「Impellaが入った患者さんが急変したら…自分は正しく動けるのか?」
基礎知識は頭に入った。でも、いざという場面での「判断の順番」が身についているかどうかは、また別の話です。
この記事では、
ICU・CCUで実際に起こりうる急変シナリオ(深夜のVf発生)をもとに、時系列でどう判断・行動すべきかをストーリー形式で追っていきます。最後には現場で使えるチェックリストもついています。ぜひブックマークしてご活用ください。
「Impellaが入った患者さんが急変したら…自分は正しく動けるのか?」
基礎知識は頭に入った。でも、いざという場面での「判断の順番」が身についているかどうかは、また別の話です。
この記事では、
Impella挿入中に実際に起こりうる急変シナリオ(深夜のVf発生)をもとに、時系列でどう判断・行動すべきかをストーリー形式で追っていきます。最後には現場で使えるチェックリストもあります。
今夜の患者:Aさん(67歳・急性心筋梗塞後)
| 項目 |
内容 |
| 病名 |
急性心筋梗塞後・心原性ショック |
| デバイス |
Impella CP(P8で稼働中) |
| パージ液 |
5%ブドウ糖+ヘパリン加(残量十分) |
| バイタル |
BP 98/62、HR 88、SpO2 97% |
| 意識 |
鎮静中(RASS -2) |
| 特記 |
昨日エコーでポジション確認済み。下肢虚血なし |
あなたはICUの夜勤担当。Aさんを含む3名を1人で受け持つ深夜帯です。
Scene 1:深夜2時、突然のアラーム
時刻:02:14
Impellaのコントローラーからアラーム音が鳴り響きます。同時に、心電図モニターのアラームも。
コントローラーの画面には「サクションアラーム」の表示。
Q1. サクションアラームが鳴った瞬間、まず何を確認しますか?
A. 順番が大事です。
デバイスより先に、患者さんを見るのが原則です。
最初の10秒でやること:
- 患者さんのもとへ駆け寄り、全身状態を目で確認(顔色・胸の動き・反応)
- モニターの心電図波形・血圧・SpO2を確認する
- Impellaコントローラーの画面を確認する
Scene 2:モニターを見ると… Vf発生!
時刻:02:14(30秒後)
モニターには
粗い波形が連続するVf(心室細動)が映し出されています。血圧はモニター上「測定不能」。Aさんは呼びかけに反応がありません。
サクションアラームの原因がわかりました。
心臓がVfに陥り拍動を失ったため、Impellaが左心室から血液を吸えなくなったのです。
Q2. Vfを確認したら、最初の行動は何ですか?
A. まず
患者さんの反応を確認しながら、同時に応援を呼ぶのが基本です。
- 意識確認(「Aさん!わかりますか!」と大声で呼びかけ、肩を叩く)+ 同時にナースコール・緊急コールで応援要請
- 頸動脈拍動の確認(10秒以内)
- 拍動なし → CPR開始を宣言
ICUならではのポイント
監視モニターでVfを確認している状況では、患者確認と応援要請をほぼ同時に行います。「Vfです!CPR開始します!」と声に出して周囲に伝えながら動くことで、チーム全体が素早く動けます。
Scene 3:CPR開始、Impellaはどうする?
時刻:02:15
応援が来るまでの間、あなたはひとりでCPRを開始します。このとき、Impellaはどうすれば良いでしょうか?
Q3. CPR中、Impellaは止めますか?それとも動かし続けますか?
A. Impellaは停止させずに動かし続けます。ただし、補助レベルをP2に下げます。
| 対応 |
理由 |
| Impellaは止めない |
稼働を続けることで最低限の循環補助を維持できる |
| P2に下げる |
心停止中は左心室への血液流入がほぼゼロ。高い補助レベルのままでは心室壁を吸い込む(サクション)危険がある |
| P0にはしない |
モーターが完全停止するとデバイス保護ができなくなる |
コントローラーの「▼」ボタンを押してP8 → P2へ段階的に下げます。
Q4. CPR中、胸骨圧迫はImpellaに影響しますか?
A. 影響することがあります。胸骨圧迫によってカテーテルが動き、
Impellaのポジションがずれる可能性があります。ただしCPR中はデバイスよりも
蘇生を優先するのが原則です。
注意
CPR中にポジションアラームが鳴ることがありますが、それだけでCPRを中断してはいけません。蘇生が最優先です。
Scene 4:除細動(DC)を実施する
時刻:02:17
応援の看護師と医師が到着。CPRを引き継いでもらいながら、除細動器の準備をします。
「DC打ちます!離れてください!」
※除細動のエネルギー量(J数)は除細動器の種類(二相性・単相性)と施設プロトコルによって異なります。必ず施設の設定・医師の指示に従ってください。
Q5. 除細動のパドルはどこに当てますか?Impellaのコントローラーに注意は必要ですか?
A. パドルの位置は通常どおりで構いませんが、
コントローラーや挿入部の上に直接当てないよう注意します。
パドルの正しい配置:
- 前胸部(胸骨右縁・第2肋間付近)+ 左側胸部(心尖部)
- または前胸部+背部(AP配置)
Impellaのコントローラーは除細動の電気ショックに耐えられる設計ですが、パドルを直接当てると誤作動のリスクがあります。
DC実施直前のチェック:
- パドル位置は適切か
- コントローラーがパドルから離れているか
- 全員が患者から離れているか(「離れてください」の確認)
- 酸素マスクを顔から離す・酸素チューブを胸元から遠ざける(完全に外すのではなく顔からずらす・フローを一時中断するのが現実的)
Q6. DCを打った後、Impellaについて最初に確認することは?
A. DCの直後はまずROSCの確認が最優先ですが、血行動態が少し安定したらすぐにImpellaの確認に移ります。
| 優先順 |
確認項目 |
チェックポイント |
| ① |
コントローラーのアラーム |
新たなアラームが出ていないか |
| ② |
カテーテルのマーカー深さ |
CPR前と変わっていないか(ポジションずれの目安) |
| ③ |
エコーによる先端位置確認 |
補助レベルを戻す前に必ず医師へ依頼。位置がずれたままP数を上げると心室壁・腱索損傷のリスクあり |
| ④ |
補助レベル |
エコーで位置確認・問題なしを確認してから、医師の指示のもと段階的にP2→元の設定へ戻す |
| ⑤ |
モーターカレント値 |
正常範囲内か |
| ⑥ |
パージ液 |
流速・残量・色調に変化はないか |
Scene 5:ROSC後の初動確認
時刻:02:21
3回目のDCのあと、モニター上に洞調律が戻りました。
ROSC(自己心拍再開)!
血圧が戻りはじめています。BP 72/48。
Q7. ROSCが確認できたら、Impellaの補助レベルをすぐ元に戻していいですか?
A. いいえ。補助レベルを戻す前に、まずエコーで先端位置を確認することが必要です。
CPR中の胸骨圧迫でカテーテルが動いている可能性があります。位置がずれたまま高い補助レベルに戻すと、心室壁・腱索を傷つける危険があります。
正しい順番:
- ROSC確認
- 医師にエコーでの先端位置確認を依頼(ここが最重要)
- 位置が適切であることを確認
- 医師の指示のもとP2 → 元の補助レベルへ段階的に戻す
- 補助レベルを上げながら血行動態・アラームを確認
なぜ位置確認が先なのか?
Impellaの先端が深すぎる(心室内に入りすぎ)状態でP8に戻すと、プロペラが心室壁や腱索に接触するリスクがあります。エコーで「大動脈弁をまたいで正しく留置されている」を確認してからP数を上げるのが安全な順番です。
現場のポイント
P2 → 元の設定へ戻す判断・指示は必ず医師が行います。看護師が自己判断でP数を上げないよう注意が必要です。
Q8. ROSCを確認した直後、Aさんの全身で特に優先して観察するべき部位はどこですか?
A.
① 循環(最優先):血圧・心拍数・SpO2の推移、皮膚色・四肢の温度感
② Impellaポジション:カテーテルシャフトのマーカー深さを確認、医師にエコーでのポジション確認を依頼
③ 穿刺部:CPRの振動でシースが動いた可能性あり。出血・血腫の有無を確認
④ 挿入側下肢:CPR中に観察できていなかったため再確認。足背動脈の触知・色・温度・しびれ
Scene 6:ポジションアラームがまだ鳴っている
時刻:02:25
血行動態は少しずつ回復してきましたが、コントローラーに
「ポンプ位置不良」アラームが鳴り続けています。
Q9. ポジションアラームが鳴っているとき、看護師が自分でカテーテルを動かして調整してもいいですか?
A. いいえ。絶対に自己判断でカテーテルを動かしてはいけません。
カテーテルの位置調整は必ず医師が行います。看護師の役割は異常を発見して報告することです。
- アラームの種類を確認・記録する
- バイタルサインを確認する
- カテーテルシャフトのマーカー深さを目視確認し、前回との差を伝える
- 医師へ報告し、エコーでのポジション確認を依頼する
- 医師が位置調整するまで患者のそばで観察を続ける
Q10. ポジションずれによって起こりうるリスクは何ですか?
A.
カテーテルが深すぎる場合(心室内に入りすぎ):心室壁への接触 → 不整脈(再VfのリスクUp)、腱索・乳頭筋の損傷
カテーテルが浅すぎる場合(大動脈側に出すぎ):大動脈弁への接触・損傷、補助流量の大幅な低下 → 血行動態の悪化
急変後はCPRの振動や心臓の動き再開によってポジションがずれやすいため、
ROSC後は必ずエコーでの確認が必要です。
Scene 7:医師への報告をどうまとめる?
時刻:02:28
Q11. 急変の報告をSBAR形式でまとめるとどうなりますか?
A. SBAR(エスバー)は緊急時の報告に役立つフレームワークです。
| SBAR |
内容 |
今夜の例 |
| Situation(状況) |
今何が起きているか |
「Impella挿入中のAさんが02:14にVfとなりCPR・DC3回施行、02:21にROSCしました」 |
| Background(背景) |
患者背景・経過 |
「67歳男性、急性心筋梗塞後心原性ショック、Impella CP P8で管理中でした」 |
| Assessment(評価) |
現在の状態 |
「現在BP 72/48、HR 95、SpO2 94%。ポジション不良アラームが継続中。エコーでの確認が必要と考えます」 |
| Recommendation(提案) |
何をしてほしいか |
「至急ベッドサイドに来ていただき、ポジション確認と補助レベルの指示をお願いできますか」 |
ポイント
夜間の電話報告では「Impella CP P8で管理中」「CPR中はP2に下げて継続した」という情報も必ず伝えましょう。
急変対応チェックリスト
🔴 Vf発生〜CPR開始
- 患者の全身状態・モニターを確認する
- 意識確認と同時に応援を呼ぶ(緊急コール)
- 頸動脈拍動を確認(10秒以内)
- CPR開始を宣言し胸骨圧迫を開始
- Impellaの補助レベルをP2に下げる(止めない)
- 除細動器を準備する
🟡 DC(除細動)実施
- パドル位置を確認(コントローラー・挿入部を避ける)
- 全員が患者から離れているか声で確認
- 酸素マスクを顔から離す・酸素チューブを胸元から遠ざける(顔からずらす・フローを一時中断するのが現実的)
- DC実施
- DC直後にモニター波形・血圧を確認
🟢 ROSC後の確認
- バイタルサイン(BP・HR・SpO2)を確認する
- カテーテルシャフトのマーカー深さを目視確認(CPR前との差を記録)
- 医師にエコーでの先端位置確認を依頼する ← 補助レベルを戻す前に必須!
- エコーで位置が適切と確認されてから、医師の指示のもと補助レベルを段階的に戻す
- 補助レベルを上げながらアラーム・バイタルを継続確認
- パージ液の残量・流速・色調を確認
- 穿刺部(出血・血腫)を確認
- 挿入側下肢(動脈触知・色・温度・しびれ)を確認
- SBARで医師に報告する
この事例から学ぶ3つのポイント
① Impellaは止めない、でもP2に下げる
心停止時にP8のまま動かし続けると心室壁へのサクションが起きます。P2に下げることでデバイスを守りながら最低限の補助を継続できます。
② 急変時も「蘇生が最優先」
アラームが鳴っていても、除細動やCPRを中断してはいけません。Impellaの細かい確認はROSC後に行います。
③ ROSC後こそ観察が重要、P数を上げる前にエコーで位置確認
自己心拍が戻ってもポジションずれ・下肢虚血・穿刺部出血などが起きている可能性があります。エコーで先端位置を確認してからP数を戻すのが安全な順番です。
まとめ
判断の軸は常にこの順番です:
- まず患者をみる
- 蘇生を優先する
- Impellaを守る(P2へ)
- ROSC後・エコーで位置確認してからP数を戻す
- チームに報告・共有する(SBAR)
この流れを頭に入れて、ぜひ今日のシフトに臨んでください。
→
基礎編はこちら「【現場の疑問をまるっと解決】Impella(インペラ)看護 Q&A 完全ガイド」
参考:急変対応の基本的な考え方はAHA(アメリカ心臓協会)のBLS/ACLSガイドラインおよび各施設のImpella管理プロトコルに準じています。実際の対応は必ず施設のプロトコルに従ってください。
わたしは、看護が好きです。
だからこそ、看護の価値を問い続けていたいと思っています。
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