IABPのトリガー|心電図と圧、どちらを使うのか

記事「IABPのトリガー|心電図と圧、どちらを使うのか」のアイキャッチ画像。胸に貼られた心電図の電極とリード線が写り、背景にICUのモニターが見える。 🌿補助循環・ICUの看護

IABPの画面に「ECG」や「PRESSURE」といった表示があるのを見たことがあるでしょうか。

これはトリガーといって、バルーンを動かすときの「合図」に何を使っているかを示しています。

この設定を看護師が変えることは、ほとんどありません。でも意味を知っておくと、なぜ電極を丁寧に貼るのかまで分かってきます。

Q1. トリガーとは何ですか?

バルーンをふくらませたり、しぼませたりするタイミングを、何を合図に決めるかということです。

IABPは心臓の動きに合わせて動く機械です。だから「今、心臓が収縮した」という情報が要ります。

その合図に使えるものが、2つあります。

  • 心電図(R波を合図にする)
  • 動脈圧波形(収縮期の立ち上がりを合図にする)

そして、どちらも使えないときのために、インターナルというモードがあります。

心電図・動脈圧波形・バルーンの動きを、時間軸をそろえて3段に並べた図。心電図トリガーはR波を、圧トリガーは収縮期の立ち上がりを合図にしている。どちらの場合も、バルーンが拡張を始めるのはディクロティックノッチの位置。R波は合図であり、拡張が始まるのはそのあとのノッチのところで、合図と動きは同時ではない。
図:心電図トリガーはR波を、圧トリガーは収縮期の立ち上がりを合図にしています。どちらの場合も、バルーンがふくらみ始めるのはディクロティックノッチのところです。(検出のしかたは機種によって異なります)

Q2. 原則は「心電図」です

ここが、この記事でいちばん大事なところです。

タイミングそのものは動脈圧波形を見ながら合わせます。でもトリガー源は、可能な限り心電図に同期させるとされています。

「どちらでもいい」ではありません。原則があります。

なぜ心電図なのか

理由は、不整脈が起きたときに、バルーンと心臓がぶつからずに済むかどうかにあります。

心房細動などでは、R波が不規則に、早いタイミングで出ることがあります。

心電図トリガーなら、その早期のR波を検出したときに、バルーンの拡張と心臓の収縮が重ならないよう、バルーンを収縮させる動きが働きます。

ところが圧トリガーでは、こういうことが起こりえます。

バルーンがふくらんでいるときに不整脈が起きると、その収縮期圧がオーグメンテーション圧に隠れてしまい、この「重ならないようにする働き」が作動しないことがある。

つまり、バルーンの拡張と心臓の収縮が重なってしまう危険があります。これは心臓にとって、いちばん避けたいことです。

だから圧トリガーは、適切な心電図信号がある状態で使うものではないとされています。

Q3. では、圧トリガーはいつ使うのですか?

心電図が得られないときです。

代表的なのは、電気メスなどのノイズで心電図が拾えない場面。手術中がこれにあたります。

原則は心電図。でも心電図が使えないなら、圧を使う。そういう順番です。

Q4. 心電図トリガーが、うまく働かないとき

心電図トリガーにも弱点があります。

R波の波高が低いときや、P波・T波の波高がR波と近いとき、機械がR波をうまく認識できないことがあります。

そんなときの対処は2つです。

  • 有効なR波が確認できる誘導に変更する
  • 適切な誘導がなければ、心電図電極の貼付位置を変更する

どちらも、看護師が関われるところです。

機種によっては、モードがあります

心電図トリガーには、機種によって複数のモードが用意されています。

  • 通常のR波を認識するモード
  • 心房細動や期外収縮でR-R間隔が不規則なときに使う不整脈モード
  • ペースメーカーのペーシングパルスの認識に適したペーシングモード

患者さんの状態に合ったモードが選ばれているか。ここも、知っていると見え方が変わります。

Q5. インターナルトリガー ── どちらも使えないとき

心電図も圧も合図に使えないとき、インターナルというモードがあります。

これは患者さんの心拍とは関係なく、決まったペースでバルーンを動かすものです。

使われるのは、心停止のときや、心臓の手術中など、そもそも合図になる心臓の動きがない場面です。

ここで押さえておきたいことがあります。

IABPの効果は、心臓の拡張期に膨らみ、収縮の直前にしぼむことで生まれます。心臓が動いていなければ、合わせる相手がいません。

つまりインターナルは、本来の意味での拡張期増強や後負荷軽減が働いている状態ではありません。あくまで、大動脈の中に流れを作っておくための一時的な手段です。

だから、インターナルになっているということ自体が、患者さんの状態が良くないという情報でもあります。

Q6. IABPが正常に働きやすい状態とは

ここまで読んで、気づいたことがあるかもしれません。

IABPは、合図をきちんと拾えて初めて、正しいタイミングで動きます。

逆に言えば、「合図を拾いやすい状態を保つこと」が、IABPを働かせることそのものです。

では、どんな状態なら拾いやすいのでしょうか。

① 心電図がきれいに出ていること

R波がはっきりしていて、P波やT波と区別がつく状態です。

電極が浮いていないか、皮膚が乾いていないか、体動やほかの機器による電気的なノイズが入っていないか。こうしたことがトリガーミスの原因になります。

② リズムが規則的であること

心房細動や期外収縮が多いと、タイミングが乱れます。

③ 心拍が速すぎないこと

心拍が速いと、拡張と収縮の間隔が近くなり、バルーンの動きが追いつかなくなります。

④ ペーシングと自己脈が混ざっていないこと

ペーシングによる心拍と自己脈が混ざると、タイミングが乱れます。機種によってはペーシングモードを使います。

⑤ 信号が直接入っていること

外部のモニタを経由してIABPに信号を取り込むと、伝わるのが遅れてタイミングがずれることがあります。可能なら、生体信号を直接IABP本体に入れます。

この中に、看護師が守れるものがあります

電極を貼り替える。皮膚を整える。体動を減らす。配線がどこを経由しているか確かめる。

どれも地味な作業です。でもこれは、機械のお世話ではありません。

IABPを効かせるための看護です。

電極1枚の浮きが、バルーンのタイミングを狂わせることがある。そう思うと、貼り方が変わってきます。

Q7. 看護師は、何を見て、何を報告するのか

トリガーの設定を変えるのは、臨床工学技士や医師です。看護師が数値をいじる場面はほとんどありません。

でも、気づいて伝えるのは看護師です。

こんなときは、報告する場面です。

  • トリガー不良のアラームが鳴っている
  • 波形がいつもと違う、拡張のタイミングがずれて見える
  • 不整脈が増えてきた、心拍が速くなってきた
  • 電極を貼り替えても心電図がきれいにならない
  • インターナルになっている理由が分からない

「なんとなくおかしい気がします」でもかまいません。そこから確認が始まります。

おわりに

トリガーは、看護師が設定する項目ではありません。

それでも、原則が心電図であること。圧トリガーでは、不整脈のときにバルーンと心臓がぶつかる危険があること。インターナルは心臓が動いていないときの手段であること。

これを知っていると、画面の表示がただの英字ではなくなります。

そして何より、電極を丁寧に貼ることが、この治療の一部だと分かります。

IABPそのものの仕組みや観察ポイントは、IABP看護Q&Aガイド|仕組み・観察・トラブル対応まとめにまとめています。

波形の読み方は、IABPの波形の見方|正常はV、遅いとW、早いとUをどうぞ。

わたしは、看護が好きです。
だからこそ、看護の価値を問い続けていたいと思っています。

※この記事は一般的な情報であり、個別の医療判断に代わるものではありません。トリガーやモードの設定・変更は、必ず主治医・臨床工学技士・院内の基準にしたがってください。機種によって名称や機能が異なります。