看護師が知っておきたい介護保険|40〜64歳の利用条件と、申請のタイミング

記事「看護師が知っておきたい介護保険|40歳から使える16の病気と、申請のタイミング」のアイキャッチ画像。明るい住宅の玄関ホール。壁に木目の手すりが取り付けられ、上がり框のそばに木製の腰かけ台が置かれている。たたきには履きやすそうな靴が一足そろえて置かれ、廊下の先のドアの向こうに庭の緑が見える。観葉植物の鉢が置かれ、やわらかい日中の光が差し込んでいる。左側に「看護師が知っておきたい制度」の緑色のバッジと、記事タイトルが置かれ、右下に水彩タッチの象のキャラクターがいる。 🌿医療制度・お金のこと

介護保険は、65歳以上の方だけの制度ではありません。40〜64歳の医療保険加入者も、特定疾病が原因で要介護・要支援の状態となり、認定を受ければ利用できます。

退院支援では、年齢だけでなく、病気と生活上の支援の必要性をあわせて確認します。

この記事では、介護保険を「使える人」と「使えるようになるまで」を整理します。制度の全部ではなく、病棟の看護師が気づける場所に絞りました。

介護保険の利用対象、認定申請の流れ、費用、訪問看護の保険区分をまとめた早見図。省略されている条件と統計の時点は図の直下と本文に記載しています。
40〜64歳は、医療保険への加入と特定疾病による認定が必要です。認定前の利用は費用の確認が必要です。図の細かな条件は、次の補足を確認してください。
早見図の条件・資料の時点を確認する

図は概要です。40〜64歳は医療保険への加入と、特定疾病による要介護・要支援認定が必要です。図の認定割合は令和4年度の資料によります。認定前の利用は暫定ケアプランと費用の確認が必要です。2・3割負担は一定以上の所得がある65歳以上の方が対象。別表第7のパーキンソン病には重症度の条件があり、特別指示の期間は最長14日(該当者は月2回・最大28日)です。詳しくは本文をご確認ください。

※この図は保存して使えます(スマホは長押し、パソコンは右クリック)。手元に入れておくと、必要なときにすぐ開けます。

Q1. 介護保険は「65歳から」ではありません

介護保険の加入者(被保険者)は、2つに分かれています。

  • 65歳以上:原因を問わず、要介護・要支援の認定を受けた方が利用できます。
  • 40〜64歳:医療保険に加入し、決められた16の特定疾病が原因で要介護・要支援の認定を受けた方が利用できます。

16の「特定疾病」

40〜64歳の医療保険加入者は、次の16の特定疾病が原因で要介護・要支援の状態になった場合に、認定の対象となります。病名があるだけで、自動的に利用できるわけではありません。(介護保険法施行令第2条)

  1. がん(医師が一般に認められている医学的知見に基づき回復の見込みがない状態に至ったと判断したものに限る)
  2. 関節リウマチ
  3. 筋萎縮性側索硬化症
  4. 後縦靱帯骨化症
  5. 骨折を伴う骨粗鬆症
  6. 初老期における認知症
  7. 進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症及びパーキンソン病
  8. 脊髄小脳変性症
  9. 脊柱管狭窄症
  10. 早老症
  11. 多系統萎縮症
  12. 糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症及び糖尿病性網膜症
  13. 脳血管疾患
  14. 閉塞性動脈硬化症
  15. 慢性閉塞性肺疾患
  16. 両側の膝関節又は股関節に著しい変形を伴う変形性関節症

脳梗塞などの脳血管疾患も含まれます。がんはすべてが対象ではなく、上記の条件に該当するものに限られます。特定疾病への該当は、主治医意見書などをもとに確認されます。

逆に、交通事故や転落による外傷は、この16に入っていません。特定疾病は「加齢に伴って生ずる心身の変化に起因する」という考え方で選ばれているためです。同じように麻痺が残っても、原因によって扱いが変わります。

Q2. 退院後に必要なら、入院中から申請を相談します

市区町村に申請し、認定調査や主治医の意見をもとに審査され、要支援・要介護などの結果が通知されます。結果が出るまで原則30日以内ですが、延びる場合もあります。

認定は申請日にさかのぼって有効になります。入院中でも申請できるので、退院後に介護が必要そうな場合は、本人・家族の意向や病状を確認し、入退院支援部門や市区町村に早めに相談します。

結果が出る前にサービスが必要な場合は、仮のケアプラン(暫定ケアプラン)などを相談します。認定結果によっては自己負担が増えるため、申請しただけで安心とは言えません。利用前にケアマネジャーなどと費用を確認します。

認定には有効期限があります。利用を続ける場合は更新が必要です。介護の必要度が変わったときも、担当ケアマネジャーなどに相談します。

Q3. 在宅サービスには、利用できる費用の枠があります

訪問介護や通所介護、介護保険の訪問看護などには、要支援・要介護度に応じた月の利用枠があります。枠を超えた分は、全額自己負担になります。

すべてのサービスが同じ枠ではなく、住宅改修などには別の決まりもあります。看護師が金額を暗記するより、必要な支援をどのくらい利用できるかをケアマネジャーと確認することが大切です。

Q4. 1割負担でも、別にかかる費用があります

利用者負担は原則1割です。一定以上の所得がある65歳以上の方は2割・3割となる場合があります。実際の割合は「介護保険負担割合証」で確認します。

施設では、食費や居住費もかかります

1〜3割なのは介護サービス費の部分です。施設では食費・居住費・日常生活費などもかかります。「1割だから大丈夫」ではなく、月の支払い総額を確認します。

ケアプランの作成費には、自己負担がありません

居宅介護支援によるケアプラン作成は、全額が保険給付されます。この作成費に利用者の自己負担はありません。

負担が重いときは、軽減制度を確認します

  • 高額介護サービス費:対象となる介護サービスの自己負担が、月の上限を超えた場合の制度。
  • 食費・居住費の軽減:所得や預貯金などの条件を満たす方が対象。
  • 医療と介護の自己負担の合算:両方の費用がかかる世帯の負担を軽くする制度。

それぞれ対象費用と条件が異なります。食費や、利用枠を超えた分まで一律に上限で抑えられるわけではありません。担当ケアマネジャーや市区町村に確認します。

Q5. 訪問看護は、医療保険か介護保険か

看護師にとって、いちばん近い話です。

原則は「介護保険が優先」

要支援・要介護の認定を受けた方の、自宅等での訪問看護は、原則として介護保険を使います。訪問介護や通所介護などと、月の利用枠の中で組み合わせます。

医療保険を使う場合もあります

末期のがんなど、国が定める病気や状態に当てはまる場合や、急に病状が悪化して特別訪問看護指示書が出た期間などは、医療保険になることがあります。同じ病名でも条件があるため、主治医・訪問看護ステーション・ケアマネジャーで確認します。

詳しい対象や日数は、厚生労働省の訪問看護の案内を参照してください。

なぜ、これを知っておくのか

「どちらの保険を使うか」は、訪問看護の費用を、どちらの保険で支えるかという話です。本人が、好きな方や安い方を選ぶ仕組みではありません。

例えば、退院後の生活に「訪問看護」「ヘルパー」「デイサービス」が必要な方を考えてみます。

訪問看護に介護保険を使う場合は、この3つを、要介護度などに応じた月の利用枠の中で組み合わせます。限度額を超えた分は全額自己負担になるため、必要な回数と費用をケアマネジャーと相談します。

病気や状態が決められた条件に当てはまり、訪問看護に医療保険を使う場合は、その訪問看護費は介護保険の利用枠に含まれません。介護保険の枠は、ヘルパーやデイサービスなどに使えます。ただし、訪問看護が無料になったり、回数に制限がなくなったりするわけではありません。

また、介護保険の枠が足りないという理由だけで、訪問看護を医療保険に変更することはできません。

どちらの保険にも負担割合や料金の決まりがあるため、「医療保険なら得」「介護保険なら損」とは一概に言えません。

退院前に保険の種類を確認するのは、必要な支援をどのくらい利用でき、月にいくらかかるのかを、本人・家族と具体的に考えるためです。

Q6. 看護師が気づける場面は、3つあります

① 40〜64歳の患者さんを見たとき

年齢だけで対象外とせず、医療保険への加入と、特定疾病による介護・支援の必要性を確認します。病名だけで利用の可否を決めず、主治医や入退院支援部門につなぎます。

② 「認定が出てから」と言われたとき

認定は申請日にさかのぼって効力を生じます。申請の時期と、認定前のサービス利用の必要性を相談します。暫定利用には、認定結果によって自己負担が生じる点も含めた確認が必要です。

③ 家族が「1割だから大丈夫」と言ったとき

施設の居住費・食費や、在宅サービスの限度額を超えた分など、1〜3割負担とは別にかかる費用を確認します。本人・家族が月の支払い総額を把握できるよう、相談先につなぎます。

そして、抱え込まない

退院支援は、看護師だけで抱える必要はありません。本人・家族の意向、生活上の困りごと、必要な医療・ケアを、ソーシャルワーカー、ケアマネジャー、地域包括支援センターなどと共有します。

生活の中で必要な支援に気づき、相談先につなぎ、その後の調整状況や、本人・家族の不安が残っていないかも確認する。制度の説明と、日々の看護で把握した情報を結びつけていきたいと思います。

補足:今後の制度改正を調べたい方へ

制度改正は、内容ごとに施行時期が異なります。これから使う制度と、今後施行される内容は分けて確認します。詳しくは厚生労働省「社会福祉法等の一部を改正する法律の概要」をご覧ください。

まとめ ── 覚えるのは4つでいい

  1. 40〜64歳の医療保険加入者も、16の特定疾病が原因で要介護・要支援の認定を受ければ利用できる
  2. 認定は申請日にさかのぼる。認定前の利用は暫定ケアプランと費用の確認が必要
  3. 1割負担でも、限度額を超えた分と、施設の居住費・食費は別にかかる
  4. 要支援・要介護認定者の訪問看護は原則介護保険。病気や状態によって医療保険になる場合もある

制度を全部覚えることより、年齢・病気・生活上の支援の必要性・費用を確認し、適切な相談先につなぐことを、退院支援の中で大切にしたいと思います。

わたしたちは、患者さんの生活のいちばん近くにいます。血圧や創部と同じくらい、家に帰ったあとどうなるかを見ていい立場にいると思っています。

わたしは、看護が好きです。
だからこそ、看護の価値を問い続けていたいと思っています。

「退院後、どんなことが心配ですか。必要な支援と費用を、一緒に確認しましょう」。家に帰ってからの生活を、本人・家族や支援者と具体的に考えていきたいと思います。
こうした不安を受け止める対話については、患者との雑談は看護になる|何気ない対話にある意味にも書いています。

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参考にした資料

※この記事は一般的な情報であり、個別の判断に代わるものではありません。金額や条件は2026年9月時点のもので、制度改正で変わります。実際の申請・利用は、お住まいの市区町村、ソーシャルワーカー、ケアマネジャー、地域包括支援センターにご確認ください。