インペラの制御装置の画面の下には、ポンプが動いているあいだ、パージ流量とパージ圧がいつも表示されています。補助流量や位置波形にくらべると、目が向きにくい数字かもしれません。けれどもこの2つは、モータを守る仕組みが働いているかどうかを表しています。
パージ液がなぜブドウ糖なのか、どう作るのかはインペラのパージ液に書きました。この記事では、パージ圧とパージ流量の数字の見方と、パージに関わるアラームをまとめます。
※Impella CP SmartAssist/5.5 SmartAssistを前提に、日本アビオメッドのテキストブック(2022年版)をもとにしています。表示や数値は、機種やソフトウェアのバージョンによって異なります。
Q1. パージ圧とパージ流量は、何を表しているのですか?
インペラは、モータをカテーテルの中に内蔵しています。テキストブックは、モータの中に血液が入らないよう、加圧したブドウ糖液をパージ液としてモータに送り、圧のバリアをつくっていると説明しています。これがパージシステムです。

このパージシステムは制御装置が自動で制御していて、パージ圧が300〜1,100mmHgの範囲に保たれるように、パージ流量を自動で調整しています(テキストブック)。
パージ流量は、モータを守るための液の流量です。血液を送る補助流量とは別の数字で、単位もパージ流量はmL/hr、補助流量はL/分です。
パージ液をモータに届けられないと、圧のバリアが働かず、血液がモータに入ってポンプが止まる危険があります。そのため、パージシステムに関するアラームが出たら必ず対処するよう書かれています。
圧は「保ちたい範囲」、流量は「そのために制御装置が調整している量」と読むと、2つの関係がつかみやすいと思います。
Q2. どこで、何を見るのですか?
画面の下の数字のほかに、表示ソフトボタンから次の2つの画面を開けます。
- パージ流量・圧 … 2つの値を、時間の流れにそったグラフで表示します。グラフの右には、いまの値が出ます
- パージ液履歴 … 過去8時間について、1時間ごとのブドウ糖液・ヘパリン・ブドウ糖の供給量を表示します
テキストブックのICU患者管理のチェック項目には、次の2つがあります。
- パージ流量・圧を経時的に確かめ、大幅な増減がないかを見る。増減があれば、パージシステムやポンプカテーテルに不具合がないかを確かめる
- パージ液履歴の画面で、パージ液・ブドウ糖・ヘパリンの投与量を確かめ、院内のルールに従って水分出納に反映する
見るのは、いまの値が範囲に入っているかだけではありません。いつから、どう変わってきたかも確かめます。
Q3. パージのアラームには、どんなものがありますか?
テキストブックのアラーム一覧で、パージ圧とパージ流量に関わるものは4つです。どれも緊急アラームに分類されています。
| アラーム | 出る条件 | テキストブックが挙げている原因 |
|---|---|---|
| パージ圧 低下 |
パージ圧が300mmHg未満に下がり、パージ流量が30秒以上、30mL/hr以上 | 液漏れや接続不良/ブドウ糖液の濃度が低い |
| パージシステム 液漏れ |
パージ圧が20秒以上、100mmHg未満 | 液漏れや接続不良/パージカセットの故障 |
| パージ圧 上昇 |
パージ圧が1,100mmHg以上、パージ流量が2mL/hr未満 | どこかの折れ曲がり/ブドウ糖液の濃度が高い |
| パージシステム 閉塞 |
パージ流量が1mL/hr未満 | ラインの閉塞や折れ曲がり/カテーテルのパージ用チューブの閉塞や折れ曲がり |
圧が下がって流量が増えたら、まず漏れや接続不良を確かめます。漏れが見つからなければ、ブドウ糖液の濃度も確かめます。圧が上がって流量が減ったら、まず折れ曲がりを確かめ、見つからなければ同じように濃度を確かめます。
下の図の「液が逃げている」「液が通りにくい」は、覚えるための目安です。ブドウ糖液の濃度の影響でも、同じ動きになることがあります。

※この図は保存して使えます(スマホは長押し、パソコンは右クリック)。
アラームが出たら、まず患者さんの状態と補助流量を確かめます。そして、アラーム名、パージ圧・パージ流量、出た時刻、直前に変わったこと(体位変換やパージ液の交換など)を、医師・臨床工学技士へ速やかに共有します。
ここからの対処の順番は、テキストブックに書かれているものです。ブドウ糖液の濃度の変更やパージ用セットの交換は、医師・臨床工学技士と相談し、院内の手順に沿って行います。
パージ圧 低下のとき
テキストブックの対処は、次の順番です。
- 接続部から液漏れがないかを確かめる。パージ用ラインの黄コネクタやブドウ糖用サイドアームなど、緩んでいる接続はしっかり締める
- 漏れがなければ、パージ液を濃度の高いブドウ糖液に交換する(パージメニューの「パージ液の交換」)
- パージ圧が安定すれば、それ以上の操作はいらない
- 20分以上たってもアラームが消えなければ、パージカセットの問題が疑われるので、パージ用セットを交換する(パージメニューの「パージシステムの交換」)
「20分以上」は、何もせずに待ってよい時間ではありません。1と2の確認を進めながら、医師・臨床工学技士と共有します。
パージシステム 液漏れのとき
- 接続部、パージカセット、パージ圧トランスミッタなどから液漏れがないかを確かめ、緩んでいる接続を締める
- 見える漏れがなくても、パージ用セットの問題が疑われるので、パージ用セットを交換する
パージ圧 上昇・パージシステム 閉塞のとき
2つの対処は、ほぼ同じです。
- ブドウ糖液のバッグからパージ用セット、ブドウ糖用サイドアーム、カテーテルシャフトまで、折れ曲がりがないかを確かめる。体外のラインに折れ曲がりがあれば、院内の手順に従って解除する
- 折れ曲がりがなければ、使っているブドウ糖液の濃度を確かめる。高い濃度を使っていれば、濃度の低いブドウ糖液への交換を検討する
- 解消しなければ、パージ用セットを交換する
- モータ消費電流が上がっていないかを見張る
テキストブックでは、使えるブドウ糖液の濃度は5〜40%で、推奨は5%とされています。濃度を下げる対処は、5%より高い濃度を使っている場合の話です。
テキストブックがとくに注意を促しているのは、パージ用フィルタとカテーテルプラグのあいだのブドウ糖用サイドアームと、カテーテルシャフトの折れ曲がりです。体の中に入っているカテーテルシャフトで折れ曲がりが起きている可能性もある、とされています。
体の中のカテーテルの折れ曲がりが疑われるときは、自分では動かさず、医師・臨床工学技士に連絡します。添付文書は、カテーテルの位置調整などは心臓イメージング(X線透視、心エコー)のもとで行うこととしています。
4つ目のモータ消費電流は、テキストブックの「設計上の想定使用期間」のページにも出てきます。経時的なモータ消費電流の上昇がポンプ停止の可能性を示す場合がある、として、補助レベルごとの値が載っています。
この表の値は、安全域でも、対応を始める基準でもありません。添付文書は、モータ消費電流を適宜確認し、上昇傾向が確認される場合に、ポンプの交換や他の治療への移行などの処置を検討するよう求めています。値に達するのを待たず、上昇傾向に気づいたら医師・臨床工学技士と共有します。
| 補助レベル | CP SmartAssist(mA) | 5.5 SmartAssist(mA) |
|---|---|---|
| P1 | 500 | 530 |
| P2 | 690 | 620 |
| P3 | 740 | 690 |
| P4 | 810 | 740 |
| P5 | 880 | 800 |
| P6 | 940 | 870 |
| P7 | 1,050 | 950 |
| P8 | 1,130 | 1,030 |
| P9 | 1,200 | 1,190 |
上昇は、上がり始めてから数時間でこの値に近づくこともあれば、数日かけて上がっていくこともあり、稼働の条件によって大きく違う、とされています。
アラーム音を止めたとき
パージ圧 上昇とパージシステム 閉塞のアラームは、画面の表示を残したまま、音だけをオフにできます。ただしテキストブックは、アラームが解除されても、アラーム音オフは自動では解除されないと注意しています。音を止めたら、オンに戻すところまでをひとつの作業として覚えておきたいところです。
Q4. 流量の変化や、パージ液の残量はどう確かめますか?
緊急アラームとは別に、パージ流量の変化や、パージ液の残量を知らせるメッセージがあります。重大度はそれぞれ違い、別々の条件で出ます。
| メッセージ | 重大度 | 出る条件 |
|---|---|---|
| パージ流量 増加・減少 |
注意 | パージ流量が2.5mL/hr以上増えた、または減った。画面には「これは通知のみで、対応の必要はありません」と出る |
| パージ液 残量低下 |
注意 | パージ液バッグの残量が30mL(+開始時のバッグ容量の5%)未満 |
| パージ液 残量わずか! |
警戒 | パージ液バッグの残量が15mL(+開始時のバッグ容量の5%)以下 |
500mLのバッグなら、計算すると、残量低下は55mL未満、残量わずかは40mL以下で出ることになります。
流量の増減の通知は、対応の必要はないとされています。それでも、チェック項目にある「大幅な増減がないか」をグラフで見直すきっかけにはなると思います。
残量のメッセージが出たら、パージメニューの「パージ液の交換」で新しいバッグに替えます。テキストブックによると、パージ液の交換中は、パージ圧を保てるように圧リザーバからパージ液が供給されます。
Q5. パージ液から入るヘパリンは、どう考えるのですか?
パージ液にはヘパリンを入れます。テキストブックの推奨は、ブドウ糖液1mLあたりヘパリン50単位で、患者の状態に応じて調整するとされています。
テキストブックは、補助中のACTの目標を160〜180秒とし、患者に入るヘパリンの量はパージ液からの量と、点滴からの量の合計になることに注意するよう書いています。パージ液からのヘパリンが、ACTを保つのに必要な量の大部分を占めることもあり、それを考えに入れないと抗凝固が強くなりすぎて、アクセス部位からの出血が増えるおそれがある、とされています。
パージ流量が変われば、時間あたりに入るヘパリンの量も変わります。たとえば、ヘパリン濃度が50単位/mLのパージ液では、パージ流量が10mL/hrなら1時間に500単位、20mL/hrなら1,000単位がパージ液から入る計算です(仕組みを説明するための計算例で、投与量の目安ではありません)。1時間ごとの量は、パージ液履歴の画面で確かめられます。ヘパリン全体の考え方は補助循環中のヘパリンに書きました。
Q6. パージで、ほかに出るアラームは?
パージ圧とパージ流量のほかにも、パージシステムに関わる緊急アラームがあります。
- パージシステム エア混入 … ライン内にエアが混入して、パージシステムが停止した。パージメニューからエア抜きを行う
- パージ圧トランスミッタ 装着不良 … トランスミッタが、制御装置の前面のスロットに「カチッ」と音がするまで差し込まれていない
- パージシステム 故障 … パージカセットか制御装置の異常。指示は、パージ用セットの交換と、制御装置の交換
- 制御装置故障(パージシステムが停止しました) … 制御装置がパージ圧センサの異常を検知して、パージシステムが停止した。制御装置を交換する
患者の補助中は、予備の制御装置を常に用意しておくことも求められています。
まとめ ── この4つ
- 制御装置は、パージ圧が300〜1,100mmHgに保たれるよう、パージ流量を自動で調整している
- 圧が下がって流量が増えるなら漏れを、圧が上がって流量が減るなら折れ曲がりや閉塞を先に確かめる
- 体の中のカテーテルシャフトの折れ曲がりもありうる。上昇・閉塞のときは、モータ消費電流も見る
- ヘパリンは、パージ液と点滴の合計で考える。1時間ごとの量はパージ液履歴で見られる
わたしは、看護が好きです。
だからこそ、看護の価値を問い続けていたいと思っています。
画面の「圧」とは別に、ベッドサイドにも「圧」があります。それについて書いた記事です。→ 看護師の「圧」の正体|患者を緊張させない関わり方
補助循環の記事を、まとめて読む
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参考にした資料
- Impella テキストブック(2022年版・日本アビオメッド)── パージシステムの役割と仕組み・構成品(116〜118ページ)、パージシステムに関する手順(119〜120ページ)、制御装置による自動制御とパージ流量・圧の確認方法(130〜131ページ)、パージシステムのトラブルシューティング(132〜139ページ)、ヘパリン投与による抗凝固療法(140ページ)、アラーム音オフ機能(142〜143ページ)、ICU患者管理のチェック項目(148〜149ページ)、モータ消費電流(163ページ)、アラームメッセージの概要(168〜174ページ)
- IMPELLA補助循環用ポンプカテーテル(IMPELLA CP SmartAssist)添付文書(2025年10月 第7版)── ヘパリン加ブドウ糖注射液、推奨ヘパリン濃度とACTの目標、モータ消費電流の上昇傾向への対応、位置調整は心臓イメージング下で行うこと
- IMPELLA5.5補助循環用ポンプカテーテル 添付文書(2025年1月 第4版)── モータ消費電流の上昇傾向への対応、位置調整は心臓イメージング下で行うこと
※この記事は一般的な情報であり、個別の医療判断に代わるものではありません。表示や数値は機種・ソフトウェアのバージョンによって異なります。パージ液の濃度の変更やパージ用セットの交換、アラームへの対応は、必ず取扱説明書と、主治医・臨床工学技士・院内の基準にしたがってください。



