IABPが入っている患者さんのモニターには、いつもと違う波形が並んでいます。
山が2つあったり、ぎざぎざしていたり。何を見ればいいのか分からないまま、とりあえず数字だけ記録している——最初はそんな感じかもしれません。
この記事では、その波形に何が映っているのかを整理します。
先にお伝えしておくと、今はほとんどの機械が、タイミングを自動で合わせています。看護師が調整するわけではありません。それでも意味が分かっていると、「いつもと違う」に気づけるようになります。
Q1. 波形には、何が映っているのですか?
IABPの動脈圧波形には、2つのものが重なって映っています。
ひとつは、患者さん自身の心臓が作っている圧。もうひとつは、バルーンがふくらんだり、しぼんだりして作っている圧です。
山が2つあるように見えるのは、そのためです。
前の山が自分の心臓の収縮、後ろの山がバルーンによるもの。この2つを見分けられるようになると、波形が読めるようになります。
Q2. 理想の波形は、どう見えるのですか?
まず、正しく合っているときの形を知っておきます。ここが基準になります。

見るところは4つです。
- バルーンの拡張が、ディクロティックノッチのところで始まっているか
- その立ち上がりが鋭角の「V」字になっているか
- オーグメンテーション圧が、自己の収縮期圧を上回っているか
- バルーンが収縮したあと、拡張末期圧と、次の収縮期圧が下がっているか
ディクロティックノッチというのは、大動脈弁が閉じたときにできる、波形の小さなくぼみのことです。ここが「拡張期が始まった合図」になります。
拡張の始まりは、このノッチと同じか、わずかに上にあるのが正しい位置とされています。
Q3. 波形には、IABPの2つの効果が映っています
この波形が大事なのは、IABPが何をしているかが、そのまま形になって出ているからです。
ダイアストリック・オーグメンテーション(拡張期圧を上げる)
バルーンがふくらんだところ。山が高くなる部分です。
拡張期の圧が上がることで、冠動脈へ血液が押し込まれます。
→ 心筋に届く酸素が増える
シストリック・アンローディング(収縮期の後負荷を減らす)
バルーンがしぼんだところ。V字で下がる部分です。
大動脈の圧が下がり、左室は低い圧に向かって血液を押し出せばよくなります。
→ 心臓が使う酸素が減る
1枚の波形の中に、この2つが両方うつっています。
山が高くなっているところが「増やしている」ところ。V字で落ちているところが「減らしている」ところ。そう見えるようになると、波形が意味を持ち始めます。
Q4. タイミングがずれると、どうなりますか?
バルーンの拡張と収縮は、心拍のどこで起こるかが決まっています。そこがずれると、効果が減るだけでなく、かえって心臓の負担を増やしてしまうことがあります。
ずれ方は4つに分けられます。

覚え方があります。
正常はV、拡張が遅いとW、収縮が早いとU。
正しく合っていれば、拡張も収縮も鋭角のV字を描きます。
拡張が遅れると、ディクロティックノッチと拡張の立ち上がりが離れて谷が2つでき、W字に見えます。
収縮が早すぎると、一度下がった圧が戻ってしまい、U字に見えます。
この3つの文字を覚えておくと、モニターの前で思い出しやすくなります。
Q5. 看護師は、波形をどう使えばいいのですか?
調整するのは、看護師ではありません
今の機械は、ほとんどが自動でタイミングを合わせています。看護師が数値をいじって合わせる場面は、ほとんどありません。
では、なぜ波形の意味を知っておく必要があるのでしょうか。
意味が分かっていないと、「おかしい」に気づけないからです。
自動で合っているはずのものが、ずれることはあります。そのとき、いつもと形が違うことに最初に気づけるのは、ベッドサイドにいる人です。
気づいたら、報告する
波形がいつもと違うと感じたら、臨床工学技士や医師に報告します。
直すのは看護師の役割ではありません。でも、気づいて伝えるのは看護師の役割です。
「なんとなく形が違う気がします」でもかまいません。そこから確認が始まります。
補助比率も、情報のひとつです
補助比率は、ウィニングに入るまでは1:1が基本です。1心拍ごとにバルーンが動いている状態です。
つまり、1:2になっていたら、それ自体が「ウィニングが始まった」という意味を持ちます。
設定が変わったときは、なぜ変わったのかを確認する。それも波形を見ることの一部だと思います。
おわりに
波形は、ただの線ではありません。
山が高くなっているところは、心臓に酸素を届けているところ。V字で落ちているところは、心臓の負担を減らしているところ。
そう見えるようになると、モニターの前に立つ時間が変わってきます。数字を記録するだけの時間ではなくなります。
そして、いつもと違う形に気づいたとき、それを言葉にして伝える。そこから、患者さんの安全が守られていきます。
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わたしは、看護が好きです。
だからこそ、看護の価値を問い続けていたいと思っています。
※この記事は一般的な情報であり、個別の医療判断に代わるものではありません。波形の評価や設定の変更は、必ず主治医・臨床工学技士・院内の基準にしたがってください。


