Q1. そもそも「離脱できる」とは、どういう状態?
インペラは心臓の代わりをし続ける機械ではなく、心臓が回復するまでの「橋渡し」です(基本のおさらいはこちらの記事へ)。 心臓が自分の力を取り戻してきたサインには、こんなものがあります。- カテコラミン:少量で血圧を維持できている
- 平均血圧(MAP):サポートを下げても保てる
- 尿量:保たれている
- 乳酸値:上がってこない
- 心エコー:心機能の改善が確認できる
Q2. ウィーニングは、一般的にどうやって進める?
「よし、離脱できそう」と判断されても、いきなり抜くわけではありません。一般的には、次のような流れで進みます。- サポートレベル(P-level)を段階的に下げる:一気に最低まで下げるのではなく、血行動態を確認しながら少しずつ。下げ方のペースや刻み方は、施設や症例によって異なります
- 下げるたびに血行動態を評価する:血圧・CPO・尿量・乳酸値など。肺動脈カテーテルが入っていれば、CIやPCWPも合わせて見ます
- 低いサポート(P2程度)で心エコー評価:インペラの助けがほぼない状態で、自己心がどれだけ動けているかを最終確認します
- 問題がなければ抜去へ。崩れたらサポートを戻す:ウィーニングは一方通行ではありません。「いつでも戻れる」ことも、この治療の強みです

Q3. サポートレベルを下げたら、最初の30分で何を見る?
「P-levelを下げます」——その瞬間から、あなたの観察が始まります。- 平均血圧(MAP)の推移:下げた直後の値だけでなく、その後の「傾向」を見る
- 動脈圧波形:自己心の拍出による拍動がしっかり出ているか
- CPO:心臓が自分で仕事をできているかの指標(見方はCPO編で詳しく)
- 患者さん自身:意識、呼吸、皮膚の冷感・湿潤、表情の変化
Q4. 「離脱できそうにない」サインとは?
下げてみたけれど、心臓がまだ準備できていないこともあります。- MAPがじわじわ下がってくる
- 乳酸値が上がり始める
- 尿量が減ってくる
- カテコラミンを増やさないと保てなくなる
- 呼吸苦・冷汗・不穏など、患者さんの様子が変わる
Q5. 抜去はどこで、どうやって行われる?
カテ室で抜くか、ベッドサイドで抜くか。止血は用手圧迫か、圧迫デバイスか。——これは施設や症例によって異なります。 共通する看護師の役割はこの4つです。- 物品の準備(止血・緊急対応の物品を含めて)
- 抜去中・抜去後のモニタリング継続
- 痛みや不安への配慮(鎮痛・声かけ)
- 抗凝固(ヘパリン)の中止時期・ACT確認など、医師指示のタイミングを外さないこと
Q6. 抜去後、今夜の勤務で何を観察する?
ここがこの記事の主役です。インペラが抜けても、看護は終わりません。① 穿刺部——出血と血腫
目に見える出血だけでなく、後腹膜出血を忘れずに。腰背部痛、原因のはっきりしない頻脈や血圧低下、Hbの低下は要注意サインです。② 下肢——虚血のサイン
足背動脈・後脛骨動脈の触知、皮膚の色、冷感、しびれ。必ず左右差で見るのがポイントです。③ 血行動態——インペラなしで保てているか
サポートがなくなった状態で、血行動態をもう一度評価し直します。「抜去できた=安定」ではありません。 では、「インペラなしでも血行動態が保たれている」とは、どのような状態を指すのでしょうか。 ポイントは、血圧という1つの数字ではなく、「全身の臓器に血液が届いているか」を4つの窓から見ることです。
- 血圧・脈拍:カテコラミンが少量(または不要)のまま、MAPが目標値(一般に65mmHg前後以上)を維持できている。頻脈で無理に代償していない
- 脳(意識):意識がはっきりしていて、不穏やぼんやりした様子が出てこない
- 腎臓(尿量):尿量が保たれている(一般的な目安として0.5mL/kg/時以上)
- 末梢と代謝:手足が温かく、冷汗やまだら模様(網状皮斑)がない。乳酸値が上がらず、横ばい〜低下傾向
④ 安静度
床上安静の期間や体位の制限は施設の基準によります。観察の間隔は、抜去直後ほど密に設定しましょう。Q7. 患者さんと家族には、どう声をかける?
機械が外れることは、医療者にとっては回復の証。でも患者さんや家族にとっては、「あの機械がなくなって、本当に大丈夫なの?」という不安の始まりでもあります。 「心臓が自分の力を取り戻してきた証拠ですよ」——そう伝えた上で、外れた後もこれまでと同じように見守っていることを、言葉にして届けたい場面です。🩺 抜去後チェックリスト(保存版)
☐ 穿刺部:出血・血腫(後腹膜出血のサインも)
☐ 下肢:足背・後脛骨動脈の触知、色調、冷感——左右差で
☐ 血行動態:血圧・意識・尿量・末梢の「4つの窓」
☐ 安静度と観察間隔:施設基準を確認、抜去直後ほど密に
☐ 穿刺部:出血・血腫(後腹膜出血のサインも)
☐ 下肢:足背・後脛骨動脈の触知、色調、冷感——左右差で
☐ 血行動態:血圧・意識・尿量・末梢の「4つの窓」
☐ 安静度と観察間隔:施設基準を確認、抜去直後ほど密に
まとめ
- 離脱は「終わり」ではなく、心臓が自分の力に戻っていく過程
- 数値の基準は施設で異なる。でも「傾向を見る」「患者さん全体を見る」はどこでも共通
- 抜去後は、穿刺部・下肢・血行動態・そして患者さんと家族の気持ちまでが観察の範囲
参考文献
- 補助人工心臓治療関連学会協議会「IMPELLA適正使用指針」(最新の改訂版はインペラ部会サイトでご確認ください)
- 日本心臓血管外科学会「重症心不全に対する経皮的デバイス(IABP, ECMO, Impella)」
- PMDA「IMPELLA補助循環用ポンプカテーテル 添付文書」
- 看護roo!「循環補助用心内留置型ポンプカテーテル挿入患者の看護」
わたしは、看護が好きです。
だからこそ、看護の価値を問い続けていたいと思っています。



