IABPのウィニング|いつ、どう減らして、何を見るのか

記事「IABPのウィニング|いつ、どう減らして、何を見るのか」のアイキャッチ画像。窓から光が差し込む明るい病室に、モニターのついた循環補助装置と点滴のラインが静かに置かれている。 🌿補助循環・ICUの看護

IABPが入った患者さんを受け持っていると、いつか必ずこの日が来ます。

機械の助けを、減らしていく日です。

ウィニングは、心臓が回復してきた証でもあります。でも同時に、いちばん慎重に見ていたい時間でもあります。減らした分を、心臓が自分で担えるかどうかを試しているからです。

Q1. ウィニングとは、何をしているのですか?

IABPの助けを、少しずつ減らしていくことです。

ここで大切なのは、ウィニングは「引き算のテスト」だということです。

機械が担っていた分を減らして、その分を心臓が自分で引き受けられるかどうかを見ている。うまくいけば離脱へ進み、うまくいかなければ戻します。

だから看護師が見るのは、「減らした分を、心臓が担えていないサイン」です。ここが分かっていると、何を観察すればいいかがはっきりします。

Q2. いつ始めるのですか?

数値の目安

離脱を考えるときの目安として、こんな数字があります。

  • 収縮期圧が90mmHg以上
  • 肺動脈楔入圧が20mmHg未満
  • 心係数が2.2L/分/m²以上
  • 尿量が30mL/時以上
  • 不整脈が消えている
  • 心不全が落ち着いている

ただし、これらは参考値です。実際は症例や施設の基準によって変わります。

実際に、現場で見ていること

数字がそろえば自動的に始まる、というものでもありません。実際には、こういうところを見ています。

  • 循環動態の変動が小さくなってきた(血圧や心拍が、揺れなくなってきた)
  • 検査データが改善してきた
  • 臓器の状態が改善してきた(尿が出る、意識が戻る、肝機能や腎機能が持ち直す)
  • 薬のサポートで、なんとかなりそうだと見通しが立った

最後のものが、いちばん実際的かもしれません。

IABPを外したあと、患者さんの循環は薬で支えていくことになります。だから「機械がなくても、薬でやっていけそうか」という見通しが、判断の実質的な中身になります。

数字は、その見通しを裏づけるためのものです。

いちばん大事なのは、もとの病気が落ち着いているか

数値よりも先に見られているのが、原因になった病気そのものがコントロールできているかです。

胸部レントゲンや、スワンガンツカテーテルから得られるデータが改善に向かっているか。ここが動いていなければ、数字が一時的にそろっても、離脱は難しいとされています。

カテコラミンは「減らせているか」と「余地があるか」

昇圧薬(カテコラミン)については、使っていない、あるいは少量で済んでいる状態が理想とされています。参考として、ドパミンなら5〜7μg/kg/分以下まで減量してからウィニングを始める、という目安を挙げている資料もあります。

そして、もうひとつ大事な考え方があります。

薬を増やせる余地を残しておくこと。

IABPを抜いたあとに血圧が下がったとき、薬をすでに目一杯使っていたら、打つ手がありません。「まだ増やせる」状態を残しておくことが、抜去後の安全につながります。

現場でいう「薬のサポートでなんとかなりそう」とは、こういうことなのだと思います。

Q3. どうやって減らしていくのですか?

方法は2つあります。

① 補助比率を下げる(こちらが基本)

1心拍ごとに動いていたバルーンを、2心拍に1回に減らしていきます(1:1から1:2へ)。

各段階の目安は4〜5時間とされています。すぐに次へ進むのではなく、その状態で耐えられるかを見る時間です。

さらに1:3まで下げる施設もあります。ここは考え方が分かれるところで、「1:2までしか下げない」という方針もあります。

ただ、1:3まで来ていたら、抜去はすぐそこだと考えてよさそうです。看護師にとっては「そろそろ抜去の準備が要る」という予測につながります。

そして大事な注意があります。

1:2以下の設定にするときは、抗凝固を必ず行う必要があります。

理由は、バルーンが動かない時間が増えるほど、血栓ができやすくなるからです。助けを減らすことと、血栓のリスクが上がることは、同時に起きています。

② バルーンのガス容量を下げる

バルーンの駆動ガス容量を減らしていく、という方法もあります。

ただしこの方法については、バルーンが十分にふくらまない時間が続くと、血液が滞って血栓ができやすくなる、という指摘があります。そのため、補助比率を下げる方法が選ばれることが多いようです。

実際にどちらを使うかは、施設や医師の考え方によります。ガイドラインで方法まで定められているわけではないので、「こういう方法もある」と知っておくのがよさそうです。

だから、1:2はそれ自体が情報です

ウィニングに入るまで、補助比率は1:1が基本です。

つまり、画面が1:2になっていたら、それ自体が「ウィニングが始まった」という意味を持ちます。

設定が変わっているのに気づいたら、なぜ変わったのかを確認する。それも観察の一部です。

「もう機械に頼っていないか」を確かめる

減らす前に、そもそもどれくらいIABPに頼っているのかを確かめる方法があります。

ひとつは、波形を見ることです。

バルーンによる拡張期の山が、自己の圧に埋もれてきているなら、機械の助けは相対的に小さくなってきたということです。逆に、オーグメンテーション圧が高くそびえているうちは、まだ頼っています。

もうひとつは、スタンバイにしてみることです。

IABPを一時的に止めて、自己圧を確認します。30秒以内に血行動態が大きく崩れなければ、離脱に耐えられる可能性が高いと考えられます。

このとき見ているのは、機械の助けを引いたときの患者さん自身の圧です。そこに、心臓の今の力が現れます。

Q4. ウィニング中、看護師は何を見るのですか?

Q1で書いたとおり、見ているのは「減らした分を、心臓が担えていないサイン」です。

具体的には、こういうところです。

循環が悪くなっていないか

血圧が下がってきた。心拍が上がってきた。末梢が冷たくなってきた。尿量が減ってきた。

負荷がかかったと思われるバイタルサインの変化を、ひとつずつ拾っていきます。

心拍出量(CO)が減っていないか

助けを減らした分、心拍出量が保てているか。数字が下がってきているなら、心臓が追いつけていないということです。

乳酸値が上がってきていないか

これは見逃したくない数字です。

血圧が保たれていても、組織に十分な血液が届いていなければ、乳酸は上がってきます。数字の見た目より先に、体が困っていることを教えてくれる指標です。

血液ガスを取ったときは、乳酸値の動きを前回と比べる習慣を持っておきたいところです。

胸痛や心電図の変化がないか

胸痛が出たり、心電図に変化が出たりしたときは、心筋虚血を疑います。

IABPは心筋に届く酸素を増やしていた装置です。その助けを減らしたことで、虚血が出てきたのかもしれません。

この場合は、ウィニングを中止して、補助比率を元に戻します

Q5. 戻すことは、失敗ではありません

ウィニングの途中で状態が悪くなり、1:1に戻すことがあります。

これは失敗ではありません。「まだ早かった」ということが分かった、という結果です。

むしろ怖いのは、悪くなっているのに気づかないまま進めてしまうことです。

そして、その変化にいちばん早く気づけるのは、そばで見ている看護師です。血圧の数字、足の冷たさ、尿量、そして乳酸値。どれも看護師が日々触れているものです。

「なんとなく、さっきより悪い気がします」でかまいません。そこから確認が始まります。

おわりに

ウィニングは、機械を外すための作業ではありません。

心臓が、自分の力を取り戻しているかどうかを確かめる時間です。

助けを少しずつ引いていって、その分を心臓が担えるか。担えていれば進み、担えていなければ戻す。その繰り返しの中で、患者さんは機械から離れていきます。

減らしていく過程を、いちばん近くで見ているのは看護師です。

なお、抜去のときの看護については、別の記事にまとめる予定です。

IABPそのものの仕組みや観察ポイントは、IABP看護Q&Aガイド|仕組み・観察・トラブル対応まとめにまとめています。

補助比率が変わったときの波形の見え方は、IABPの波形の見方|正常はV、遅いとW、早いとUをどうぞ。

わたしは、看護が好きです。
だからこそ、看護の価値を問い続けていたいと思っています。

※この記事は一般的な情報であり、個別の医療判断に代わるものではありません。ウィニングの判断や設定の変更は、必ず主治医・臨床工学技士・院内の基準にしたがってください。数値はいずれも参考値です。