血圧をわかりやすく|看護学生のための「4つの数字」のきほん

看護学生向けの記事「血圧をわかりやすく|看護学生のための「4つの数字」のきほん」のアイキャッチ。白とごく淡いグリーンの水彩の背景。左側に、紺色の大きなバッジ「看護学生のための」、紺色の太い文字で「血圧をわかりやすく」、その下に「「4つの数字」のきほん」。右側には、長い茶色の髪で白い服を着た象の女の子が、首に聴診器をかけ、体と同じくらいの大きな淡いピンクのハートを、笑顔で両手で前へ押している。 🌿循環・補助循環の看護

実習で血圧を測って「120/80です」と報告したとき。その数字が何を表しているのか聞かれたら、どう答えますか。

この記事では、血圧の4つの数字(上・下・平均・その差)と、血圧が下がると体の中で何が起こるのかを、できるだけやさしく説明します。

※内容は、循環生理の教科書の著者による解説(Klabunde『Cardiovascular Physiology Concepts』)と、日本循環器学会などのガイドラインをもとにしています。

この記事の結論

血圧とは、心臓が送り出した血液を、全身の組織に届けるための「押す力」です。

  • 血圧には「上・下・平均・その差」の4つの数字があり、それぞれ違うことを教えてくれます
  • 平均血圧は、おおよそ「心拍出量 × 末梢血管抵抗」で決まります
  • 血圧が保たれていても、組織に血液が届いているとは限りません。様子と一緒に見ます

Klabundeの解説にも、心臓のいちばんの仕事は、臓器に十分な血液が流れるように、動脈の血圧をつくって保つことだと書かれています。

1. 血圧の4つの数字

ひとことで:上・下・平均・その差。それぞれ違うことを教えてくれます。

血圧の4つの数字を、120/80mmHgを例に動脈の圧の波で示した図。波の頂点が収縮期血圧120、いちばん低いところが拡張期血圧80、点線が平均血圧(MAP)約93、120と80の差が脈圧40。下に4つの枠で、収縮期血圧は1心拍で最も高くなる圧、拡張期血圧は1心拍で最も低くなる圧、平均血圧は1心拍の圧を時間で平均したもの、脈圧は収縮期血圧−拡張期血圧、と説明。平均血圧の概算は80+(120−80)÷3≒93mmHg。波形は模式図で、数値は一例で治療目標ではない。
図:血圧の4つの数字。120/80mmHgを例に、動脈の圧の波で収縮期血圧・拡張期血圧・平均血圧・脈圧を示しています。波形は模式図で、数値は一例です(治療の目標ではありません)。Klabunde『Cardiovascular Physiology Concepts』の説明をもとに作成。
  • 上の数字(収縮期血圧) … 心臓が血液を送り出したときに、動脈の圧がいちばん高くなったときの値
  • 下の数字(拡張期血圧) … 心臓がゆるんでいるあいだに、いちばん低くなったときの値
  • 平均血圧 … 1回の心拍のあいだの圧の平均。組織に血液を送り込む平均の力
  • 脈圧 … 上と下の差。1回に送り出す血液の量と、大動脈の広がりやすさで決まる

では、心臓がゆるんでいるのに、なぜ下の血圧があるのでしょう。心臓から血液を受け取った大動脈は、いったん広がります。そして、血液が先へ流れていくあいだに、弾力で元に戻っていきます(Klabunde)。この働きがあるので、心臓がゆるんでいるあいだも、動脈の圧はゼロにならずに保たれている、と考えるとイメージしやすいと思います。

平均血圧は、ふだんの心拍数なら「下 +(上 − 下)÷ 3」で、おおよその値が出せます。120/80なら約93mmHgです。上と下を足して2で割った値より、少し低くなります(Klabunde)。

2. 血圧は、何で決まるの?

ひとことで:心拍出量 × 末梢血管抵抗。どちらかが変われば、血圧も変わります。

平均血圧 ≒ 心拍出量 × 末梢血管抵抗(Klabunde)

  • 心拍出量 … 心臓が1分間に送り出す血液の量。「1回に送り出す量 × 1分間の心拍数」で決まる
  • 末梢血管抵抗 … 全身の血管の流れにくさ。おもに細い動脈の太さで決まる

下の図のように、心拍出量が減っても、末梢血管抵抗が下がっても、平均血圧は下がる方向に動きます。

平均血圧が下がる2つの要因を示した図。左は「①心拍出量が減る」:血管の抵抗が同じなら、心臓から送り出す量が少ないと、平均血圧が下がる方向に動く(心臓と、針が下がる圧力計の絵)。右は「②血管抵抗が下がる」:心拍出量が同じなら、細動脈が広がると、平均血圧が下がる方向に動く(細い血管が広がる絵と圧力計)。下に「実際には、2つの要因や体の代償が重なります」。
図:平均血圧が下がる2つの要因。血管の抵抗が同じなら心拍出量が減ると、心拍出量が同じなら血管の抵抗が下がると、平均血圧は下がる方向に動きます。実際には、2つの要因や体の代償が重なります。Klabunde『Cardiovascular Physiology Concepts』の説明をもとに作成。

心拍出量を決める前負荷・後負荷・心拍数・心収縮力は、前負荷・後負荷をわかりやすく|看護学生のための循環のきほんにまとめています。

3. 血圧が下がると、何が困るの?

ひとことで:大きく下がって保てなくなると、組織に血液と酸素が届かなくなります。

血圧が大きく下がり、体が臓器への血流を保てなくなると、臓器や組織に届く血液と酸素が足りなくなります。酸素が足りないと、細胞は傷ついたり、うまく働けなくなったりすることがあります(Klabunde)。

日本版敗血症診療ガイドライン2024でも、ショックは「組織への酸素の供給が需要を下回り、細胞の機能障害が生じている状態」と説明されています。

体は、脳と心臓を守ろうとする

出血などで血圧が下がると、体は交感神経を働かせて、腸・腎臓・筋肉などの血管を縮め、生きるために欠かせない脳と心臓に血液を回そうとします(Klabunde)。

守りきれなくなると

それでも保ちきれなくなると、心臓や組織が酸素不足になり、心臓や血管の力が弱まって、さらに血圧が下がる、という悪い流れがくり返されます。重い低血圧が長く続くと、臓器が弱っていきます(Klabunde)。

血圧が下がると体の中で起こることを、左から右へ3段階で示した図。①血圧が下がる(針が下がる圧力計)。②体ががんばる:脳と心臓には太い矢印で血液を回し、腸・腎臓・筋肉の血管は縮んで細い矢印になる。③保ちきれなくなると:「さらに血圧が下がる」「心臓や組織に、酸素が届かない」「心臓と血管の力が弱まる」が時計回りの輪でくり返され、輪から「臓器が弱っていく」へ矢印が出る。下に「血圧が保たれて見えるあいだにも、腎臓などの血流は絞られていることがある」。
図:血圧が下がると、体の中で起こること。体はまず脳と心臓に血液を回してがんばりますが、保ちきれなくなると悪い流れがくり返され、臓器が弱っていきます。Klabunde『Cardiovascular Physiology Concepts』の説明をもとに作成。

4. 血圧が保たれていれば、安心?

ひとことで:安心とは限りません。体の様子と一緒に見ます。

体は血管を縮めて、血圧だけは保っていることがあります。心不全診療ガイドライン2025にも、血圧は血管が縮むことで保たれている場合があるので、臓器の低灌流の所見とあわせて評価することが大切だ、と書かれています。灌流は、臓器や組織に血液が流れることです。

実習で、一緒に見るところ

ガイドラインに挙げられている低灌流の所見をもとにすると、次のようなところです。

  • 意識 … ぼんやりしていないか、いつもと様子が違わないか
  • 手足 … 冷たくなっていないか
  • 尿の量 … 減っていないか
  • 乳酸値 … 採血の結果で上がっていないか

ひとつの数字だけで決めず、「さっきと比べてどう変わったか」を見ていけるといいと思います。

5. 実習で報告するとき

ひとことで:数字と一緒に、患者さんの様子を伝えます。

「血圧が○○です」だけでなく、脈・手足の冷たさ・尿の量・意識の様子を一緒に伝えられると、指導者や医師が考える材料が増えると思います。

たとえば、こんな伝え方です。

「先ほどより血圧が下がっています。手足も冷たくなっています。確認をお願いします。」

全部の情報がそろうまで待たなくて大丈夫です。分かっていることから、先に伝えてかまいません。

急に血圧が下がった、意識の様子が変わったなど、急な変化があるときは、原因を考え終わるのを待たず、すぐに指導者や受け持ちの看護師に伝えることが、いちばん大切だと思います。

6. 確認クイズ(答えつき)

ここまでの内容を、クイズで確かめてみましょう。問題のすぐ下に答えがあります。(→の数字は、くわしく書いてある見出しの番号です)

Q1. 血圧が120/80mmHgのとき、脈圧はいくつでしょう?

答え:40mmHg
脈圧は、上と下の差です。120 − 80 = 40mmHg です。(→1)

Q2. 血圧が120/80mmHgのとき、平均血圧はおよそいくつでしょう?

答え:約93mmHg
「下 +(上 − 下)÷ 3」で、80 + 40 ÷ 3 ≒ 93mmHg です。上と下を足して2で割った100mmHgより、少し低くなります。(→1)

Q3. 平均血圧を決める、2つのものは何でしょう?

答え:心拍出量と、末梢血管抵抗
平均血圧 ≒ 心拍出量 × 末梢血管抵抗 です。どちらかが下がると、平均血圧も下がる方向に動きます。(→2)

Q4. 血圧が下がったとき、体がまず血液を回そうとするのは、どこでしょう?

答え:脳と心臓
体は、腸・腎臓・筋肉などの血管を縮めて、生きるために欠かせない脳と心臓に血液を回そうとします。(→3)

Q5. ○か×か。「血圧が保たれていれば、組織にも血液は十分に届いている」

答え:×
体は血管を縮めて、血圧だけは保っていることがあります。意識・手足の冷たさ・尿の量・乳酸値も一緒に見ます。(→4)

Q6. 血圧はいつもと同じですが、患者さんがぼんやりしています。「血圧は変わっていないから大丈夫」と考えてよいでしょうか?

答え:いいえ
血圧が保たれていても、組織に血液が届いているとは限りません。意識の変化は、低灌流のサインのひとつです。気づいたら、すぐに指導者に伝えます。(→4・5)

7. もっとくわしく知りたい人へ

平均血圧の目標値や、脈圧が変わるしくみ、血圧を保つホルモンなどは、現場で働く看護師向けの記事にくわしくまとめています。

おわりに

血圧とは、心臓が送り出した血液を、全身の組織に届けるための「押す力」です。

血圧の数字は、毎日のように測ります。その数字が「押す力」だと分かると、測る意味が少し見えてくると思います。

次に血圧を測るとき、その数字の向こうで体がどう働いているのか、想像してみませんか。数字は患者さんのことをたくさん教えてくれています。

わたしは、看護が好きです。
だからこそ、看護の価値を問い続けていたいと思っています。

参考にした資料

※この記事は一般的な情報であり、個別の医療判断に代わるものではありません。実習では、必ず指導者・実習施設の基準にしたがってください。