IABPのトリガー|心電図と圧、どちらを使うのか

記事「IABPのトリガー|心電図と圧、どちらを使うのか」のアイキャッチ画像。胸に貼られた心電図の電極とリード線が写り、背景にICUのモニターが見える。左側に「補助循環・ICUの看護」「IABPのトリガー」「心電図と圧、どちらを使うのか」の文字。 🌿循環・補助循環の看護

IABPの画面に「ECG」や「PRESSURE」といった表示があるのを見たことがあるでしょうか。

これはトリガーといって、バルーンを動かすときの「合図」に何を使っているかを示しています。

トリガーの設定や変更は、院内の手順と医師の指示に従って行われます。看護師がどこまでかかわるかは施設によって違いますが、意味を知っておくと、なぜ電極を丁寧に貼るのかまで分かってくると思います。

※臨床工学技士向けの教育資料(JSEPTIC、2014年)、日本で販売されているIABP駆動装置8機種の添付文書、メーカーの資料、日本循環器学会のガイドラインをもとにしています。トリガーの名前や選び方は、機種によって異なります。

Q1. トリガーとは何ですか?

メーカーの資料では、トリガーは「次の心周期が始まったことを、装置が見分けるための信号」と説明されています。装置はこの合図を受け取ると、バルーンがまだしぼんでいなければ、しぼませます。

合図に使われる主なものは、2つです(教育資料)。

  • 心電図(R波を合図にする)
  • 動脈圧波形(収縮期の立ち上がりを合図にする)

機種によっては、ペースメーカーの刺激を合図にするモードや、心拍に同期しない「インターナル」というモードもあります(Q5・Q6)。ガイドライン(2023年)にも、心電図や血圧に同期して動かす仕組みが装置に内蔵されている、と書かれています。

心電図・動脈圧波形・バルーンの動きを、時間軸をそろえて3段に並べた図。心電図トリガーはR波を、圧トリガーは収縮期の立ち上がりを合図にしている。どちらの場合も、バルーンが拡張を始めるのはディクロティックノッチの位置。R波は合図であり、拡張が始まるのはそのあとのノッチのところで、合図と動きは同時ではない。
図:心電図トリガーはR波を、圧トリガーは収縮期の立ち上がりを合図にしています。どちらの場合も、バルーンがふくらみ始めるのはディクロティックノッチのところです。(検出のしかたは機種によって異なります)

R波は「合図」で、バルーンがふくらみ始めるのは、そのあとのディクロティックノッチのところです。合図と動きは、同時ではありません。

Q2. 原則は「心電図」です

教育資料では、タイミングは動脈圧波形を見ながら合わせ、そのあとのトリガーは可能な限り心電図に同期させる、とされています。メーカーの資料でも、適切なR波があるときは、心電図が第一の選択とされています。

なぜ心電図なのか

理由は、不整脈が起きたときに、心臓の収縮とバルーンの拡張が重ならずに済むかどうかにあります。

心臓が血液を送り出すときにバルーンがふくらんだままだと、血液を押し出す抵抗が増え、心臓の負担になります。心臓の収縮とバルーンの拡張が重ならないことが大切です(教育資料)。

心房細動などでは、R波が不規則に、早いタイミングで出ることがあります。心電図トリガーなら、その早いR波を見つけたときに、重ならないようバルーンをしぼませる安全機構が働きます。

ところが動脈圧トリガーでは、バルーンがふくらんでいるときに早い不整脈が起きると、その収縮期の圧がオーグメンテーション圧に隠れてしまい、安全機構が働かない危険がある、とされています。

そのため教育資料では、動脈圧トリガーは、適切な心電図信号がある状態で使うトリガー源ではない、とされています。

日本で販売されている駆動装置の添付文書を見ると、複数のメーカー(テレフレックスのARROW AC3・AutoCAT2、ゲティンゲのCARDIOSAVE)で、心房細動や頻脈性の不整脈のときは、動脈圧トリガーを避けるよう書かれています。動脈圧の波形が不規則になり、誤った情報でバルーンを動かすと、補助の効果を妨げるだけでなく、重い結果を招くおそれがあるためです(テレフレックス)。

機種や運転モードによる違い

自動の運転モードでは、信号の質を見ながら、心電図と動脈圧を自動で切り替える機種もあります(CARDIOSAVE)。トリガーの選び方や切り替えの仕組みは、機種と運転モードによって違います。使っている装置の説明書と、院内の手順を確認してください。

Q3. では、圧トリガーはいつ使うのですか?

適切なR波が得られないときです。教育資料では、電気メスなどのノイズで心電図が得られないときに動脈圧トリガーを選ぶ、とされています。メーカーの資料では、規則的なリズムのときの選択肢とされています。

手術室で、外部のベッドサイドモニターから心電図をIABPに送るときは、電気メスのノイズを取り除く機能があるものを使う、と書かれている機種もあります(ゲティンゲのCARDIOSAVE)。

ただし、電気メスや除細動器を使うときの対応は、機種によって違います。ゼオンメディカルのIABPコンソールZUIRYUの添付文書では、心電図にノイズが入ってタイミングがずれることがあるので、駆動を止めて使う、とされています。使っている装置の説明書と院内の手順を確認してください。

VA-ECMO(PCPS)と一緒に使うとき

ゼオンメディカルのZUIRYUの添付文書には、PCPSなど、ほかの補助循環と一緒に使うときは、患者さんの収縮期圧が下がって拡張期圧との差が小さくなり、血圧トリガーがかかりにくくなることや、タイミングがずれることがある、と書かれています。そのため、できるだけ血圧トリガーを避け、心電図トリガーで動かす、とされています。

VA-ECMOと一緒に使っているときこそ、心電図をきれいに拾うことが大切になると思います。

圧の波形がなまっていると

動脈圧トリガーやタイミングの確認には、きれいな圧の波形が必要です。教育資料では、バルーン先端の圧以外(橈骨動脈の圧など)や、ほかのモニターから圧を入れるとタイミングが遅れることがある、圧の波形がなまっていると、ちょうどよいタイミングの設定や確認が難しくなる、とされています。

対策として、バルーン先端の圧を直接本体に入れる、圧ラインをフラッシュする、ラインをできるだけ短くする、などが挙げられています。

駆動装置の添付文書には、動脈圧トリガーのときに、バルーンの拡張と心臓の駆出が重なると、トリガーが遅れたり、トリガーミスが起きたりして、同期がとれなくなる可能性がある、とも書かれています(ゲティンゲ)。血圧トリガーでは、拡張を長く設定すると次の心室の収縮にかぶるおそれがあるので、収縮を始める点を早めに設定する、とする機種もあります(ゼオンメディカル)。

Q4. 心電図トリガーが、うまく働かないとき

R波の波高が低いときや、P波・T波の波高がR波と近いとき、装置がR波をうまく認識できないことがあります(教育資料)。

そんなときの対処は2つです。

  • 有効なR波が確認できる誘導に変更する
  • 適切な誘導がなければ、心電図電極の貼る位置を変更する

駆動装置の添付文書には、画面の心電図は自動で拡大して表示されるので、実際の振幅が小さくても、ふつうの大きさに見えることがある、とも書かれています。生体信号が装置の求める最低の振幅に満たないと、動作が不正確になる場合がある、とされています。画面の見た目だけでは判断しにくいことがある、ということだと思います。

機種によっては、モードがあります

心電図トリガーには、機種によって違いはありますが、いくつかのモードがあります(教育資料)。

  • 通常のR波を認識するモード
  • 心房細動や期外収縮などで、R-R間隔が不規則なときに使う不整脈モード
  • ペースメーカーのペーシングパルスの認識に適したペーシングモード

適切に同期できるモードが選ばれていることが大切、とされています。

不整脈用のモードでは、バルーンがしぼむタイミングが遅くなり、心拍出が損なわれることがあるので、血行動態を慎重に観察する、と書かれている機種もあります(テレフレックスのARROW AC3・AutoCAT2)。モードが変わったときは、血圧や波形の変化にも気をつけたいところです。

Q5. インターナル ── 心拍に同期しないモード

インターナルは、患者さんの心拍に同期せず、装置が決まった回数でバルーンを動かすモードです。CARDIOSAVEでは、初期の設定は80回/分で、40〜120回/分の範囲で変えられます(メーカーの資料)。

メーカーの資料では、インターナルを使うのは、人工心肺中や心静止など、心臓の機械的な拍動がない場面だけとされています。

ゲティンゲの駆動装置(CARDIOSAVE、CSシリーズ)の添付文書の警告には、患者さんに自己拍があり、心臓が血液を送り出しているときは、インターナルを使わないと書かれています。心拍と関係なくバルーンが動くため、心臓の負担が増えるおそれがあるからです。

つまりインターナルは、電極が外れて心電図が取れない、といった「信号が取れない」理由だけで選ぶモードではありません。

心肺蘇生のときも、添付文書では、できれば心電図トリガーか動脈圧トリガーを使うよう書かれています。胸骨圧迫の速さとリズムに合わせやすいためです。心電図でも動脈圧でも確実に合図が拾えないときに、装置の内部の時計で動かす、とされています。

看護師が見ておきたいこと

インターナルになっているときは、なぜこのモードを使っているのかを確認しておくことが大切だと思います。手術中など、計画的に使われている場面もあります。

そのうえで、インターナルなのに、心電図や動脈圧の波形に自分の拍動が見えるときは、すぐに医師・臨床工学技士へ伝えます。添付文書が使わないよう警告している状態にあたる可能性があるからです。

Q6. ペースメーカーを使っているとき

教育資料では、ペーシングと自分の心電図が混ざると、タイミングが乱れることがある、とされています。対策として、出る割合の多いほうにバルーンの拡張のタイミングを合わせ、心臓の収縮期にバルーンの拡張が入り込まないようにする、機種によってはペーシングモードを使う、と書かれています。

ただ、ペーシング用のトリガーの使用条件は、機種によって違います。たとえばCARDIOSAVEの心室ペーシング用のトリガーは、心電図でも動脈圧でもうまくいかないときに使うもので、100%心室ペーシングであることが条件とされています(メーカーの資料)。「ペーシングがあるから専用のモード」とは限りません。

ペーシングの波形と自己脈が混ざっているときは、装置がそれぞれの拍動を正しく認識して、同期できているかを見ます。

また駆動装置の添付文書には、ペースメーカーを使っている患者さんでは、心停止や不整脈が起きていても、ペースメーカーの刺激を心拍として数えてしまう場合があるので、特に注意して監視する、と書かれています。画面の心拍数だけでなく、動脈圧の波形や患者さんの様子もあわせて見ることが大切だと思います。

Q7. 合図を拾いやすい状態を保つ

IABPは、合図をきちんと拾えて初めて、正しいタイミングで動きます。教育資料には、トリガーミスの原因と対策として、次のものが挙げられています。

原因対策
心電図の質が低い(電極の外れや位置、誘導、体動、ほかの医療機器による交流障害など)電極の状態に注意し、電極の貼り替えや誘導の変更を行う
不整脈できる限り薬などで発生を抑える。効果が減っても心臓の負担にならないよう、タイミングを調整する
ペースメーカー出る割合の多いほうにタイミングを合わせる。機種によってはペーシングモードを使う(Q6)
外部のモニターを経由した信号伝わるのが遅れて、タイミングがずれることがある。生体信号を直接IABP本体に入れる
JSEPTIC CE教材(2014年)の記載をもとに作成

心拍数については、ゲティンゲ社のIABカテーテルの添付文書に、心拍数が140回/分を超えると、バルーンが十分に拡張しない可能性があると書かれています。

トリガー不良のアラームのとき

教育資料では、トリガー不良のアラームは「トリガーに使う生体信号が、適正な状態で入力されていない」という意味とされ、次の確認と対処が挙げられています。

  • 心電図の信号を、装置本体に入れる
  • 電極を貼るときは、皮膚の表面をアルコール綿などで前処理する
  • R波が大きく出る誘導を選ぶ
  • 患者さんが覚醒しているときは、体動に注意する
  • 電極がはがれていないか確認し、確実に固定する
  • 波形のゲイン(大きさ)の調整が適切か確認する
  • 電気メスを使っているときは、血圧トリガーにする

注意点として、一定時間ごとに、収縮と拡張のタイミングを監視し、調整することも挙げられています。

駆動装置の添付文書にも、心電図の入力が弱い・不安定なときは、アルコール綿で皮膚の表面の汚れや皮脂をふき取り、電極を貼り替えたり、貼る位置を変えたりすると、安定することがある、と書かれています(ゼオンメディカル)。

看護師が守れるもの

電極が浮いたり外れたりしていないか。電極のゲルが乾いていないか。汗などで粘着が弱くなっていないか。体動はどうか。配線がどこを経由しているか。

どれも地味な作業です。でもこれは、機械のお世話ではなく、IABPを効かせるための看護だと思います。

電極1枚の浮きが、バルーンのタイミングを狂わせることがある。そう思うと、貼り方が変わってきます。

Q8. 看護師は、何を見て、何を報告するのか

設定の変更は、院内の手順と医師の指示に従って行います。看護師は、患者さんの状態と同期の状況を観察し、異常があれば速やかに医師・臨床工学技士へ伝えます。

たとえば、こんなときです。

  • トリガー不良のアラームが鳴っている
  • 波形がいつもと違う、拡張のタイミングがずれて見える
  • 不整脈が増えてきた、心拍が速くなってきた
  • 電極を貼り替えても、心電図がきれいにならない
  • インターナルになっている理由が分からない、またはインターナルなのに自分の拍動が見える
  • ペーシングと自己脈が混ざっていて、同期できているか分からない

アラームや波形の変化に気づいたら、同時に、患者さんの血圧や意識などに変化がないかも見て、あわせて伝えます。

「なんとなくおかしい気がします」でもかまいません。そこから確認が始まります。

おわりに

トリガーの設定そのものは、施設の手順に沿って行われるものです。

それでも、原則が心電図であること。動脈圧トリガーでは、不整脈のときに心臓の収縮とバルーンの拡張が重なる危険があること。インターナルは、心臓の拍動がない場面のためのモードであること。

これを知っていると、画面の表示がただの英字ではなくなります。

そして何より、電極を丁寧に貼ることが、この治療の一部だと分かってくると思います。

IABPそのものの仕組みや観察項目は、IABPの看護と観察項目|仕組み・合併症・トラブル対応をQ&Aで整理にまとめています。

タイミングの見方はIABPモニターの見方|拡張・収縮のタイミングとバルーン内圧波形、アラームが鳴ったときはIABPのアラーム対応早見表|原因と最初にやることをどうぞ。

わたしは、看護が好きです。
だからこそ、看護の価値を問い続けていたいと思っています。

参考にした資料

  • JSEPTIC CE教材シリーズ「Intra-Aortic Balloon Pumping」(2014年)── トリガーについて(心電図・動脈圧、可能な限り心電図、電気メス、R波が認識できないとき、心電図トリガーのモード)、生体情報信号の入力方法、トリガーミスの原因と対策、トリガ不良アラーム
  • 大動脈内バルーンポンプ CARDIOSAVE 添付文書(ゲティンゲグループ・ジャパン、2026年7月 第7版)── 警告(インターナルトリガー)、重要な基本的注意(外部モニター、ペースメーカー、動脈圧トリガー、心肺蘇生時、心電図の自動拡大表示)、トリガー検知の仕様
  • 日本で販売されているIABP駆動装置8機種の添付文書(PMDA、2026年10月時点の最新版)── ARROW 大動脈内バルーンポンプ AC3・アローIABP装置 AutoCAT2シリーズ(テレフレックスメディカルジャパン)、IABPコンソールZUIRYU・ゼメックスIABPコンソール908(ゼオンメディカル)、コラートBP21・BP3(泉工医科工業)、CARDIOSAVE・CSシリーズ(ゲティンゲグループ・ジャパン)
  • Cardiosave IABP Operation Quick Reference Guide(Getinge、ソフトウェアD.03、英語)── 19ページ「Triggers」(トリガーの定義、5つのトリガー源、自動モードでの切り替え)
  • IABカテーテル TRANS-RAY 添付文書(ゲティンゲグループ・ジャパン、2024年3月 第6版)── 心拍数が140回/分を超える場合
  • 2023年 JCS/JSCVS/JCC/CVIT ガイドライン フォーカスアップデート版 PCPS/ECMO/循環補助用心内留置型ポンプカテーテルの適応・操作(日本循環器学会ほか)── 第2章 1.2「駆動方法」

※この記事は一般的な情報であり、個別の医療判断に代わるものではありません。トリガーやモードの設定・変更は、必ず主治医・臨床工学技士・院内の基準にしたがってください。機種によって名称や機能が異なります。

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