IABPが入っている患者さんのモニターには、いつもと違う波形が並んでいます。
山が2つあったり、ぎざぎざしていたり。何を見ればいいのか分からないまま、とりあえず数字だけ記録している——最初はそんな感じかもしれません。
この記事では、IABPのモニターに何が映っていて、どこを見ればいいのかを整理します。
先にお伝えしておくと、IABPの装置には、心電図や血圧に合わせてタイミングを自動で合わせる仕組みが内蔵されています。それでも波形の意味が分かっていると、「いつもと違う」に気づけるようになると思います。
※日本循環器学会のガイドライン、IABPカテーテルの添付文書、臨床工学技士向けの教育資料(JSEPTIC)をもとにしています。画面の配置や表示のしかたは、機種によって異なります。
Q1. IABPのモニターには、何が映っていますか?
教育資料では、IABPが動いているときの画面に、次の3つの波形が並んでいます。
- 心電図:バルーンを動かす合図(トリガー)に使われることの多い波形
- 動脈圧波形:患者さん自身の心臓が作る圧と、バルーンが作る圧が重なった波形
- バルーン内圧波形:バルーンの中のガス(ヘリウム)の圧の波形。資料によっては「バルーン駆動圧波形」とも書かれています
主に見る圧の数字
動脈圧の数字は、収縮期圧・拡張期圧・平均血圧に加えて、オーグメンテーション圧が表示されます。オーグメンテーション圧は、バルーンがふくらんだことで高くなった、拡張期の山の圧です。
教育資料にある画面の例では、アシストなしで66mmHgだった平均血圧が、1:2で74mmHg、1:1で82mmHgになっています。ひとつの例ではありますが、バルーンが動くと平均血圧が上がることが、数字でも見えます。
動脈圧波形は、2つの圧が重なっている
動脈圧波形で山が2つあるように見えるのは、患者さん自身の心臓の圧と、バルーンがふくらんだり、しぼんだりして作る圧が重なっているからです。
前の山が自分の心臓の収縮、後ろの山がバルーンによるもの。この2つを見分けられるようになると、波形が読めるようになります。
Q2. 理想の波形は、どう見えるのですか?
まず、正しく合っているときの形を知っておきます。ここが基準になります。

ガイドラインには、タイミングについて次のように書かれています。
バルーン拡張のタイミングは大動脈弁閉鎖時と一致し,収縮のタイミングは拡張末期動脈圧が最低になるように調節する.
日本循環器学会ほか「2023年 JCS/JSCVS/JCC/CVIT ガイドライン フォーカスアップデート版 PCPS/ECMO/循環補助用心内留置型ポンプカテーテルの適応・操作」第2章 1.2
大動脈弁が閉じたとき、動脈圧波形にはディクロティックノッチ(重複切痕)という小さなくぼみができます。ここが「拡張期が始まった合図」です。
教育資料では、理想の波形で見るところとして、次の点が挙げられています。
- バルーンの拡張が、ディクロティックノッチのところで始まっているか
- その立ち上がりが鋭角の「V」字になっているか
- オーグメンテーション圧が、自己の収縮期圧を上回っているか(資料では「理想的には」とされています)
- バルーンが収縮したあと、アシストされた拡張末期圧と、次の収縮期圧が下がっているか
タイミングを合わせるときは、バルーンの動きを一時的に1:2にして、バルーンが動いた心拍と動いていない心拍を見比べる方法が紹介されています。図1の左右の並びも、その見比べ方です。
Q3. 波形には、IABPの2つの効果が映っています
この波形が大事なのは、IABPが何をしているかが、そのまま形になって出ているからです。
ダイアストリック・オーグメンテーション(拡張期圧を上げる)
バルーンがふくらんだところ。山が高くなる部分です。
教育資料では、その効果として、冠動脈の血流量が増えることと、平均動脈圧が上がることが挙げられています。
→ 心筋に届く酸素が増える
シストリック・アンローディング(収縮期の後負荷を減らす)
バルーンがしぼんだところです。
バルーンがしぼむと、次に心臓が血液を送り出す直前の大動脈の圧が下がります。アシストのない拍と比べて、拡張末期圧や次の収縮期圧が低くなっていることが、後負荷が減っているかを見る手がかりになります。
教育資料では、その効果として、後負荷の軽減、心仕事量の軽減、心筋酸素消費量の減少が挙げられています。
→ 心臓が使う酸素が減る
ガイドラインでも、IABPは心筋への酸素の供給を増やし、需要を減らす、と説明されています。
1枚の波形の中に、この2つが両方うつっています。山が高くなっているところが「増やしている」ところ。バルーンがしぼんだあと、圧が下がっているところが「減らしている」ところ。そう見えるようになると、波形が意味を持ち始めます。
Q4. タイミングがずれると、どうなりますか?
バルーンの拡張と収縮は、心拍のどこで起こるかが決まっています。そこがずれると、効果が減るだけでなく、かえって心臓の後負荷を増やしてしまうことがあります。
ずれ方は4つに分けられます。

| ずれ方 | 波形 | 起きること |
|---|---|---|
| ① 拡張が早すぎる | ディクロティックノッチより前でバルーンが拡張している | 後負荷の増大、大動脈弁の早期閉鎖、逆流の可能性 |
| ② 拡張が遅すぎる | ノッチより後で拡張している。鋭角の「V」字にならない。教材の波形の例では、オーグメンテーション圧が自己の収縮期圧と同じくらいになっている | タイミングが合っているときより、冠動脈の血流を増やす効果が小さくなる |
| ③ 収縮が早すぎる | アシストされた拡張末期圧が、自己の拡張末期圧と同等になる | 後負荷を軽くする効果が減る |
| ④ 収縮が遅すぎる | アシストされた拡張末期圧が、自己の拡張末期圧と同等か、それより高くなる | 後負荷が増える |
覚え方:正常はV、拡張が遅いとW、収縮が早いとU
これは資料に書かれている言い方ではなく、図の形を覚えるための目安です。
正しく合っていれば、拡張の立ち上がりは鋭角のV字になります。拡張が遅れると、ノッチと拡張の立ち上がりが離れて谷が2つでき、W字に見えます。収縮が早すぎると、一度下がった圧が戻ってしまい、U字に見えます。
ただし、文字の形だけで判定はしません。ノッチとの位置関係や、アシストの前後で圧がどう変わったかを確認します。正確な見分け方は上の表の説明のほうで、覚え方はモニターの前で思い出すきっかけとして使ってもらえたらと思います。
タイミング以外でも、山は低くなります
オーグメンテーションが十分に得られないとき、原因はタイミングだけとは限りません。IABカテーテル(ゲティンゲ社)の添付文書には、次のような原因が挙げられています。
- バルーンが、シース(挿入口の管)から完全に出ていない
- バルーンが完全にふくらんでいない
- 装置のオーグメンテーションやバルーン容量の設定が低すぎる
- カテーテルが不適切な位置にある、または偽腔にある
- 患者さんの状態によるもの:平均動脈圧が低い、全身の血管抵抗が小さい、心拍が速すぎて心室の充満と拍出が十分でない
山が低いと感じたとき、機械の問題なのか、患者さんの状態が変わったのか。その両方を考えておくと、報告のときに伝えることが整理しやすくなると思います。
Q5. バルーン内圧波形は、どう見ればいいですか?
動脈圧波形とは別に表示されるのが、バルーン内圧波形です。バルーンの中のヘリウムガスの圧を表しています。

教育資料では、まず正常な形を覚えることが大事とされていて、正常波形は4つの部分に分けて説明されています。
- ① オーバーシュート:バルーンがふくらんだ直後のとがった部分。ガスの応答がよいことを示します
- ② プラトー:ふくらんだあと、圧が安定している平らな部分
- ③ アンダーシュート:バルーンがしぼんだ直後のくぼんだ部分。これもガスの応答がよいことを示します
- ④ ベースライン:しぼんだあと、圧が安定している部分
形が変わるときは
| 波形の変化 | 考えられること | 資料にある対応 |
|---|---|---|
| ベースラインが下がる | ヘリウムガスが決まった量だけ戻ってこない(リーク) | 漏れの量によって、装置のガス漏れのアラームが鳴る |
| オーバーシュートとアンダーシュートがなまっている(丸くなっている) | カテーテルや延長チューブのキンク・折れ曲がりで、ガスの流れが妨げられている | チューブやカテーテルの折れ曲がりを確認する |
| 全体が四角い形(方形波)になり、プラトー圧がかなり高い | バルーンのオーバーボリューム | オーグメンテーションのボリュームを下げて、患者さんに合った量に設定し直す |
キンクとオーバーボリュームは、どちらも四角っぽく見える点が似ています。教育資料では、オーバーボリュームのほうは、オーバーシュートとアンダーシュートの戻りは早いけれど小さく、プラトー圧がかなり高い、という違いが説明されています。
設定を変えるのは医師や臨床工学技士です。看護師がベッドサイドでできるのは、チューブの折れ曲がりを見ることと、形の変化に気づいて伝えることだと思います。
ヘリウムのチューブに血液が見えたら
IABカテーテル(ゲティンゲ社)の添付文書では、バルーンの穿孔(穴)を疑うサインとして、次の3つが挙げられています。
- IABPのリークアラームが鳴る
- 体外のチューブや延長チューブの中に、砂のような血のかたまりや、水滴のような血液が見える
- 拡張期のオーグメンテーション波形が、突然変わる
ヘリウムが通るチューブの中に血液が見えるなど、穿孔が疑われるときは緊急です。添付文書では、直ちにポンプを止め、カテーテルを抜去する処置が示されています。ポンピングを止めて、医師・臨床工学技士にすぐ連絡します。そのあとの操作は、使用している機種の添付文書と院内の手順に従います。
Q6. 看護師は、波形をどう使えばいいのですか?
タイミングは、装置が自動で合わせている
ガイドラインには、心電図や血圧に同期して動かす仕組みが装置に内蔵されていて、自動的な駆動で使用できる、と書かれています。
それでも、ずれることはあります。臨床工学技士向けの教育資料では、トリガー不良のアラームの注意点として、一定時間ごとに収縮と拡張のタイミングを監視し、調整することが挙げられています。自動だから見なくていい、というわけではないのだと思います。
気づいたら、報告する
東海メディカルプロダクツのIABカテーテルの添付文書には、動脈圧波形やバルーン内圧波形に異常がみられたときは、X線透視でカテーテルの状態を確認するよう書かれています。確認や調整をするのは、医師や臨床工学技士です。
でも、波形がいつもと違うことに最初に気づけるのは、ベッドサイドにいる人です。気づいて伝えることは、看護師にできることだと思います。
「なんとなく形が違う気がします」でもかまいません。そこから確認が始まります。
分かる範囲で、いつから・どの波形が変わったか、血圧や心拍、患者さんの様子、補助比率、アラームの有無もあわせて伝えられるとよいと思います。全部そろってから、と報告を遅らせなくてかまいません。
補助比率も、情報のひとつです
教育資料では、補助比率はウィーニングまでは1:1、ウィーニングのときは1:2から1:3へと徐々に下げる、と説明されています。
ですから、1:2になっていたら、それ自体が「ウィーニングが始まった」という意味を持つことがあります。ただし、タイミングを合わせるときに、一時的に1:2にすることもあります(Q2)。
設定が変わったときは、なぜ変わったのかを確認する。それも波形を見ることの一部だと思います。
おわりに
波形は、ただの線ではありません。
山が高くなっているところは、心臓に酸素を届けているところ。バルーンがしぼんだあと、圧が下がっているところは、心臓の負担を減らしているところ。
そう見えるようになると、モニターの前に立つ時間が変わってきます。数字を記録するだけの時間ではなくなります。
そして、いつもと違う形に気づいたとき、それを言葉にして伝える。そこから、患者さんの安全が守られていくのだと思います。
IABPそのものの仕組みや観察項目は、IABPの看護と観察項目|仕組み・合併症・トラブル対応をQ&Aで整理にまとめています。
どの合図でバルーンを動かしているのかは、IABPのトリガー|心電図と圧、どちらを使うのかを、アラームが鳴ったときはIABPのアラーム対応早見表|原因と最初にやることをどうぞ。
わたしは、看護が好きです。
だからこそ、看護の価値を問い続けていたいと思っています。
参考にした資料
- 2023年 JCS/JSCVS/JCC/CVIT ガイドライン フォーカスアップデート版 PCPS/ECMO/循環補助用心内留置型ポンプカテーテルの適応・操作(日本循環器学会ほか)── 第2章 1「IABP」(効果、駆動方法とタイミング)
- 東海メディカルプロダクツ「TMP IABカテーテル Lightning」添付文書(2024年9月 第4版)── 重要な基本的注意(波形に異常がみられたときの確認)
- IABカテーテル TRANS-RAY 添付文書(ゲティンゲグループ・ジャパン、2024年3月 第6版)── オーグメンテーションに影響する要因、バルーン穿孔を疑うサイン
- JSEPTIC CE教材シリーズ「Intra-Aortic Balloon Pumping」(2014年)── 2つの効果、拡張・収縮のタイミング、画面の表示、タイミングのずれと動脈圧波形、補助比率、バルーン内圧波形、トリガー不良アラーム
※この記事は一般的な情報であり、個別の医療判断に代わるものではありません。波形の評価や設定の変更は、必ず主治医・臨床工学技士・院内の基準にしたがってください。



