採血の結果に悩むことはありませんか。並んだ数字のうち、どれを循環管理に結びつけていこうかと。
日本循環器学会のガイドライン(JCS2023)は、補助循環を使う患者さんでは、循環の管理と同時に全身の管理が必要だとして、臓器ごとの障害を1つの章にまとめています。この記事では、その章を軸に、インペラのテキストブックとELSO(体外式生命維持の国際組織)のガイドラインで補いながら、採血の数字が「何を聞いているのか」を整理します。
※基準値や目標値は、施設や検査法によって異なります。数値は各資料に示された目安です。経時的な変化や身体所見とあわせて読み取ります。
Q1. 補助循環中の採血は、何を確かめているのですか?
血液検査にて腎機能,肝機能,乳酸値,凝固系の測定を行い,改善できる病態については適宜是正していくことがきわめて重要である.
JCS2023 第1章 6「全身状態評価」
心原性ショックの患者さんでは、多臓器不全が死亡の原因になることが少なくありません。また、低血圧の所見よりも、低灌流(体に血液が届いていない)の所見があるほうが死亡率が高いとされています。血圧を保つだけでなく、組織の低灌流を評価して手を打つことが求められています。
採血の数字は、大きく4つのことを聞いていると考えると整理しやすいと思います。
| 聞いていること | おもな数字 |
|---|---|
| 体に届いているか | 乳酸(血液ガス)、SvO2 |
| 臓器が傷んでいないか | クレアチニン(腎)、AST・ALT・LDH・ビリルビン・PT(肝) |
| 固まり方は大丈夫か | 血小板、PT、フィブリノゲン、FDP、Dダイマー |
| 機械が血を壊していないか | 血漿遊離ヘモグロビン、ヘモグロビン、尿の色 |
これに、不整脈に関わる電解質(カリウム・マグネシウム)が加わります。
Q2. 体に血液が届いているかは、何で分かりますか?
採血より先に、ベッドサイドで気づける
2025年改訂版の心不全診療ガイドラインは、低灌流(組織に血液が届いていない)の症状・徴候として、次のものを挙げています。
- 脈圧が小さい(脈圧狭小)
- 手足が冷たい(四肢冷感)
- うとうとしている(傾眠傾向)
- 尿が減る、腎機能が悪くなる(乏尿・腎機能悪化)
インペラのテキストブックが引用するショックの定義では、これに加えて冷汗、意識障害、収縮期血圧90mmHg未満(または平常時より30mmHg以上の低下)が挙がっています。血圧が保たれていても低灌流の所見があれば、プレショックと考えて同じように対応する、とされています。
ただし補助循環中は、ポンプの流れが脈圧に影響します。VA-ECMOでは、脈圧は自分の心臓の働きを見る指標とされています(ELSO)。脈圧だけで判断せず、ほかの所見とあわせて見ます。
ノーリア・スティーブンソン分類
うっ血の有無と低灌流の有無で、心不全の患者さんを4つに分ける考え方です(Nohria 2003)。
| うっ血なし(dry) | うっ血あり(wet) | |
|---|---|---|
| 低灌流なし(warm) | うっ血も低灌流もない | うっ血はあるが、灌流は保たれている |
| 低灌流あり(cold) | うっ血はないが、低灌流がある | うっ血と低灌流の両方がある |
「低灌流(cold)」の見方は、上に挙げたサインです。「うっ血(wet)」について、2025年改訂版の心不全診療ガイドラインは、次のような症状・徴候を挙げています。
- 肺のうっ血:起坐呼吸、夜間発作性呼吸困難、前かがみになると苦しい(前屈呼吸苦)、肺のラ音、過剰心音(Ⅲ音・Ⅳ音)、心原性肺水腫
- 体のうっ血:頸静脈の怒張、下肢・全身のむくみ、胸水・腹水、肝頸静脈逆流
原著論文では、うっ血がある患者さん(表の右の列)は、うっ血も低灌流もない患者さんに比べて、1年以内の死亡または緊急の心臓移植のリスクが高かったと報告されています。
もともとは心不全で入院した患者さんの評価のために作られた分類で、補助循環中の患者さんにそのまま当てはめるものではありません。それでも、「冷たいか、温かいか」「水がたまっているか」の2つの目で見る習慣は、補助循環中の観察にも生きると思います。
乳酸は「変化」を見る数字
乳酸値は循環不全に鋭敏な指標であるため,予後予測,治療効果判定に有用である.
JCS2023 第1章 6「全身状態評価」
低灌流の所見としては、次のようなものが挙げられています。乳酸は2mmol/Lが目安です。
- 末梢の冷感
- 尿量の減少(30mL/時未満)
- 乳酸値 2mmol/L以上
- 血清クレアチニンが2倍以上に上昇
- 肝機能の異常
- BNPの上昇
施設によって、乳酸の単位がmmol/Lのこともあれば、mg/dLのこともあります。インペラのテキストブックは、2mmol/L=18mg/dLと併記しています。乳酸値の著しい上昇や強いアシドーシスは、重症化を疑う所見です。1つの数値だけでなく、循環の状態や治療への反応とあわせて見ます。
インペラのテキストブックは、CPO(心臓が血液を送り出す力を表す数値。単位はW)が0.6Wを超えて乳酸値が改善していることをウィーニングを考える目安に、CPOが0.6W未満で乳酸値の改善が見られないことをエスカレーションを考える目安に挙げています。1回の値よりも、下がってきているかどうかを追う数字だと思います。
エスカレーションとは、いまの補助循環では足りないときに、より強い補助へ切り替えたり、別の補助を加えたりすることです。たとえば、インペラCPからインペラ5.5や補助人工心臓(VAD)への切り替え、インペラにVA-ECMOを加えるECPELLAなどがあります。CPOの見方は、インペラ(Impella)のCPOに書きました。
乳酸が上がったら、足も見る
インペラのテキストブックは、下肢の阻血を評価する項目として、足背・後脛骨動脈の触知、下肢の色調の変化と並べて「管理中の乳酸値の上昇」を挙げています。乳酸が上がったとき、全身の循環だけでなく、カテーテルが入っている側の足にも目を向けるきっかけになります。
SvO2
肺動脈カテーテルが入っていれば、混合静脈血酸素飽和度(SvO2)も手がかりになります。SvO2は、全身の酸素の需要と供給のバランスを見る指標とされ、臓器低灌流の所見の1つとして、SvO2 60%未満が挙げられています。
Q3. 腎臓は、何を見ますか?
心原性ショックで血行動態が破綻すると、腎機能が急激に悪くなることがあります。原因はおもに低灌流と腎うっ血で、一時的で元に戻る場合から、戻らない状態に進む場合まであります。
「もともと」と比べる
腎機能障害を見つけたら、もともと慢性腎臓病があったのか、今回のことで悪くなったのかを整理する必要があります。入院前の値や、入院時の値と並べて見ることが、その第一歩になると思います。
低灌流のほかにも、原因がある
腎機能が悪くなる原因としては、次のものが挙げられています。
- ヨード造影剤の影響(造影剤腎症)
- コレステロール塞栓
- 新しく始めた薬剤の影響
- 補助循環のデバイスに関連した溶血
また、右心不全が強くなると、低灌流に加えてCVPが上がり、腎うっ血で乏尿・無尿になるとしています。補助循環で血行動態が良くなっても十分な尿が出ない場合は、腎代替療法の導入が必要になる、とも書かれています。導入するかどうかは、尿量だけでなく全身の状態から医師が判断します。
インペラのテキストブックのICU患者管理のチェック項目には、尿量・尿色があり、安定した尿量が保たれていること、減っていないこと、性状や色が変わっていないことを確かめるよう書かれています。尿は、採血を待たずに毎時確かめられる手がかりです。
Q4. 肝臓は、どの順で動きますか?
心原性ショックの肝機能障害は、低灌流による肝虚血と肝うっ血の2つに分けて考えます。どちらかによって、上がる数字が違います。

| 主な検査値の変化 | 時間の流れ | |
|---|---|---|
| 肝虚血 (低灌流) |
AST優位のトランスアミナーゼ、LDH、PTの延長 | 急性期に上がる。間接ビリルビンは数日後に上がる。循環が改善すると、トランスアミナーゼは1〜2週間ほどで下がっていく |
| 肝うっ血 (右心不全) |
直接ビリルビン、γGTP、ALP | CVPが高い右心不全でみられる |
ASTが先に上がり、ビリルビンは数日遅れて上がる。この時間差を知っていると、数日たってからビリルビンが上がってきたときに、「今まさに悪くなっている」のか「数日前の影響が出てきた」のかを考える手がかりになると思います。
ASTとLDHは、心臓からも出る
急性心筋梗塞では、心筋からCK(CK-MB)とともにAST、LDHが上がります。ALTも同時に上がっている場合は、急性の肝障害の合併を考えます。ASTとLDHだけでは、心臓なのか肝臓なのかを分けられません。急性期は薬剤による肝障害も鑑別に挙げる必要がある、とも書かれています。
IABP-SHOCK II試験のサブ解析では、低酸素性肝炎を合併した患者さんの30日死亡率は68%で、合併しなかった患者さん(34%)より高く、AST・乳酸値・クレアチニンは30日死亡の独立した因子でした。
Q5. 固まり方は、何を見ますか?
循環不全のときには、凝固の数字にも次のような異常が出ることがあります。
- 血小板の減少
- FDPの上昇、Dダイマーの上昇
- フィブリノゲンの低下
- プロトロンビン時間(PT)の延長
さらに、補助循環が入っている患者さんでは、血小板の減少や凝固因子の喪失(フォン・ヴィレブランド因子が壊されることを含む)によって凝固の異常が起き、デバイスの挿入部などから出血しやすくなるとしています。重い肝機能障害も凝固異常の原因になり、全身の状態が改善しなければDICに進むことがある、とも書かれています。
ECMOでは、測る間隔の例が示されています
ELSOの抗凝固ガイドライン(2021)は、ECMO中の検査の間隔の例として次の表を示しています。
| 検査 | 間隔の例 |
|---|---|
| ACT | 1〜2時間ごと |
| APTT、抗Xa活性、血小板 | 6〜12時間ごと |
| INR、フィブリノゲン、血算 | 12〜24時間ごと |
| アンチトロンビン | 1日1回〜必要時 |
| 血漿遊離ヘモグロビン | 1日1回 |
Dダイマーと血小板の「動き方」
ELSOの回路のガイドラインは、ECMO中にDダイマーが急に上がり、血小板が下がってくるときは、回路の中で血栓ができつつある可能性があるとしています。ただし、Dダイマーは強い炎症や血管内の血栓でも上がるので、ほかの原因を除外する必要があること、またECMOの患者さんの多くはECMOの開始時からある程度の血小板減少があることも書かれています。
ACTやAPTTの読み方、ヘパリンとの関係は補助循環中のヘパリンに、ECMOのACTの目標はVA-ECMO看護Q&AガイドのQ9に書きました。
Q6. 機械が血を壊していないかは、何で分かりますか?
溶血は、機械的な力で赤血球の膜が破れて、ヘモグロビンが血漿に出てくることです。ELSOの抗凝固ガイドラインは、血漿に出た遊離ヘモグロビンが腎臓の尿細管に沈着して腎障害につながることがあり、腎機能障害や死亡と関連するとしています。
血漿遊離ヘモグロビン
ELSOのGeneral Guidelines(v1.4)は、血漿ヘモグロビンはふつう10mg/dL未満で、50mg/dLを超えたら原因を調べるとしています。
ふだんの採血(血算)のヘモグロビン(Hb)は、g/dLで表示されます。血漿遊離ヘモグロビン(PfHb、fHbなどと書かれます)は、赤血球が壊れて血漿に出てきたヘモグロビンを測るもので、単位はmg/dLです。単位が違うので、数字を見比べるときは注意が必要です。
ELSOは、ECMO中は1日1回の測定を例として示しています。一方で、溶血が見逃されやすい理由として、すべてのECMO施設が血漿遊離ヘモグロビンを測っているわけではないことも挙げています。実際に測るかどうかや頻度は、施設によって違います。
尿の色と、見分け
インペラのテキストブックは、重い溶血では暗赤色や赤褐色の尿、ヘモグロビン値の低下、場合によっては急性腎不全の兆候が見られるとしています。ただし、尿が赤くなる原因は溶血だけではありません。テキストブックが挙げているのは次のものです。
- 血尿(尿路の外傷などによる出血)
- ミオグロビン尿(筋肉の損傷、コンパートメント症候群、下肢の阻血など)
- まれに、輸血反応や薬剤
現場では、色や性状の違いで、おおよその見当がつくことが多いと思います。ただ、見た目だけで決めることはできません。ポンプの状態、足の状態、尿道カテーテルの扱いといった状況とあわせて考え、検査で確かめます。
確かめる方法として、尿検査、血漿遊離ヘモグロビンの測定、遠心分離した血漿を目で見ることが挙げられています。ELSOのGeneral Guidelinesも、尿のピンク色は膀胱からの出血のこともあるので、血漿ヘモグロビンで確かめるとしています。

LDHは、Q4のとおり肝臓や心筋の障害でも上がるので、LDHだけで溶血と決めることはできません。
数字どうしが、影響しあう
ELSOの抗凝固ガイドラインは、血漿遊離ヘモグロビンが50mg/dLを超える、トリグリセリドが500mg/dLを超える、ビリルビンが6mg/dLを超えると、抗Xa活性が実際より低く出ることがあるとしています。溶血や黄疸があると、凝固の数字の読み方まで変わってくる、ということです。
インペラでの溶血の見方はインペラの溶血に書きました。
Q7. 電解質は、なぜ見るのですか?
補助循環が入っていても、頻拍性の不整脈で血行動態が悪くなることがあります。不整脈の背景には、電解質の異常、心筋虚血、血液ガスの異常などが隠れていることがあります。
血清K>4.0mEq/L,血清Mg>2.0mg/dLを目標とする.Mgの補正を行わないと低K血症も改善しないことが多い.
JCS2023 第3章 1.1「不整脈の停止および予防」
一方で、カリウムやマグネシウムが低くない患者さんに、予防のために電解質を投与することの有効性は認められていない、とも書かれています。
Q8. 機器によって、とくに見る数字はありますか?
| 機器 | とくに見るもの | 資料 |
|---|---|---|
| IABP | 血小板・赤血球の減少。バルーンの動きや異物によって、血小板が物理的に損傷される | JSEPTIC CE教材、IABP添付文書 |
| インペラ | 溶血(Q6)。ポンプの高回転やサクションで起こることがある。ACTの目標は160〜180秒 | JCS2023、Impellaテキストブック |
| VA-ECMO | 大腿動脈から送血するVA-ECMOでは、右橈骨動脈の血液ガスで上半身の酸素化を確かめる(自分の肺の酸素化が悪いと、上半身が低酸素になることがある)。全身の臓器障害と乳酸を定期的に追う | JCS2023、ELSO |
VA-ECMOで右手から血液ガスを採る理由はVA-ECMOのアセスメントに、IABPの血小板減少はIABPの合併症に書きました。
まとめ ── この4つ
- 乳酸は、1回の値より「下がってきているか」を見る。上がったら、足も見る
- クレアチニンは、もともとの値と比べる。溶血も原因になる
- 肝臓はASTが先、ビリルビンは数日遅れて動く。ASTとLDHは心臓からも出るので、ALTと合わせて読む
- 赤い尿は、溶血・血尿・ミオグロビン尿を見分ける。溶血や黄疸があると、凝固の数字の読み方も変わる
わたしは、看護が好きです。
だからこそ、看護の価値を問い続けていたいと思っています。
数字のほかにも、回復のサインはベッドサイドにあります。→ 看護師が「おいしい?」と聞く理由|食事介助でみる回復のサイン
補助循環の記事を、まとめて読む
あわせて読みたい
- 補助循環中のヘパリン|なぜ使い、いつ止めて、いつ再開するのか
- インペラ(Impella)の溶血とは|尿の色・採血データで気づくサイン
- VA-ECMOのアセスメントQ&A 7つ|受け持った日に、どこから見ていくか
- インペラ(Impella)のCPOとは|数値の見方と看護アセスメント
- IABPの合併症|なぜ起きるのか、どう気づくのか
参考にした資料
- 2023年 JCS/JSCVS/JCC/CVIT ガイドライン フォーカスアップデート版 PCPS/ECMO/循環補助用心内留置型ポンプカテーテルの適応・操作(日本循環器学会ほか)── 第1章 6「全身状態評価」(腎・肝・凝固)、8(低灌流の所見、SCAI分類)、第2章 2.4・2.7(右上肢の血液ガス、SvO2)、4.5(IMPELLAのACT、溶血)、第3章 1.1(電解質)
- 2025年改訂版 心不全診療ガイドライン(日本循環器学会・日本心不全学会)── 表22 うっ血と低心拍出の評価(低灌流とうっ血の症状・徴候)
- Nohria A, et al. Clinical assessment identifies hemodynamic profiles that predict outcomes in patients admitted with heart failure. J Am Coll Cardiol 2003; 41: 1797-1804 ── ノーリア・スティーブンソン分類と予後
- Impella テキストブック(2022年版・日本アビオメッド)── 下肢阻血の評価(57ページ)、ICU患者管理のチェック項目(145ページ)、溶血(159ページ)、ウィーニングとエスカレーションの目安・乳酸値の単位(182ページ)
- ELSO Adult and Pediatric Anticoagulation Guidelines(2021)── 検査の間隔の例、溶血と腎障害、抗Xa活性に影響する値
- ELSO General Guidelines v1.4(2017)── 血漿ヘモグロビンの目安、尿の色
- ELSO Interim Guidelines for Venoarterial ECMO in Adult Cardiac Patients(2021)── VA-ECMO中の脈圧の意味
- ELSO Guidelines for Adult and Pediatric Extracorporeal Membrane Oxygenation Circuits(2022)── Dダイマーと血小板の動き、右上肢の動脈ライン(右橈骨動脈が望ましい)
- JSEPTIC CE教材シリーズ「Intra-Aortic Balloon Pumping」(2014)、東海メディカルプロダクツ「TMP IABカテーテル Lightning」添付文書 ── IABP中の血小板・赤血球の減少
※この記事は一般的な情報であり、個別の医療判断に代わるものではありません。基準値・目標値・検査の間隔は施設や検査法によって異なります。必ず主治医・院内の基準にしたがってください。



