IABPの適応と禁忌|どんな患者さんに使い、どんなときに使えないのか

記事「IABPの適応と禁忌|どんな患者さんに使い、どんなときに使えないのか」のアイキャッチ画像。ICUに置かれた循環補助装置と、波形が表示されたモニター。左側に「補助循環・ICUの看護」「IABPの適応と禁忌」「使えるとき、使えないとき」の文字。 🌿循環・補助循環の看護

IABPが入っている患者さんを受け持つとき、「なぜこの患者さんに入っているのか」を考えたことはありますか。

そして逆に、「なぜあの患者さんには入らなかったのか」を。

適応と禁忌が分かると、目の前の治療の意味が見えてきます。この記事では、IABPをどんなときに使い、どんなときに使えないのかを整理します。

※日本循環器学会のガイドライン、IABPカテーテルの添付文書、臨床工学技士向けの教育資料(JSEPTIC)をもとにしています。実際の適応や禁忌の判断は、医師が、使う製品の添付文書と患者さんの状態をもとに行います。

Q1. どんなときに使うのですか?

2014年の臨床工学技士向けの教育資料には、IABPを使う場面の参考例として、次のものが挙げられています。

ただし、ここにある病名や処置だけで、IABPの適応が決まるわけではありません。2025年改訂版の心不全診療ガイドラインでは、心原性ショックで静注強心薬などの薬物治療を行っても臓器障害が進行する場合に、一時的な補助循環が適応になるとされています。実際の判断は、医師が患者さんの状態をみて行います。

  • 心原性ショック
  • 難治性の心室不全
  • 難治性の不安定狭心症
  • 切迫心筋梗塞
  • 急性心筋梗塞による機械的合併症(心室中隔穿孔、僧帽弁閉鎖不全、乳頭筋断裂)
  • 難治性の心室性不整脈による虚血
  • ハイリスクな手術での心臓の補助
  • 冠動脈造影や血管形成術のときの心臓の補助
  • 人工心肺からの離脱時の補助

教材には、敗血症性ショックや、体外循環中に拍動のある流れを作ることも挙げられています。ただ、2023年のガイドラインで敗血症性ショックについて取り上げられている補助循環はV-A ECMOで、IABPについての記載は見当たりませんでした。

添付文書の「使用目的」は、製品によって書き方が違います。東海メディカルプロダクツのIABカテーテルの添付文書では、急性心筋梗塞の重い合併症であるショック状態の患者さんや、開心術後に心拍出量が低下した患者さんに救急的に使う、とされています。ゲティンゲ社のIABカテーテルでは、心不全の患者さんに対する補助循環に用いる、とされています。

ガイドラインでは、IABPは心筋への酸素の供給を増やし、需要を減らす装置として説明されています。並べた場面の多くは、その2つが問題になっている場面だと思います。

Q2. 数字の目安はありますか?

2023年のガイドラインには、ショックの重症度の段階(SCAI分類)ごとの対応が図で示されています。その中で、次のような状態(Stage C・D)では、まず静注強心薬(±IABP)を始める流れになっています。「±IABP」は、IABPを使う場合と使わない場合がある、という意味です。

  • 持続する低血圧(収縮期血圧が90mmHg未満)
  • または、収縮期血圧を90mmHgより高く保つために、静注強心薬の持続点滴が必要
  • 四肢冷感、乏尿、乳酸値の上昇(臓器の低灌流の所見・臓器障害)

ただし、これらは循環不全を評価するための所見で、数値を満たしたらIABPを入れる、という基準ではありません。実際の判断は、医師が患者さんの状態や施設の基準をふまえて行います。

この中で、看護師が日々の観察で直接触れているものがあります。尿量と、手足の冷たさです。

低灌流は、血圧だけでは分からない

2025年改訂版の心不全診療ガイドラインでは、低灌流(臓器に届く血液が足りていない状態)の所見として、次のものが挙げられています。

  • 脈圧が小さい(脈圧狭小)
  • 手足が冷たい(四肢冷感)
  • うとうとしている(傾眠傾向)
  • 尿が減る、腎機能が悪くなる(乏尿・腎機能悪化)

インペラのテキストブックが引用する心原性ショックの定義では、血圧が90mmHg以上でも組織の低灌流がみられる場合はプレショックと考え、ショックと同じように対応するとされています。

尿量や手足の冷たさは、それだけで判断できるものではありません。けれど、「何かおかしい」と気づく入口にはなります。気づいたら、血圧、尿量の流れ、意識、採血データなど、ほかの情報と合わせて医師に伝える。そこが、看護師にできることだと思います。

低灌流の所見と採血データの見方は、補助循環中の採血データ|臓器障害の指標と、読み解き方にまとめています。

Q3. IABPは、もう古い治療なのでしょうか?

ここは少し込み入った話になります。でも、知っておいてほしいところです。

急性心筋梗塞に伴う心原性ショックでは、ルーチンでの使用は推奨されなくなりました

急性心筋梗塞による心原性ショックでは、以前はIABPが推奨クラスIの適応とされ、広く使われてきました(日本循環器学会ほか、2023年のガイドライン)。

ところが、IABP-SHOCK II試験で、30日の死亡はIABPを使った群で39.7%、使わなかった群で41.3%と、予後の改善は認められませんでした。対象は、機械的合併症のない急性心筋梗塞の心原性ショックで、早期の血行再建が予定されていた600人です(原著論文)。心筋梗塞のサイズを小さくすることにもつながらない、というデータも示されています。

これを受けて、欧米とわが国のガイドラインで、IABPをルーチンで使用することは推奨されなくなりました。2025年改訂版の心不全診療ガイドラインでも、同じ試験を根拠に「IABPのルーチンでの使用は推奨されない」とされています。

ただし、これは急性心筋梗塞に伴う心原性ショックで、IABPを決まりごととして使うことについての話です。分けて考えられている場面もあります。

それでも、使われる理由があります

2023年のガイドラインは、IABPについて、ほかの補助循環に比べると効果は少ないものの、導入が比較的容易で迅速に行え、多くの施設で使用可能という点で優れている、と書いています。

ガイドラインには、IABPが使われる場面も書かれています。

  • 急性心筋梗塞の機械的合併症による心原性ショックでは、IABPの使用は推奨クラスI(2023年のガイドライン)
  • ショックの重症度の段階(SCAI分類)のStage C・Dでは、まず静注強心薬(±IABP)を開始する、という流れ(2023年のガイドライン)
  • 心筋梗塞によらない心原性ショックで、IABPが静注強心薬に比べて、混合静脈血酸素飽和度や心臓のポンプの力を表す指標(cardiac power output)を改善したという報告(2025年のガイドライン)

そして、血行動態が不安定でIABPでは対応できない場合には、まずV-A ECMOやインペラを導入する、とされています(2023年のガイドライン)。

日本の急性冠症候群ガイドラインの推奨

日本循環器学会の急性冠症候群ガイドライン(2018年改訂版)には、IABPの推奨が表にまとめられています。

対象推奨推奨クラス
機械的合併症による心原性ショックIABPを使用するI
治療抵抗性の心原性ショックIABPを考慮するIIa
再灌流療法のあとも心筋虚血が続くIABPの使用を考慮するIIa
心原性ショックルーチンのIABP使用は推奨されないIII(No benefit)
日本循環器学会 急性冠症候群ガイドライン(2018年改訂版)表49をもとに作成

推奨クラスIは「有効・有用であるというエビデンスがある、または見解が広く一致している」、IIaは「有効・有用である可能性が高い」、IIIのNo benefitは「有効・有用でないとのエビデンスがある、または見解が広く一致している」という意味です。「使わない」のではなく、「決まりごととして全員には使わない」という整理だと思います。

インペラとの関係

インペラの添付文書には、「従来のIABPまたはPCPSによる補助循環のみでは循環補助が不十分と想定される病態にある場合に使用を考慮すること」と書かれています。また承認の条件として、十分な知識と経験をもつハートチームによる体制が整った医療機関で使われることが求められています。

では、インペラのほうが成績がよいのか。2025年のガイドラインでは、インペラがIABPに比べて生存率を改善したことを示した無作為化比較試験は報告されていない一方、血行動態(平均血圧の上昇や乳酸値の低下)ではインペラの優位性が報告されている、と整理されています。

また2024年のDanGerShock試験では、ST上昇型心筋梗塞に伴う心原性ショックの患者さんを対象に、標準治療にインペラCPを加えた群と、標準治療だけの群が比べられました。180日の死亡は、インペラCPを加えた群で45.8%、標準治療だけの群で58.5%と、インペラCPを加えた群のほうが少なくなりました(2025年のガイドラインでも紹介されています)。比べた相手はIABPではなく、標準治療です。

一方で、重い出血、下肢虚血、溶血、機器の不具合、大動脈弁逆流の悪化をまとめた有害事象は、インペラCPを加えた群で24.0%、標準治療だけの群で6.2%と、インペラCPを加えた群のほうが多くなっていました。腎代替療法を受けた人も、41.9%と26.7%で多くなっています。試験の対象になった患者さんでの結果なので、すべての心原性ショックに同じ結果を当てはめることはできません。

2025年のガイドラインでも、血管の合併症や出血、神経の合併症は、こうした補助循環に共通して見られるため、使う前に、患者さんの意向や病歴、予後、治療に伴うリスクを評価する、とされています。

優劣ではなく、助け方が違う

現場の判断は、「どちらが優れているか」だけではなく、「この患者さんに、どの補助が合っているか」なのだと思います。

そもそも、この2つは助け方が違います。

IABPは、心臓の外で助けています。大動脈の中でバルーンをふくらませ、圧を変えることで心臓を支える。

インペラは、心臓の中で助けています。左室の中にカテーテルを入れ、血液を直接汲み出して大動脈へ送る。

場所が違い、やっていることが違う。優劣ではなく、種類が違うのだと思います。

IABPとインペラの比較図。IABPは心臓の外(下行大動脈の中)にバルーンがあり、インペラはカテーテルが大動脈弁を通って心臓の中(左室)まで入っている。図ではどちらも大腿動脈から挿入されている(インペラはCPの場合)。
図:IABPは心臓の外(大動脈の中)で、インペラは心臓の中(左室)で助けています。図のインペラは、足の付け根の動脈(大腿動脈)から入れるインペラCPです。インペラ5.5は、腋窩動脈や鎖骨下動脈から人工血管を介して入れます。

Q4. 効果が出にくいのは、どんなときですか?

2023年のガイドラインには、次のように書かれています。

  • 不整脈や高度の頻脈を伴うときは、補助の効果が弱くなることがある
  • 著しい血圧低下を伴うときは、有効でないことがある
  • 心肺停止の患者さんは、適応ではない

ゲティンゲ社のIABカテーテルの添付文書にも、心拍数が140回/分を超える場合、バルーンが十分に拡張しない可能性があると書かれています。

IABPは、心拍に合わせてバルーンをふくらませ、しぼませています。合わせ方はIABPのトリガー|心電図と圧、どちらを使うのか、タイミングの見方はIABPモニターの見方|拡張・収縮のタイミングとバルーン内圧波形にまとめています。

Q5. 使えないのは、どんなときですか?

禁忌は、資料によって挙げ方と分け方が違います。まず、それぞれの状態と、なぜ危ないのかを見ていきます。資料ごとの違いは、最後に表にまとめます。

重症の大動脈弁閉鎖不全症

大動脈弁がきちんと閉じない状態です。IABPは拡張期にバルーンをふくらませ、大動脈の圧を上げます。

添付文書には、理由として、バルーンの拡張によって左室に血液が逆流し、前負荷が増えて心不全が悪くなるおそれ(東海メディカルプロダクツ)、拡張期にバルーンが拡張すると左室の仕事量が増えるおそれ(ゲティンゲ)が書かれています。教育資料でも、大動脈弁の逆流を増やすため、とされています。

助けるための拡張が、逆流を増やしてしまう。だから使えません。

大動脈瘤・大動脈解離

大動脈の壁が弱くなっていたり、裂けていたりする状態です。

教育資料では、機械的なストレスによって、動脈瘤の破裂や損傷、解離の進展を引き起こすため、とされています。添付文書でも、カテーテルの挿入や、バルーンの拡張・収縮によって、大動脈を傷つけたり瘤が破裂したりするおそれがあるため、とされています。

見落としやすいのが、腹部の大動脈瘤です。バルーンがふくらむのは胸の下行大動脈ですが、カテーテルは足の付け根からお腹の大動脈を通って入っていきます。添付文書は2社とも、胸部だけでなく腹部の大動脈瘤も禁忌にしています。

血管の蛇行・石灰化、閉塞性動脈硬化症

大動脈の高度な蛇行や屈曲は、教育資料では、バルーンの拡張不全や血管損傷のリスクがあるため、とされています。添付文書では、大動脈やバルーンカテーテルを傷つけるおそれ、バルーンの損傷や穿孔のおそれが理由に挙げられています。

腸骨動脈から総大腿動脈の重度の閉塞性動脈硬化症は、カテーテルを入れる通り道がもともと狭くなっている状態です。教育資料では、下肢の虚血のリスクがあるため、とされています。

ゲティンゲ社の添付文書では、末梢血管疾患も禁忌に含まれています。足の血管に病気がある患者さんにIABPが入っているときは、使っている製品の禁忌や、どこから入れたかが、どのように評価されたのかを確認しておきたいところです。

留置中は、挿入した側の足の血流を観察します。添付文書にも、挿入側の末梢の血流を監視して、症状を早く見つけることが書かれています。挿入前の足の状態が分かっていると、変化に気づきやすくなると思います。

重度の凝固異常

教育資料では、穿刺部の出血や血小板減少などから、出血傾向を助長することがあるため、とされています。

IABPの使用中は、血栓塞栓症や出血の合併を防ぐために、適切な抗凝固療法が必要とされています(2023年のガイドライン)。血栓を防ぐための抗凝固は、出血を助長することもあります。血栓と出血の両方のリスクを見ながら管理していきます。

資料ごとの違い

資料書かれていること
東海メディカルプロダクツ(TMP IABカテーテル Lightning)の添付文書(2024年)禁忌:重篤な大動脈弁閉鎖不全症/胸部または腹部の大動脈瘤/大動脈から総腸骨動脈にかけて重篤な蛇行・石灰化を伴う症例
ゲティンゲ社 IABカテーテルの添付文書(2024年)禁忌:重篤な大動脈弁閉鎖不全/胸部または腹部の大動脈瘤/大動脈から総腸骨動脈にかけて重篤な蛇行・石灰化を伴う症例、または末梢血管疾患/極度の肥満や鼠径部の瘢痕などがある患者さんへの、シースを使わない挿入(シースレス挿入)
教育資料(JSEPTIC)絶対的禁忌:重症の大動脈弁閉鎖不全症、胸部大動脈瘤、大動脈解離。相対的禁忌(使用に際し慎重な検討が必要):腹部・胸部大動脈の高度な蛇行や屈曲、腸骨動脈から総大腿動脈の重度の閉塞性動脈硬化症、重度の凝固異常
ガイドライン(2023年)大動脈弁閉鎖不全、大動脈瘤、大動脈解離、高度の粥状硬化、腸骨動脈の高度狭窄や蛇行などは、使用が困難となることがある
各資料の記載をもとに作成

日本で販売されているIABPカテーテル17製品の添付文書(2026年10月時点)を確認すると、重篤な大動脈弁閉鎖不全、胸部または腹部の大動脈瘤、大動脈から(総)腸骨動脈にかけての重篤な蛇行・石灰化の3つは、すべての製品で禁忌でした。末梢血管疾患(末梢血管障害)も、17製品中13製品で禁忌に含まれていました。

たとえば大動脈解離は、教育資料とガイドラインには挙げられていますが、17製品の添付文書の禁忌の欄には書かれていませんでした。ただし、添付文書に書かれていないことは、安全に使えるという意味ではありません。ガイドラインでは、大動脈解離は使用が困難となることがある状態に挙げられています。

逆に、大動脈の重い蛇行・石灰化は、教育資料では相対的禁忌ですが、添付文書では禁忌です。

実際に使えるかどうかは、医師が、使う製品の添付文書にもとづいて判断します。

禁忌を知っていると、看護が変わります

禁忌は、安全のために守るべき大事な条件です。そのうえで、理由まで知っていると、観察の意味も分かってきます。

大動脈弁閉鎖不全が禁忌だと知っていれば、患者さんの弁の状態が気になります。足の動脈の病気が禁忌や慎重な検討の対象だと知っていれば、挿入した側の足の血流を、挿入前と比べて見るようになります。凝固異常が問題になると知っていれば、採血データの見方が変わります。

「なぜこの患者さんに入っているのか」

「なぜあの患者さんには入らなかったのか」

その問いに自分なりの答えを持てるようになると、目の前の治療が、ただの決まりごとではなくなると思います。

IABPそのものの仕組みや観察項目は、IABPの看護と観察項目|仕組み・合併症・トラブル対応をQ&Aで整理にまとめています。

入ったあとに起こりうることは、IABPの合併症|なぜ起きるのか、どう気づくのかをどうぞ。

インペラとの違いをもう少し詳しく知りたい方は、IABPとインペラ(Impella)の違い|初めて担当する看護師の10の疑問もどうぞ。

わたしは、看護が好きです。
だからこそ、看護の価値を問い続けていたいと思っています。

参考にした資料

※この記事は一般的な情報であり、個別の医療判断に代わるものではありません。適応・禁忌の判断は必ず主治医が行います。数値はいずれも参考値であり、施設の基準を優先してください。

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