実習で血圧を測って「120/80です」と報告したとき。その数字が何を表しているのか聞かれたら、どう答えますか。
この記事では、血圧の4つの数字(上・下・平均・その差)と、血圧が下がると体の中で何が起こるのかを、できるだけやさしく説明します。
※内容は、循環生理の教科書の著者による解説(Klabunde『Cardiovascular Physiology Concepts』)と、日本循環器学会などのガイドラインをもとにしています。
この記事の結論
血圧とは、心臓が送り出した血液を、全身の組織に届けるための「押す力」です。
- 血圧には「上・下・平均・その差」の4つの数字があり、それぞれ違うことを教えてくれます
- 平均血圧は、おおよそ「心拍出量 × 末梢血管抵抗」で決まります
- 血圧が保たれていても、組織に血液が届いているとは限りません。様子と一緒に見ます
Klabundeの解説にも、心臓のいちばんの仕事は、臓器に十分な血液が流れるように、動脈の血圧をつくって保つことだと書かれています。
1. 血圧の4つの数字
ひとことで:上・下・平均・その差。それぞれ違うことを教えてくれます。

- 上の数字(収縮期血圧) … 心臓が血液を送り出したときに、動脈の圧がいちばん高くなったときの値
- 下の数字(拡張期血圧) … 心臓がゆるんでいるあいだに、いちばん低くなったときの値
- 平均血圧 … 1回の心拍のあいだの圧の平均。組織に血液を送り込む平均の力
- 脈圧 … 上と下の差。1回に送り出す血液の量と、大動脈の広がりやすさで決まる
では、心臓がゆるんでいるのに、なぜ下の血圧があるのでしょう。心臓から血液を受け取った大動脈は、いったん広がります。そして、血液が先へ流れていくあいだに、弾力で元に戻っていきます(Klabunde)。この働きがあるので、心臓がゆるんでいるあいだも、動脈の圧はゼロにならずに保たれている、と考えるとイメージしやすいと思います。
平均血圧は、ふだんの心拍数なら「下 +(上 − 下)÷ 3」で、おおよその値が出せます。120/80なら約93mmHgです。上と下を足して2で割った値より、少し低くなります(Klabunde)。
2. 血圧は、何で決まるの?
ひとことで:心拍出量 × 末梢血管抵抗。どちらかが変われば、血圧も変わります。
平均血圧 ≒ 心拍出量 × 末梢血管抵抗(Klabunde)
- 心拍出量 … 心臓が1分間に送り出す血液の量。「1回に送り出す量 × 1分間の心拍数」で決まる
- 末梢血管抵抗 … 全身の血管の流れにくさ。おもに細い動脈の太さで決まる
下の図のように、心拍出量が減っても、末梢血管抵抗が下がっても、平均血圧は下がる方向に動きます。

心拍出量を決める前負荷・後負荷・心拍数・心収縮力は、前負荷・後負荷をわかりやすく|看護学生のための循環のきほんにまとめています。
3. 血圧が下がると、何が困るの?
ひとことで:大きく下がって保てなくなると、組織に血液と酸素が届かなくなります。
血圧が大きく下がり、体が臓器への血流を保てなくなると、臓器や組織に届く血液と酸素が足りなくなります。酸素が足りないと、細胞は傷ついたり、うまく働けなくなったりすることがあります(Klabunde)。
日本版敗血症診療ガイドライン2024でも、ショックは「組織への酸素の供給が需要を下回り、細胞の機能障害が生じている状態」と説明されています。
体は、脳と心臓を守ろうとする
出血などで血圧が下がると、体は交感神経を働かせて、腸・腎臓・筋肉などの血管を縮め、生きるために欠かせない脳と心臓に血液を回そうとします(Klabunde)。
守りきれなくなると
それでも保ちきれなくなると、心臓や組織が酸素不足になり、心臓や血管の力が弱まって、さらに血圧が下がる、という悪い流れがくり返されます。重い低血圧が長く続くと、臓器が弱っていきます(Klabunde)。

4. 血圧が保たれていれば、安心?
ひとことで:安心とは限りません。体の様子と一緒に見ます。
体は血管を縮めて、血圧だけは保っていることがあります。心不全診療ガイドライン2025にも、血圧は血管が縮むことで保たれている場合があるので、臓器の低灌流の所見とあわせて評価することが大切だ、と書かれています。灌流は、臓器や組織に血液が流れることです。
実習で、一緒に見るところ
ガイドラインに挙げられている低灌流の所見をもとにすると、次のようなところです。
- 意識 … ぼんやりしていないか、いつもと様子が違わないか
- 手足 … 冷たくなっていないか
- 尿の量 … 減っていないか
- 乳酸値 … 採血の結果で上がっていないか
ひとつの数字だけで決めず、「さっきと比べてどう変わったか」を見ていけるといいと思います。
5. 実習で報告するとき
ひとことで:数字と一緒に、患者さんの様子を伝えます。
「血圧が○○です」だけでなく、脈・手足の冷たさ・尿の量・意識の様子を一緒に伝えられると、指導者や医師が考える材料が増えると思います。
たとえば、こんな伝え方です。
「先ほどより血圧が下がっています。手足も冷たくなっています。確認をお願いします。」
全部の情報がそろうまで待たなくて大丈夫です。分かっていることから、先に伝えてかまいません。
急に血圧が下がった、意識の様子が変わったなど、急な変化があるときは、原因を考え終わるのを待たず、すぐに指導者や受け持ちの看護師に伝えることが、いちばん大切だと思います。
6. 確認クイズ(答えつき)
ここまでの内容を、クイズで確かめてみましょう。問題のすぐ下に答えがあります。(→の数字は、くわしく書いてある見出しの番号です)
Q1. 血圧が120/80mmHgのとき、脈圧はいくつでしょう?
答え:40mmHg
脈圧は、上と下の差です。120 − 80 = 40mmHg です。(→1)
Q2. 血圧が120/80mmHgのとき、平均血圧はおよそいくつでしょう?
答え:約93mmHg
「下 +(上 − 下)÷ 3」で、80 + 40 ÷ 3 ≒ 93mmHg です。上と下を足して2で割った100mmHgより、少し低くなります。(→1)
Q3. 平均血圧を決める、2つのものは何でしょう?
答え:心拍出量と、末梢血管抵抗
平均血圧 ≒ 心拍出量 × 末梢血管抵抗 です。どちらかが下がると、平均血圧も下がる方向に動きます。(→2)
Q4. 血圧が下がったとき、体がまず血液を回そうとするのは、どこでしょう?
答え:脳と心臓
体は、腸・腎臓・筋肉などの血管を縮めて、生きるために欠かせない脳と心臓に血液を回そうとします。(→3)
Q5. ○か×か。「血圧が保たれていれば、組織にも血液は十分に届いている」
答え:×
体は血管を縮めて、血圧だけは保っていることがあります。意識・手足の冷たさ・尿の量・乳酸値も一緒に見ます。(→4)
Q6. 血圧はいつもと同じですが、患者さんがぼんやりしています。「血圧は変わっていないから大丈夫」と考えてよいでしょうか?
答え:いいえ
血圧が保たれていても、組織に血液が届いているとは限りません。意識の変化は、低灌流のサインのひとつです。気づいたら、すぐに指導者に伝えます。(→4・5)
7. もっとくわしく知りたい人へ
平均血圧の目標値や、脈圧が変わるしくみ、血圧を保つホルモンなどは、現場で働く看護師向けの記事にくわしくまとめています。
- 血圧をもっとくわしく:血圧の見方|収縮期・拡張期・平均血圧・脈圧から循環を読む
- 循環のきほん(学生向け):前負荷・後負荷をわかりやすく|看護学生のための循環のきほん
- 心拍出量を決める4つの因子:前負荷・後負荷・心拍数・心収縮力とは|心拍出量を決める4つの因子で循環を見る
おわりに
血圧とは、心臓が送り出した血液を、全身の組織に届けるための「押す力」です。
血圧の数字は、毎日のように測ります。その数字が「押す力」だと分かると、測る意味が少し見えてくると思います。
次に血圧を測るとき、その数字の向こうで体がどう働いているのか、想像してみませんか。数字は患者さんのことをたくさん教えてくれています。
わたしは、看護が好きです。
だからこそ、看護の価値を問い続けていたいと思っています。
参考にした資料
- Richard E. Klabunde『Cardiovascular Physiology Concepts』Cardiac Function – Introduction(2023年11月改訂)── 心臓の働きと血圧、心拍出量=1回拍出量×心拍数
- 同 Mean Arterial Pressure(2023年11月改訂)── 平均血圧と心拍出量・血管抵抗、平均血圧の求め方
- 同 Aortic and Arterial Pulse Pressure(2023年11月改訂)── 脈圧
- 同 Systemic Vascular Resistance(2022年12月改訂)── 末梢血管抵抗
- 同 Hypotension(2023年11月改訂)── 低血圧と酸素の供給
- 同 Hemorrhagic Shock(2023年11月改訂)── 脳と心臓への血流の振り分け、代償が破綻したときの悪い流れ
- 2025年改訂版 心不全診療ガイドライン(日本循環器学会・日本心不全学会)── 血圧が血管収縮で保たれている場合があること、組織低灌流の所見
- 日本版敗血症診療ガイドライン2024(J-SSCG2024)(日本集中治療医学会・日本救急医学会)── ショックの考え方
※この記事は一般的な情報であり、個別の医療判断に代わるものではありません。実習では、必ず指導者・実習施設の基準にしたがってください。


