前負荷・後負荷・心拍数・心収縮力とは|心拍出量を決める4つの因子で循環を見る

「前負荷・後負荷・心拍数・心収縮力とは|心拍出量を決める4つの因子で循環を見る」のアイキャッチ画像。明るいICUの病室で、壁のアームに取り付けたベッドサイドモニターに緑の心電図と赤い動脈圧の波形が映り、その横の点滴スタンドに透明な輸液のボトルが下がっている。奥に空のベッドと窓辺の観葉植物。左側の白い壁の余白に、深い緑の「循環・補助循環の看護」のバッジと、極太の見出し「前負荷・後負荷・心拍数・心収縮力」、サブタイトル「心拍出量を決める4つの因子」。右下の角に、薄い黄色の服を着て肘をついた、水彩タッチのエレファントの女の子。 🌿循環・補助循環の看護

「血圧が下がってきました」と報告するとき、その血圧がなぜ下がったのかまで考えられているでしょうか。

血液が減ったのか、心臓が弱ったのか、血管が広がったのか。理由によって、見るところも、医師が選ぶ治療も変わります。

その「なぜ」を考えるときの物差しになるのが、心拍出量を決める前負荷・後負荷・心拍数・心収縮力の4つの因子です。この記事では、この4つで循環を整理します。循環の記事は、これからこの物差しでつないでいきます。

※生理学の基本は標準的な生理学の教科書(OpenStax『Anatomy and Physiology 2e』)と循環生理の教科書の著者による解説(Klabunde『Cardiovascular Physiology Concepts』)、臨床の部分は日本循環器学会のガイドライン(心不全診療ガイドライン2025年、補助循環のガイドライン2023年)と添付文書をもとにしています。

看護学生の方や、まず基本だけ知りたい方に向けて、やさしく説明した記事もあります:前負荷・後負荷をわかりやすく|看護学生のための循環のきほん

Q1. 循環は、何のためにあるのですか?

全身の組織に、酸素と栄養を届けるためです。

教科書では、ショックを「組織の代謝を保つのに十分な酸素や栄養を届けるだけの血流を、循環が保てなくなった状態」と説明しています。心原性ショックも、ガイドラインでは「心拍出量の減少により組織低灌流、臓器障害をきたした状態」とされています。

だから循環を見るときのゴールは、血圧の数字そのものではなく、組織に血液が届いているかだと思います。血圧は、そのための手がかりのひとつです。

Q2. 心拍出量とは何ですか?

心臓が1分間に送り出す血液の量です。

教科書では、心拍出量は次のかけ算で表されます。

心拍出量 = 1回拍出量 × 心拍数

1回拍出量は、心室が1回の収縮で送り出す血液の量です。安静時の目安として、1回拍出量はおよそ70mL、心拍数はおよそ75回/分、心拍出量は平均5.25L/分(4.0〜8.0L/分)と書かれています。これは左右の心室それぞれの値です。

このかけ算から分かるのは、心拍出量を変えるものは「1回にどれだけ送るか」と「1分間に何回送るか」の2つだけ、ということです。

Q3. 心拍出量を決める4つの因子とは?

前負荷・後負荷・心拍数・心収縮力の4つです。

心拍出量は「1回拍出量×心拍数」でした。教科書では、そのうちの1回拍出量を決めるおもな要素として、前負荷・心収縮力・後負荷の3つが挙げられています。これに心拍数を加えた4つが、心拍出量を決める因子です。

心拍出量を決める4つの因子の図。上に「心拍出量=1回拍出量×心拍数」の式。左のコマ「ためる(拡張期)」では、僧帽弁が開いて左心房から左心室へ赤い血液が流れ込み、大動脈弁は閉じ、左心室が血液でたっぷり満たされている(①前負荷:収縮の直前の、心室の筋肉の引き伸ばされ具合)。右のコマ「押し出す(収縮期)」では、僧帽弁が閉じ、大動脈弁が開いて、縮んで壁が厚くなった左心室から大動脈へ血液が押し出される(1回拍出量)。左心室の壁の内向きの矢印は④心収縮力(心臓の筋肉が縮む力)、だんだん細くなる動脈は②後負荷(血液を押し出すときの抵抗、血管の抵抗)。2つのコマをつなぐ回る矢印は③心拍数(1分間に「ためる」「押し出す」を何回くり返すか。速すぎると、ためる時間が短くなる)。
図:心拍出量を決める4つの因子。左心室が血液を「ためる(拡張期)」と「押し出す(収縮期)」をくり返す中で、前負荷・後負荷・心拍数・心収縮力がどこに関わるかを示しています。左心だけを簡略化して描いています。生理学の教科書(OpenStax『Anatomy and Physiology 2e』)の説明をもとに作成。

① 前負荷 ── 収縮する前に、どれだけ引き伸ばされているか

前負荷は、収縮する直前に、心室の筋肉がどれだけ引き伸ばされているかを表します。筋肉の伸び具合は直接は測れないので、心室にたまっている血液の量(拡張末期容積)や圧が、その目安として使われます。

教科書では、生理的な範囲では、心室の筋肉は引き伸ばされるほど強く収縮し、1回拍出量が増える、と説明されています(フランク・スターリングの法則)。戻ってくる血液が少なければ、心室は十分に満たされず、送り出せる量も減ります。

② 後負荷 ── 血液を送り出すときに乗り越える負担

後負荷は、心室が血液を送り出すときに乗り越えなければならない負担です。左心室の後負荷は大動脈の圧と深く関係していて、大動脈の圧や血管の抵抗が高いとき、大動脈弁が狭くなって開きにくいとき(狭窄)に大きくなる、とされています。

③ 心拍数 ── 1分間に何回送るか

心拍出量は1回拍出量×心拍数なので、心拍数が増えれば、心拍出量は増える方向に働きます。

ただ、教科書には、心臓が速く拍動するほど、心室に血液がたまる時間が短くなり、前負荷が下がると書かれています。しばらくは心収縮力を上げて補えても、続くと補いきれなくなる、とされています。また、心室を満たす血液のうち、最後の20〜30%は心房の収縮で送り込まれている、とも書かれています。

反対に、心拍数が遅すぎれば、1回拍出量が同じでも心拍出量は減ります。心拍数は「多いほどよい」ではなく、ちょうどよい範囲がある因子だと思います。

心拍数が遅すぎるとき・ちょうどよいとき・速すぎるときを比べた図。3段とも同じ長さの横の帯に、ためる(拡張期、水色)と押し出す(収縮期、赤)がくり返し並ぶ。遅すぎる段は回数が少なく、右の左心室は血液で満たされている(1分間に送る回数が少ない)。ちょうどよい段は、ほどよい回数で、左心室は満たされている(しっかりためて、しっかり送る)。速すぎる段は回数が多く、ためる部分がとても短く、左心室にたまる血液が少ない(ためる時間が短く、たまる血液が少ない、前負荷が下がる)。
図:心拍数が遅すぎるとき・ちょうどよいとき・速すぎるとき。横の帯は同じ時間の長さで、ためる(拡張期)と押し出す(収縮期)のくり返しを表しています。帯の長さは目安で、実際の時間の比率を示すものではありません。生理学の教科書(OpenStax『Anatomy and Physiology 2e』)の説明をもとに作成。

④ 心収縮力 ── 心臓の筋肉が縮む力そのもの

心収縮力は、心臓の筋肉が縮む力の強さです。強く縮むほど1回拍出量は増え、収縮のあとに心室に残る血液は少なくなります。前負荷とのちがいは、同じだけ引き伸ばされていても、どれだけ強く縮めるかという点です。

交感神経の刺激(アドレナリン、ノルアドレナリン)は、心収縮力を強めるとされています。

因子ひとことで言うと増えると・強くなると
前負荷収縮の直前の、心室の筋肉の引き伸ばされ具合(心室にたまった血液の量が目安)生理的な範囲では、1回拍出量は増える
後負荷血液を送り出すときに乗り越える負担(大動脈の圧、血管の抵抗など)1回拍出量は減る方向に働く
心拍数1分間に何回送るか心拍出量は増える方向に働く。ただし速すぎると、たまる時間が短くなり前負荷が下がる
心収縮力心臓の筋肉が縮む力1回拍出量は増える
生理学の教科書(OpenStax『Anatomy and Physiology 2e』19.4)と Klabunde『Cardiovascular Physiology Concepts』の説明をもとに作成

Q4. 血圧とは、どういう関係ですか?

教科書には、血流 = 圧の差 ÷ 抵抗という関係が示されています。言いかえると、血圧は、心臓が送り出す血液の量(心拍出量)と、血管の抵抗の両方で決まります。

教科書では、心拍数や1回拍出量を上げて心拍出量を増やすものは、血圧を上げ、血流を促す、とされています。血管の抵抗は、おもに細い動脈(細動脈)の太さで決まり、血管の半径が少し変わるだけで抵抗は大きく変わる(半径の4乗に反比例する)、と説明されています。

「血圧が保たれている」=「足りている」ではない

血圧は、心拍出量が下がっても、血管を締めて抵抗を上げることで、しばらく保たれることがあります。ガイドラインにも、血圧は血管収縮反射により保たれている場合があるので、数値は絶対的なものではなく、臓器の低灌流の所見とあわせて評価する、と書かれています。教科書でも、ショックの患者さんで血圧が正常に保たれていることがある、とされています。

血圧が保たれていても足りているとは限らないことを示す図。左右2つのコマに、心臓、大動脈から出る太い動脈、圧力計、手と腎臓につながる細い血管が同じ配置で描かれている。左の「ふだん」では、流れの矢印が太く、手と腎臓に赤い血液がたっぷり届いている。右の「心拍出量が下がったとき」では、流れの矢印が細く、手と腎臓へ向かう血管が細く締まり、手と腎臓は青白い。圧力計の針は左右で同じ位置(血圧は保たれている/血管を締めて血圧を保っている/でも、手足や腎臓に届く血液は少ない)。下に「血圧の数字だけでなく、手足の冷たさ・尿の量もあわせて見る」。
図:心拍出量が下がっても、血管を締めることで血圧はしばらく保たれることがあります。そのとき、手足や腎臓に届く血液は減っています。血流・圧・抵抗の関係は生理学の教科書(OpenStax『Anatomy and Physiology 2e』)、血圧が血管収縮反射で保たれることがあり臓器の低灌流の所見(四肢冷感、乏尿など)とあわせて評価する点は、補助循環のガイドライン(JCS2023)の記載をもとに作成。

平均血圧と脈圧

  • 平均血圧:組織に血液を送り込む「平均の力」。おおよそ「拡張期血圧+脈圧÷3」。教科書では、60mmHgを下回る状態が長く続くと、組織に十分な血液が届かなくなる、とされています
  • 脈圧:収縮期血圧と拡張期血圧の差。教科書では、1回拍出量が少ないと脈圧は小さくなり、心不全、大動脈弁狭窄、大量の出血などでみられる、とされています

血圧の4つの数字や、血圧が下がると体の中で何が起こるのかは、血圧の見方|収縮期・拡張期・平均血圧・脈圧から循環を読むにくわしくまとめました。

Q5. 治療や補助循環は、4つのどこに効いているのですか?

ここが、この物差しのいちばん便利なところだと思います。薬も機械も、4つのどこかに働きかけています。

因子薬・治療(例)補助循環との関係
前負荷血管拡張薬は、静脈を広げて前負荷を軽くする。NPPV(非侵襲的陽圧換気)も、心臓に戻る血液を減らして前負荷を軽くする(胸の中の陽圧で後負荷も軽くする)インペラは、左室の中から血液を吸い出し、左室の圧と容量を下げる
後負荷血管拡張薬は、動脈を広げて後負荷を軽くする。ノルアドレナリンは、末梢の血管の抵抗を上げて平均血圧を上げるが、後負荷も増やすIABPは、心臓が収縮するときにバルーンをしぼませ、後負荷を軽くする。VA-ECMOは、大動脈を逆向きに流れる血流が、後負荷を増やす
心拍数速すぎ・遅すぎを整えるIABPは心拍に合わせて動くため、心拍数が速すぎるとバルーンが十分にふくらまない可能性がある、と書いている添付文書がある
心収縮力強心薬(ドブタミン、PDEIII阻害薬など)は、心拍出量を増やし、組織への血流を改善する目的で使われる─
心不全診療ガイドライン2025年(日本循環器学会ほか)、補助循環のガイドライン2023年、IABP駆動装置・カテーテルの添付文書をもとに作成

たとえばノルアドレナリンについて、ガイドラインには、末梢の血管の抵抗を上げて平均血圧を上げる一方で、後負荷の増大や心筋の酸素消費量の増加をきたし、腎臓・脳・内臓の血流も減らすので、強心薬としての単独使用は控え、できるだけ少量・短期間で使う、と書かれています。血圧が上がっても、心臓にとって楽になったとは限らない、ということだと思います。

補助循環の記事も、この見方で読むとつながって見えてきます。

Q6. 看護師は、この4つをどう使うのですか?

血圧が下がった、尿が減った、手足が冷たい。そんなときに、「4つの因子のどれが崩れたのか」を考える手がかりにできると思います。

教科書では、ショックを次のように分けています。4つの因子と重ねると、こう見えてきます。

ショックの種類(教科書の分け方)おもな原因(例)4つの因子で見ると
循環血液量減少性ショック大人ではおもに出血(子どもでは、ひどい嘔吐や下痢による体液の喪失も)、広い範囲の熱傷など血液そのものが減り、心臓に戻る血液が減る → 前負荷が下がる
心原性ショック心筋梗塞が最も多い。不整脈、弁膜症、心筋症など心臓が心拍出量を保てない → 心収縮力(不整脈では心拍数)
血管性ショック敗血症、アナフィラキシー、脊髄・脳の損傷(神経原性)細い動脈の緊張がゆるみ、大きく広がる → 血管の抵抗が下がる
閉塞性ショック心タンポナーデ、肺塞栓心タンポナーデ:心臓のまわりにたまった液体に外から押されて、心臓が十分に広がれず、ためられる血液が減る → 前負荷が下がる
肺塞栓:肺の動脈がふさがり、右心室の後負荷が上がる
生理学の教科書(OpenStax『Anatomy and Physiology 2e』20.4)の説明をもとに作成。閉塞性ショックの2つの原因の説明は、同じ教科書の19.1と、心不全診療ガイドライン2025の表9(右心不全の原因)をもとにしています。4つの因子との対応は、この記事での整理です
ショックの4つの種類を比べた図。4つとも同じ形の輪の図で、左の心臓から赤い動脈で右の「からだの組織」へ血液を送り、青い静脈で心臓に戻る。左上の循環血液量減少性ショックは、管と心臓の中の血液が少ない(血液そのものが減る。例:出血、熱傷。前負荷が下がる)。右上の心原性ショックは、心臓の壁の一部が灰色になっていて(弱った心筋)、送り出す矢印が細い(心臓が送り出せない。例:心筋梗塞、不整脈、弁膜症。心収縮力、不整脈では心拍数)。左下の血管性ショックは、動脈が大きく広がっている(血管が広がりすぎる。例:敗血症、アナフィラキシー。血管の抵抗が下がる)。右下の閉塞性ショックは、心臓のまわりを黄色い液体が囲んで内側へ押し、心臓が小さく縮こまっている(心臓が外から押されて、血液をためられない。例:心タンポナーデ。前負荷が下がる)。
図:ショックの4つの種類。4つとも同じ形の簡単な図(心臓 → 動脈 → からだの組織 → 静脈 → 心臓)で、どこが崩れているかを比べています。閉塞性ショックは、心タンポナーデを例に描いています。ショックの分け方と原因の例は生理学の教科書(OpenStax『Anatomy and Physiology 2e』20.4)、心タンポナーデのしくみは同じ教科書の19.1の説明をもとに作成。4つの因子との対応は、この記事での整理です。

もちろん、原因を判断するのは医師で、実際にはいくつもの要素が重なっています。それでも、「血圧が下がった」だけでなく、「脈が速く、手足が冷たく、尿が減っている」と一緒に伝えられると、なぜ下がったのかを考える材料が増えます。4つの物差しは、そのための整理の道具だと思います。

おわりに

循環は、むずかしく見えます。数字も、薬も、機械も多いからです。

でも、どれも結局は「1回にどれだけ送るか」と「1分間に何回送るか」、そして「組織に届いているか」の話です。

前負荷・後負荷・心拍数・心収縮力。この4つを物差しにすると、モニターの数字や、始まった薬の意味が、少しずつつながって見えてくると思います。

わたしは、看護が好きです。
だからこそ、看護の価値を問い続けていたいと思っています。

参考にした資料

※この記事は一般的な情報であり、個別の医療判断に代わるものではありません。実際の管理は、必ず主治医・指導者・院内の基準にしたがってください。

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