病気やけがの影響が長く続くとき、暮らしを支える制度の一つが障害年金です。傷病手当金を受けている間でも、対象になるか相談できます。
看護師が押さえたいのは、初診日、早めに相談すること、生活上の困りごとです。制度の細かな計算よりも、患者さんが相談するきっかけになるところを整理します。
障害年金|看護師が押さえたい4つのこと
| ① 年金の種類 | 国民年金が共通の土台。会社員などは厚生年金にも加入します。初診日に厚生年金にも加入していたかを確認します。障害基礎年金は1・2級、障害厚生年金は1〜3級です。 |
|---|---|
| ② 初診日 | 原因となった病気やけがで初めて医師・歯科医師の診療を受けた日。発症日とは別です。年金の種類・納付要件・障害認定日を確認する起点になります。 |
| ③ 障害認定日 | 原則は初診日から1年6か月。状態や処置によっては、それより前になる場合があります。認定日の特例と受給の決定は別です。詳しい時期と条件は、Q3の補足へ。 |
| ④ 看護師の関わり | 症状の始まりと最初の受診を分けて聞き、記録する。初診日頃の受診状況を直接見ていた看護師などは、1名で第三者証明を行える場合があります。別途必要な書類もあります。等級を断定せず、相談先につなぎます。 |
相談は傷病手当金の終了を待たずに。事後重症は請求日の翌月分から。認定日の時点で要件を満たしていた場合は、過去の分を受け取れることもあります(時効による限度は5年分)。
Q1. 「障害者手帳を持っている人のもの」だと思っていませんか
そう思っている人は、少なくないかもしれません。
でも、障害年金と障害者手帳は、別の制度です。手帳を持っていなくても障害年金は請求できますし、手帳の等級と年金の等級も一致しません。
障害年金は、公的年金の一部です。年金というと老後のもののように聞こえますが、現役世代のための年金でもあるのですね。
国民年金が土台で、会社員などは厚生年金にも加入します
障害年金には、国民年金による「障害基礎年金」と、厚生年金による「障害厚生年金」があります。初診日に厚生年金にも加入していたかが、受け取れる年金の種類に関わります。
ここで確認するのは、受診時の健康保険ではなく、年金への加入状況です。国民年金と国民健康保険は別の制度です。
障害年金の「2階建て」は、基礎年金への上乗せ
障害年金でまず確認するのは、初診日に、国民年金に加えて厚生年金にも加入していたかどうかです。初診日に厚生年金に加入していた方が1級・2級の要件を満たす場合は、障害基礎年金に障害厚生年金が上乗せされます。
初診日に厚生年金に加入していた方の1級・2級
1階の基礎年金 + 2階の厚生年金
この2つを合わせて受け取ります。
※建物は制度のイメージです。階の大きさは金額の比率を表しません。
初診日に厚生年金には加入していなかった方
初診日に国民年金のみに加入していた方は、1級・2級の要件を満たすと、障害基礎年金が対象になります。20歳前の年金未加入期間や、日本国内に住む60歳以上65歳未満の年金未加入期間に初診日がある場合も含まれます。
3級は、厚生年金だけにあります
初診日に厚生年金に加入していた方が3級の要件を満たす場合は、障害厚生年金のみが対象です。障害基礎年金には3級がないため、この場合は2階建ての受け取りにはなりません。
※図は仕組みの説明です。実際の受給には、保険料の納付要件や障害の状態などの確認が必要です。障害厚生年金の3級より軽い障害でも、要件を満たせば「障害手当金」という一時金の対象となる場合があります。
出典:日本年金機構「障害年金」
等級は病名や処置だけでは決まりません。生活や仕事への影響なども含めて判断されます。働いているという理由だけで対象外とは限りません。詳しい基準は年金事務所に確認します。
Q2. 初診日が大切です
初診日は、障害の原因となった病気やけがで、初めて医師・歯科医師の診療を受けた日です。症状が出た日や、いまの病院に初めて来た日とは限りません。
この日にどの年金に加入していたか、保険料を納めていたかなどが、受給の条件に関わります。いまの仕事や健康保険だけでは判断できません。
看護師は「いつから症状があったか」と「いつ、どこを初めて受診したか」を分けて聞き、誰から聞いた情報かも含めて記録します。年金の加入・納付状況は、年金事務所で確認します。
Q3. 傷病手当金が終わるのを待たずに、相談できます
障害の状態を確認する「障害認定日」は、原則として初診日から1年6か月を過ぎた日です。人工透析やペースメーカーの装着など、状態や処置によっては、それより前になる場合もあります。
処置を受けただけで、受給が決まるわけではありません。加入・納付状況や障害の程度なども確認されます。
請求が遅れると、その分をさかのぼって受け取れない場合があります。あとから障害が重くなった場合の請求には年齢の期限もあるため、傷病手当金の終了や65歳が近づくまで待たず、早めに年金事務所へ相談します。
詳しい認定日・請求時期を確認したい方へ
障害認定日といいます。障害の状態を判定する日のことです。
原則は初診日から1年6か月を過ぎた日。ただし、その期間内に治った場合(症状が固定し、治療の効果が期待できない場合を含む)は、その日が障害認定日になります。
厚生労働省の障害認定基準は、次のものについて、認定する日を個別に定めています。
| 状態 | 障害認定日 |
|---|---|
| 人工透析 | 初めて受けた日から3か月を経過した日 |
| 心臓ペースメーカー、ICD、人工弁 | 装着した日 |
| 人工骨頭・人工関節の挿入置換 | 置換した日 |
| 人工肛門の造設、尿路変更術 | 行った日から6か月を経過した日 |
| 新膀胱の造設 | 造設した日 |
| 在宅酸素療法 | 開始した日 |
| 手足の切断・離断 | 原則として切断・離断した日 |
| 喉頭全摘出 | 手術を施した日 |
| 脳血管障害による機能障害 | 初診日から6か月経過した日以後で、医学的にそれ以上の機能回復がほとんど望めないと認められるとき |
| 遷延性植物状態 | その状態に至った日から3か月を経過した日以後で、医学的に機能回復がほとんど望めないと認められるとき |
認定日が早まることと、受給が決まることは別です。年金の加入状況、納付要件、障害の程度などの確認が必要です。
この表に並んでいるのは、急性期の病棟から出ていく方たちだなと思いました。
認定基準は、いくつかの状態については等級まで書いています。人工透析療法施行中のものは2級。ペースメーカー・ICDを装着したものは3級。人工肛門または新膀胱を造設したもの、尿路変更術を施したものは3級。心臓移植と人工心臓は1級、CRT・CRT-Dは2級とされています。
補助循環の記事で書いた大動脈解離や胸部大動脈瘤で人工血管を入れた方についても、一般状態の条件つきで3級と書かれていました。
認定日の時点で要件を満たしていた場合
障害認定日の時点ですでに要件を満たしていた場合は、障害認定日による請求として、その翌月分から受け取れる場合があります。請求が後になっても過去の分を受け取れることがありますが、時効により5年分が限度です。20歳前の年金未加入期間に初診日があり、障害認定日が20歳より前の場合は、20歳に達した日の翌月分からとなります。
「あとから悪くなった」場合も請求できます
障害認定日には該当しなかったけれど、その後に悪化した場合。これは事後重症による請求と呼ばれています。
ただ、ここに2つ、気をつけたいことがあります。
- 受け取れるのは請求日の翌月分から。さかのぼりません
- 請求書は65歳の誕生日の前々日までに出す必要があります
なぜ65歳が区切りなの?
65歳は、老齢年金を原則として受け取り始める年齢です。障害年金のうち、認定日より後に障害が重くなったことによる「事後重症」の請求には、65歳に達する前までという年齢の上限が設けられています。老齢年金の受け取りを遅らせても、この請求期限が延びるわけではありません。
「誕生日の前々日」になるのは、法律上の年齢の数え方によるものです。
法律上、65歳に達する日は「65歳の誕生日の前日」です。そのさらに前の日までに請求するため、期限は「誕生日の前々日」になります。たとえば、65歳の誕生日が10月10日なら、請求期限は10月8日です。
これは、障害年金が65歳で一律に打ち切られるという意味ではありません。また、認定日の時点ですでに要件を満たしていた場合の「障害認定日による請求」とは別のルールです。老齢年金を繰上げ受給すると、65歳前でも事後重症による請求ができなくなるため、該当する方は事前に年金事務所へ相談してください。
つまり、遅れた分は戻ってこないということになります。日本年金機構も「請求が遅くなると年金の受給開始時期が遅くなります」としています。
Q4. 金額は、年金の種類や障害の程度で異なります
障害基礎年金か障害厚生年金か、障害の程度、家族の状況などによって金額が変わります。看護師がその場で金額を約束せず、年金事務所に確認します。
同じ病気で傷病手当金も受ける場合は、給付が調整されることがあります。両方をそのまま満額受け取れるとは限らないため、加入する健康保険の窓口にも確認します。
詳しい年金額・傷病手当金との調整を確認したい方へ
令和8年4月分からの金額です。
| 等級 | 障害基礎年金(年額) | 障害厚生年金(年額) |
|---|---|---|
| 1級 | 1,059,125円 + 子の加算 | 報酬比例の年金額 × 1.25 + 配偶者の加給年金 243,800円 |
| 2級 | 847,300円 + 子の加算 | 報酬比例の年金額 + 配偶者の加給年金 243,800円 |
| 3級 | (ありません) | 報酬比例の年金額(最低保障 635,500円) |
子の加算は、生計を維持している子のうち、18歳到達後の最初の3月31日までの子、または20歳未満で障害等級1級・2級の状態にある子が対象です。配偶者の加給年金は、生計を維持している65歳未満の配偶者が対象で、配偶者自身の年金受給状況などにより支給停止となる場合があります。
障害厚生年金は、加入期間が300月(25年)未満なら300月として計算されます。加入期間が短い方にも、この計算上の仕組みがあります。
3級より軽くても、初診日から5年以内に治った(症状が固定した)場合などには、障害手当金という一時金があります(最低保障1,271,000円)。
傷病手当金との関係
日本年金機構は、傷病手当金を受けていた期間について、あとから同じ病気で障害厚生年金をさかのぼって受け取れることになった場合は、受給済みの傷病手当金が調整されるとしています。
調整は、さかのぼって受給する場合だけではありません。同じ傷病で障害厚生年金を受ける期間は、傷病手当金との調整があります。同じ支給事由の障害基礎年金がある場合は、その額も合算します。年金の年額を360で割った額が傷病手当金の日額を下回る場合は、差額が支給されます。具体的な調整や返還の要否は、健康保険の保険者(協会けんぽや健保組合)に確認します。
Q5. 看護師が関われる、三つの場面
① 初診日を聞いているのは、わたしたちかもしれません
入院時の問診で、わたしたちは当たり前のように聞いていますよね。
「この症状、いつからですか」「その症状で、いつ、どこの医療機関を初めて受診しましたか」
症状が出た日と、初めて診療を受けた日は別です。「いつから症状があったか」と「いつ、どこを初めて受診したか」を分けて聞き取ることが、初診日を確認する手がかりになります。聞き取った内容は、誰から得た情報かも含めて記録します。
何年もあとになってから証明しようとすると、これがとても難しくなるようです。診療録の保存義務は5年(医師法第24条第2項)ですし、閉院していることもあります。いま聞き取って記録に残しておくことにも、意味があるのかもしれません。
② 初診日を証明する手続きに、関われる場合があります
初診時の医療機関から証明が取れない場合、当時の受診状況を直接見ていた看護師などが、1名で第三者証明を行える場合があります。後日、本人から経過を聞いただけでは、この扱いにはなりません。
証明書1通だけで手続きが済むわけではありません。ほかに必要な書類や条件は、年金事務所に確認します。詳しくは日本年金機構の初診日証明書類の案内をご覧ください。
③ 傷病手当金が切れる前に、名前だけでも出せたら
事後重症による請求は、請求日の翌月分からの支給です。要件を満たしていても、請求が遅れると受給開始も遅れます。一方、認定日の時点で要件を満たしていた場合には、過去の分を請求できることがあります。どちらに当たるかも含め、早めにつなげたいと思います。
長く休んでいる方、透析が始まった方、ペースメーカーが入った方、ストーマを造設した方、在宅酸素で帰る方。「障害年金という制度があります。一度、年金事務所で聞いてみられませんか」。そのくらいの一言でも、届くことがあるのかなと思っています。
Q6. 等級や受給の可否は、言い切らない
ここまで書いてきて、同じくらい大事だなと思ったことです。
「その状態なら2級ですよ」とは、言い切らないほうがいいと思っています。
認定基準は、検査成績・一般状態区分・日常生活状況などから総合的に認定すると、繰り返し書いています。同じ病名でも、同じ処置をしていても、結果は変わるということなのだと思います。判断するのは日本年金機構です。そこは、わたしたちの役割ではないのだろうと思います。
「対象になるかもしれません。年金事務所で一緒に確認してみませんか」と伝えられます。等級や受給の可否を看護師だけで判断せず、初めて受診した時期や生活上の困りごとなど、相談に必要な情報を整理します。
ソーシャルワーカーがいる病院なら、まず一緒に相談できます。必要に応じて年金事務所や社会保険労務士につなぎ、その後、相談できたか、必要な書類の準備で困っていないかも確認したいと思います。
まとめ ── 持って帰るなら、この4つ
- 起点になるのは初診日。症状が出た日とは分けて、原因となった病気やけがで初めて受診した日を確認する
- 障害認定日は原則、初診日から1年6か月。状態や処置によっては、それより前になる場合がある
- 事後重症は請求日の翌月分から。認定日の時点で要件を満たしていれば、過去の分を受け取れる場合もある
- 最初の受診や生活上の困りごとを記録し、年金事務所やソーシャルワーカーへの相談につなぐ
制度を覚えなくてもいいのだと思います。ただ、「この人、対象かもしれない」と思える引き出しが1つあれば、助けになれる場面があるかもしれません。
わたしは、看護が好きです。
だからこそ、看護の価値を問い続けていたいと思っています。
「障害年金の対象になるか、早めに相談してみませんか」。相談につながったあとも、手続きで困っていないか、生活の不安が残っていないかを確かめたいと思います。
こうした不安を受け止める対話については、患者との雑談は看護になる|何気ない対話にある意味にも書いています。
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参考にした資料
- 障害基礎年金の受給要件・請求時期・年金額/障害厚生年金の受給要件・請求時期・年金額(日本年金機構)── 受給要件、納付要件、令和8年4月分からの年金額、等級の状態
- 障害年金ガイド 令和8年度版(日本年金機構)── 初診日と障害認定日の定義、事後重症、傷病手当金との調整
- 障害年金の初診日証明書類のご案内(日本年金機構)── 受診状況等証明書、第三者証明、医療従事者による証明
- 国民年金・厚生年金保険 障害認定基準(日本年金機構掲載)── 障害認定日の特例、人工透析・ペースメーカー・人工肛門・在宅酸素などの等級
※この記事は一般的な情報であり、個別の判断に代わるものではありません。金額は令和8年4月時点のもので、毎年度改定されます。等級の判断は日本年金機構が行います。実際の請求は、お近くの年金事務所、病院のソーシャルワーカー、社会保険労務士にご相談ください。



