、送血側の抵抗、ポンプの作動や回転数などを確認します。

さっきまで出ていた流量が急に下がったなら、直前に何が変わったのかも重要です。体位や回転数、患者さんの血圧などを、変化の前後で見比べます。

必要な流量に対して、カニューラの径が十分かどうかも検討します。日本循環器学会のガイドラインは、径が原因で十分な流量を確保できないと判断した場合、送脱血管のサイズアップや脱血管の追加などを挙げています。

変更の判断はチームで行います。看護師も、流量が下がった時刻や直前の変化、患者さんの所見を伝え、原因の評価に参加します。

Q3. 圧は「どこで測っているか」から考える

ここからが、この記事の中心です。

ここではELSOのガイドラインに沿って、ポンプの手前をP1、ポンプと人工肺の間をP2、人工肺の後をP3として説明します。表示名や測定できる場所は、機種・回路構成によって異なります。まず、自施設の装置でどこの圧を見ているのかを確認します。

P1 ── 脱血圧

患者さんからポンプへ血液を引くときの陰圧です。ポンプの手前にあります。

引きが強すぎる=陰圧が深すぎると、問題が起きます。

P2 ── 人工肺の手前の圧

ポンプと人工肺のあいだの圧です。通常の順方向の血流では、人工肺を通る際に圧が下がるため、P2はP3より高くなります。

P3 ── 人工肺を出たあとの圧

人工肺を通り抜けて、患者さんへ向かう側の圧です。

人工肺の前後では、「差」にも注目します

P2 − P3。これを圧較差(ΔP)といいます。

ELSOは、これが「人工肺の内部の抵抗を反映する」と書いています。

ただし、ΔPは血流量によっても変わります。同程度の流量で以前より差が大きくなった場合は、血栓などによる抵抗の増加を疑います。圧だけで決めつけず、ガス交換の状態や回路の観察、採血結果とあわせて評価します。

流量が下がる前に、圧が先に教えてくれることがあります。

Q4. 圧の絶対値と変化から、原因を考えます

脱血圧が、深い陰圧になっているとき

日本呼吸療法医学会のテキストは、脱血圧が過度の陰圧になると、溶血や回路損傷の危険が高まるとしています。

ELSOのガイドラインは、過度の陰圧によるキャビテーション(気泡の発生)と、接続部や三方活栓からの空気の引き込みにも触れています(こちらはローラーポンプについての記述です)。

遠心ポンプについては、同じガイドラインが、脱血圧をモニターする装置のなかには陰圧が限界を超えたときに回転数を自動で調整する役割を持つものがある、としています。「勝手に回転数が変わった」ように見えて、実は引きすぎを機械が調整していたということが起こりえます。

送血圧が、高くなりすぎているとき

同じテキストが、送血圧が400 mmHg以上の陽圧では、溶血や回路損傷の危険が高まるとしています。この数値は引用資料の記載であり、400 mmHg未満なら安全という意味ではありません。「送血圧」がどこで測られているかを確認し、使用機器の添付文書と院内の警報・対応基準に従います。

「いつもと違う」とき

ここがいちばん、看護師に近い話です。

想定される回路内圧と大きくずれがある場合は、人工肺の凝血やカニューレ異常の可能性があり、慎重に評価し対応する

大事なのは、圧の絶対値と、いつもからの変化の両方です。流量や回転数、患者さんの血圧など、測定時の条件も一緒に確認します。

申し送りで圧の数字を引き継いでいるかどうか、記録に残っているかどうか。そこが、そのまま気づけるかどうかになります。

Q5. 流量は、多ければいいわけではありません

VA-ECMOの基本をまとめた記事でも触れました。

日本呼吸療法医学会のテキストは、はっきりこう書いています。

ECMO流量は多ければよいというわけではなく、適切なECMO流量を調節・維持することが重要である

VA-ECMOでは、呼吸の状態だけでなく心拍出量や血圧を見ながら流量を調整します。流量を上げれば上げるほど、心臓にとっての抵抗も増えるからです。

足りているかどうかは、体で見ます

脱血側の静脈血酸素飽和度は、酸素の供給と消費のバランスを見る手がかりのひとつです。ここで引用したテキストでは、この値をSvO2と表記しています。測定場所と値の推移を確認し、乳酸値、尿量、血圧、臓器障害の所見などとあわせて評価します。

ひとつの数字だけで「足りている」と判断しません。日本循環器学会のガイドラインも、血液検査による全身臓器障害や、乳酸値による循環不全の評価を挙げています。

Q6. 回路を交換することがあります

回路は、ずっと同じものを使い続けるわけではありません。

日本呼吸療法医学会のテキストは、こう書いています。

凝固異常がみられた場合、原疾患による凝固因子の消耗がなければ、回路に付着した微小血栓が原因である可能性があり、その場合回路交換を行うことで改善する

つまり採血データの異常が、回路の状態を映していることがあるということです。

凝固異常や血小板減少があるときは、患者さんの病態や治療の影響とともに、回路に関連した異常も検討します。回路交換は、血液検査、血栓の所見、圧・流量、ガス交換などを総合してチームで判断します。採血異常だけで決めるものではありません。交換には補助を一時的に中断するリスクもあるため、必要性とタイミングを評価します。

Q7. 看護師が気づける場面は、3つあります

① 「昨日と圧が違う」と気づいたとき

これがいちばん大きいと思います。

圧の絶対値と、前の勤務からの変化をあわせて見る。そのとき、流量や回転数などの条件も確認します。継続した観察と記録が、チームで変化を捉える助けになります。

② 体位を変えたあと

流量と圧を、変える前と後で見比べる。変化があれば、カテーテルの位置や回路の折れ曲がりに加え、患者さんの循環の変化も確認します。

③ 流量が落ちたとき、患者さんと回路をあわせて見る

血圧や意識、出血など、患者さんの状態はどうか。回路やポンプ、アラームはどうか。急激な低下や循環の悪化では、すぐに応援を呼びます。尿量や採血結果などの経過確認を待って、緊急対応が遅れないようにします。

そして、ひとりで抱えない

回路と圧の判断は、臨床工学技士や医師と一緒に見るものです。看護師も原因の評価に参加し、変化を捉えてチームに共有します。流量・回転数・圧の変化と、患者さんの所見を具体的に伝えることが、判断を支えます。

まとめ ── 覚えるのは4つでいい

  1. 流量が急に下がったら、患者さんと回路・装置をあわせて確認する。急激な低下や循環の悪化では、すぐに応援を呼ぶ。
  2. 脱血不良は重要な原因のひとつ。水分不足だけとは限らない。折れ曲がり・位置・圧排なども考える。
  3. 圧は測定位置、絶対値、変化をセットで見る。ΔPは血流量でも変わり、増大だけで血栓とは断定しない。
  4. 流量は多ければよいわけではない。患者さんの所見と複数の指標をあわせて評価する。

数字をひとつずつ覚えるだけでは、見えてこないことがあります。

どこで測った圧なのか。流量や回転数はどう変わったのか。そして、患者さんはどうなのか。

そのつながりを考えながら「いつもと違う」を伝えることが、チームの判断を支えるのだと思います。

わたしは、看護が好きです。
だからこそ、看護の価値を問い続けていたいと思っています。

「いつもと違う」に気づく力は、数字の外側でも同じように働いています。→ 患者に声をかけるタイミング|あえて立ち止まる看護

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参考にした資料

※この記事は一般的な情報であり、個別の医療判断に代わるものではありません。実際の管理は、必ず主治医・指導者・院内の基準にしたがってください。数値はいずれも参考値であり、施設の基準を優先してください。回路や圧の設定は機種によって異なります。