IABPの合併症|なぜ起きるのか、どう気づくのか

記事「IABPの合併症|なぜ起きるのか、どう気づくのか」のアイキャッチ画像。ICUのベッドサイドに、点滴スタンド、輸液ポンプ、波形が表示されたモニターが並び、窓から光が差し込んでいる。 🌿補助循環・ICUの看護

IABPの合併症は、覚えることが多くて大変です。下肢虚血、出血、感染、血小板減少、バルーンの破裂……。並べられると、それだけで気が重くなります。

でも、合併症を知るのは、怖がるためではありません。早く気づくためです。

そして実は、これらの合併症は3つの理由に整理できます。理由が分かると、覚えるリストではなくなります。

Q1. 合併症は、なぜ起きるのですか?

IABPの合併症は、突きつめると次の3つから来ています。

  1. 太い管が、動脈に入っていること
  2. バルーンが、大動脈の中で動いていること
  3. 血を固まりにくくしていること

たとえば下肢虚血は1から、大動脈分枝の血行障害は2から、出血は1と3の両方から起きます。

どの合併症も、この3つのどれかにつながっています。そう考えると、なぜその観察が必要なのかが見えてきます。

Q2. 下肢虚血 ── いちばん見逃したくないもの

理由1(太い管が動脈に入っている)から起きます。

太い管が大腿動脈に入っているので、その先の血流が悪くなることがあります。

見つけ方

  • 足背動脈、後脛骨動脈の拍動が触れにくくなる
  • 冷感、色の変化
  • しびれ、痛み
  • 左右差

ここで手がかりになるのが、左右差です。

循環不全そのものが原因なら、症状は両足に出ます。でもIABPによる下肢虚血なら、挿入している側だけが悪くなります。

「両足とも冷たい」のと「挿入側だけ冷たい」のとでは、意味が違います。左右を比べることが、原因を見分ける手がかりになります。

見つけたら

血行障害が出た場合は、早期の抜去を目指すか、他の部位からの挿入を検討することになります。

つまり、看護師が気づくことが、治療方針を変えることにつながります。

Q3. 出血・貧血・血小板減少

理由1と理由3、そして理由2が重なって起きます。

なぜ血小板が減るのか

IABP中は、血小板や赤血球が減ることがあります。

理由のひとつは、バルーンが大動脈の中で動くときの物理的な作用です。血小板がその力で壊されます(機械的破壊)。

つまり、機械が働いている限り、少しずつ起こり続けることです。

そこに抗凝固が重なる

さらにIABP中は、血栓を防ぐために抗凝固を行います。もともと減っているところに、固まりにくくする薬が入る。だから出血しやすくなります。

抗凝固の目安について、メーカーが定めた推奨値はありません。ACTを150秒前後で管理している施設が多いようですが、施設のマニュアルに従ってください。開胸術後などでは、抗凝固を行わないこともあります。

見るところ

  • 刺入部の出血、血腫
  • ドレーンからの排液
  • 消化管出血の徴候
  • 採血データ(ヘモグロビン、血小板、凝固)

Q4. バルーンの破裂 ── 見つけたら、すぐ報告

理由2(バルーンが動いている)から起きます。

なぜ破れるのか

  • 石灰化した血管との接触で、少しずつ消耗する
  • バルーンが折れ曲がることで、材質が疲労する
  • 挿入時に傷がつく

どれも「時間とともに起こりうること」です。だから、毎日見ることに意味があります。

見つけ方は2つ

ひとつは、カテーテル内への血液の混入です。チューブに血液が見えたら、それは緊急です。

もうひとつは、バルーン内圧の異常です。波形の変化から気づかれることもあります。

見つけたら

すぐに医師を呼びます。速やかな抜去と、再挿入が必要になります。

バルーンが破れると、血液がバルーンの中に入り込み、逆に体の中へヘリウムガスが漏れる可能性があります。だから「様子を見る」ではなく、すぐに動く場面です。

ラインを定期的に見る習慣が、ここで効いてきます。

Q5. 大動脈分枝の血行障害

理由2から起きます。大動脈からは、あちこちに血管が枝分かれしています。その枝の血流が悪くなることがあります。

経路は2つです。

ひとつは、血栓が飛ぶこと。大動脈の中にできた血栓が遊離して、塞栓症を起こします。

もうひとつは、バルーンが物理的に塞ぐこと。バルーンの先端が弓部の分枝を、バルーンの側壁が腹部の分枝を塞ぐ可能性があります。

だから、適切な位置に留置することと、バルーンのサイズを把握しておくことが大切だとされています。

弓部の分枝が塞がれば脳や上肢へ、腹部の分枝が塞がれば腎臓や腹部の臓器へ、血流が届きにくくなります。意識の変化、上肢の左右差、尿量の変化、腹部の症状。そうしたところに現れてくる可能性があります。

バルーンの位置は、体位を変えるだけでもずれることがあります。位置の管理と、この合併症はつながっています。

大動脈の枝とIABPバルーンの位置関係を示した図。大動脈弓からは腕頭動脈・左総頸動脈・左鎖骨下動脈が、腹部大動脈からは腹腔動脈・上腸間膜動脈・腎動脈が枝分かれしている。バルーンは左鎖骨下動脈のすぐ下から腎動脈より上までの、枝のない区間に収まっている。上にずれると大動脈弓の枝を、下にずれると腹部の枝を妨げる可能性がある。
図:バルーンは、枝と枝のあいだの「何もない区間」に収まっています。上にずれれば脳や上肢へ向かう枝を、下にずれれば腎臓などへ向かう枝を妨げる可能性があります。留置位置が大切なのは、このためです。

Q6. 感染と、動脈損傷

感染

理由1から起きます。皮膚を貫いて管が入っているので、そこから細菌が入る可能性があります。

免疫機能が落ちている患者さんや、挿入時の操作によって起こることがあります。刺入部の周囲を観察し、保護することが基本です。

動脈損傷

挿入のときに、シースやガイドワイヤで動脈を傷つけてしまうことがあります。

挿入直後は、刺入部の状態や、下肢の血流をとくに注意して見ておきたい時間帯です。

合併症のまとめ

合併症なぜ起きるかどう気づくか
下肢虚血太い管が動脈に入っている足背・後脛骨動脈、冷感、色、しびれ、左右差
出血・貧血穿刺部+抗凝固刺入部、ドレーン、消化管、採血データ
血小板減少バルーンによる機械的破壊採血データ
バルーンの破裂石灰化との接触、折れ曲がりカテーテル内への血液混入、バルーン内圧の異常
大動脈分枝の血行障害血栓の遊離、バルーンが分枝を塞ぐ意識、上肢の左右差、尿量、腹部症状
感染皮膚を貫いて管が入っている刺入部の発赤、熱感、排膿、発熱
動脈損傷挿入時のシース・ガイドワイヤ刺入部の状態、下肢の血流
「なぜ起きるか」が分かると、「どう気づくか」がつながって見えてきます。

おわりに

合併症の一覧を丸暗記しようとすると、しんどくなります。

でも、太い管が入っていること。バルーンが動いていること。血を固まりにくくしていること。この3つに戻れば、なぜその観察をするのかが説明できます。

そして、合併症の多くは看護師が最初に気づける場所に現れます。足の色、刺入部、チューブの中、採血データ。どれも、そばにいる人が見ているものです。

気づいて、伝える。それだけで、患者さんの経過が変わることがあります。

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わたしは、看護が好きです。
だからこそ、看護の価値を問い続けていたいと思っています。

※この記事は一般的な情報であり、個別の医療判断に代わるものではありません。実際の管理は、必ず主治医・指導者・院内の基準にしたがってください。数値はいずれも参考値であり、施設の基準を優先してください。