IABPの適応と禁忌|どんな患者さんに使い、どんなときに使えないのか

記事「IABPの適応と禁忌|使えるとき、使えないとき」のアイキャッチ画像。ICUに置かれた循環補助装置と、波形が表示されたモニター。 🌿補助循環・ICUの看護

IABPが入っている患者さんを受け持つとき、「なぜこの患者さんに入っているのか」を考えたことはありますか。

そして逆に、「なぜあの患者さんには入らなかったのか」を。

適応と禁忌が分かると、目の前の治療の意味が見えてきます。この記事では、IABPをどんなときに使い、どんなときに使えないのかを整理します。

Q1. どんなときに使うのですか?

代表的なものを挙げます。

  • 心原性ショック
  • 難治性の心不全
  • 難治性の不安定狭心症
  • 切迫心筋梗塞
  • 急性心筋梗塞による機械的合併症(心室中隔穿孔、僧帽弁閉鎖不全、乳頭筋断裂)
  • 難治性の心室性不整脈による虚血
  • ハイリスクな手術での循環の補助
  • 冠動脈造影やカテーテル治療のときの補助
  • 人工心肺からの離脱時の補助

並べてみると、共通点が見えてきます。

心臓が弱っていて、酸素が足りていない。

Q2で書きますが、IABPは心筋に届く酸素を増やし、心臓が使う酸素を減らす装置です。だから、その2つが問題になっている場面が適応になります。

Q2. 数字の目安はありますか?

血行動態の参考値として、こんな数字があります。

  • 血圧が80mmHg以下
  • 心係数が2.0L/分/m²以下
  • 肺動脈楔入圧が20mmHg以上
  • 尿量の低下(0.5mL/kg/時以下)
  • 末梢循環不全(四肢の冷感、チアノーゼ)

ただし、これらはあくまで参考値です。実際の判断は症例や施設の基準によって変わります。

この中で、看護師が日々の観察で直接触れているものがあります。

尿量と、四肢の冷感です。

ただし、この2つだけで循環不全と判断することはできません。

尿量が減ることも、手足が冷たくなることも、体が血流を保とうとしている代償反応であることがあります。末梢を締めて、中心の循環を守っている。その段階では、血圧がまだ保たれていることもあります。

だから、この2つは診断の代わりにはなりません。

けれど、「何かおかしい」と気づく入口にはなります。気づいたら、血圧や心係数、これまでの尿量の流れといった他の情報と合わせて考える。そして医師に伝える。

そこが、看護師の役割なのだと思います。

Q3. IABPは、もう古い治療なのでしょうか?

ここは、少し込み入った話になります。でも、知っておいてほしいところです。

ガイドラインは、変わりました

以前、心原性ショックを伴う急性心筋梗塞に対するIABPは、欧米のガイドラインでクラスI(強く推奨)とされていました。

ところが、IABP-SHOCK IIという試験で、IABPを入れても30日・6か月・12か月の死亡率が改善しなかったと報告されました。

これを受けて、欧州心臓病学会のガイドラインは2012年に「考慮してもよい」へ、2017年には「ルーチンでの使用は控えるべき」(クラスIII)へと変わりました。

それでも、現場では使われています

では、IABPは役目を終えたのでしょうか。

そうではありません。ルーチンでの使用は推奨されなくなりましたが、実際には今も多くの場面で使われています。

理由は、インペラが単純に「上位互換」ではないからです。

インペラには、それ自体の厳しい適応があります。実施できるのは、ハートチームによる体制が整った医療機関に限られます。コストの差も大きいものです。

そして公式にも、インペラは「従来のIABPまたはPCPSによる補助循環のみでは循環補助が不十分と想定される病態にある場合に使用を考慮する」と位置づけられています。

つまり、インペラは「IABPでは足りないとき」に使うもの、とされているのです。

優劣ではなく、助け方が違う

だから現場の判断は、「どちらが優れているか」ではありません。

「この患者さんは、どちらの適応か」です。

そもそも、この2つは助け方がまったく違います。

IABPは、心臓の外で助けています。大動脈の中でバルーンをふくらませ、圧を変えることで心臓を支える。

インペラは、心臓の中で助けています。左室の中にカテーテルを入れ、血液を直接汲み出す。

場所が違い、やっていることが違う。優劣ではなく、種類が違うのだと思います。

IABPとインペラの比較図。IABPは心臓の外(下行大動脈の中)にバルーンがあり、インペラはカテーテルが大動脈弁の中心を通って心臓の中(左室)まで入っている。どちらも大腿動脈から挿入され、血管の内側を通っている。
図:IABPは心臓の外(大動脈の中)で、インペラは心臓の中(左室)で助けています。どちらも大腿動脈から入りますが、装置が届いている場所が違います。

Q4. 絶対に使えないのは、どんなときですか?

絶対的禁忌は2つです。理由まで知っておくと、忘れません。

重症の大動脈弁閉鎖不全症

大動脈弁がきちんと閉じない状態です。

IABPは拡張期にバルーンをふくらませ、大動脈の圧を上げます。

けれど大動脈弁が閉じきらない状態では、その高くなった圧に押されて、血液が左室へ戻る量が増えてしまいます。

拡張期は、本来なら左室が血液をためていく時間です。そこへ逆流が増えれば、左室の負担はかえって大きくなります。

助けるどころか、逆流を増やしてしまう。だから使えません。

胸部大動脈瘤・大動脈解離

大動脈の壁が弱くなっていたり、裂けていたりする状態です。

その中でバルーンが毎分数十回ふくらんだりしぼんだりすれば、壁に機械的なストレスがかかり続けます。動脈瘤の破裂や、解離が進行する危険があります。

Q5. 慎重に判断するのは、どんなときですか?

相対的禁忌、つまり「使えないわけではないが、慎重な検討が要る」ものです。

大動脈の高度な蛇行や屈曲

血管が強く曲がりくねっていると、バルーンがうまくふくらまなかったり、血管を傷つけたりする危険があります。

腸骨動脈から大腿動脈の重度の閉塞性動脈硬化症

カテーテルを入れる通り道が、もともと細く硬くなっている状態です。下肢虚血のリスクが高くなります。

この場合、入れられたとしても、下肢の観察はいつも以上に慎重になります。

重度の凝固異常

IABP中は抗凝固を行うため、もともと出血しやすい状態があると、穿刺部の出血や血小板減少をさらに助長することがあります。

禁忌のまとめ

区分使えない・慎重になる状態理由
絶対重症の大動脈弁閉鎖不全症拡張期に上がった圧に押されて、左室へ戻る血液が増えてしまう
絶対胸部大動脈瘤・大動脈解離バルーンの動きが血管の壁にストレスをかけ、破裂や解離が進む危険がある
相対大動脈の高度な蛇行・屈曲バルーンがうまくふくらまない。血管を傷つける危険がある
相対腸骨動脈〜大腿動脈の重度の閉塞性動脈硬化症下肢虚血のリスクが高くなる
相対重度の凝固異常穿刺部の出血や血小板減少を助長する
絶対的禁忌は「使えないもの」、相対的禁忌は「使えないわけではないが、慎重な検討が要るもの」です。

禁忌を知っていると、看護が変わります

禁忌は「使ってはいけないリスト」ではありません。

その理由を知っていると、観察の意味が変わってきます。

大動脈弁閉鎖不全が禁忌だと知っていれば、患者さんの弁の状態が気になります。閉塞性動脈硬化症が相対的禁忌だと知っていれば、もともと足の動脈が細い患者さんに入っているとき、下肢の観察がより慎重になります。凝固異常が問題になると知っていれば、採血データの見方が変わります。

「なぜこの患者さんに入っているのか」

「なぜあの患者さんには入らなかったのか」

その問いに自分なりの答えを持てるようになると、目の前の治療が、ただの決まりごとではなくなります。

IABPそのものの仕組みや観察ポイントは、IABPの看護|基本の仕組みから観察ポイントまでにまとめています。

インペラとの違いをもう少し詳しく知りたい方は、IABPとインペラ(Impella)の違い|初めて担当する看護師の10の疑問もどうぞ。

わたしは、看護が好きです。
だからこそ、看護の価値を問い続けていたいと思っています。

※この記事は一般的な情報であり、個別の医療判断に代わるものではありません。適応・禁忌の判断は必ず主治医が行います。数値はいずれも参考値であり、施設の基準を優先してください。