インペラ(Impella)の見方の基本|看護師のためのアセスメント入門

🌿補助循環・ICUの看護

Impellaの制御装置の前に立つと、波形と数字がいくつも並んでいます。

どれを見ればいいのか。どうなっていれば正常なのか。最初は、そこからつまずきます。

この記事は、その入口です。画面に何が出ていて、何がそろっていれば大丈夫なのかを整理します。ひとつずつの深い話は、それぞれの記事へ送ります。

Q1. Impellaは、何をしている機械ですか?

左室から血液を吸って、大動脈へ送っています。

この「吸って、送る」という動きが、2つのことを同時に起こします。

  • 流れを助ける ── 送り出した分だけ、全身へ届く血液が増えます
  • 左室の負担を減らす ── 吸い出した分だけ、左室にたまる血液が減ります(Unload)

ハンドブックには、心拍出量の関係がこう書かれています。

心拍出量(CO)= Impellaの補助流量 + 自己心の拍出流量

つまり、いま体に流れている血液は、機械が出した分と、心臓が自分で出した分の合計です。ここが分かっていると、「補助を下げたときに何を見るのか」がつながってきます。

Q2. 画面には、何が出ているのですか?

大きく4つのかたまりに分かれています。

かたまり出ているもの
流量の情報現在の補助流量、最大/最小流量、カテーテルが動いているかのアイコン
パージシステムの情報パージ流量、パージ圧
CO / CPO心拍出量と、圧×流量をあらわすCPO
電源の情報バッテリー残量、電源プラグの状態

そして中央に、波形が表示されています。

Impellaコントローラの配置画面の見方:Ao配置シグナル(大動脈圧)、LV配置シグナル(左室圧の推定波形)、モータ電流(適正位置では脈動性)、Pレベル・補助流量、パージ流量・パージ圧の説明図
Impellaコントローラ 配置画面の見方(イメージ図。表示や配置は機種により異なります)

電源のところは、意外と見落とされます

プラグの表示が灰色なら電源で動いていて、灰色に赤い×がついていればバッテリーで動いているという意味です。

検査から戻ったあと、ベッドを動かしたあと。差し忘れは、そういうときに起きます。

Q3. 波形は、2つの組み合わせで読みます

ここが、この記事でいちばん大事なところです。

制御装置は、2つの波形の組み合わせでポンプの位置を見張っています。

  • 位置波形(Ao) ── 光学センサが拾っている圧の波形
  • モータ波形 ── 吸入部と吐出部の圧の差、モータの速度によって変わるモータ消費電流の波形

この2つが、どう組み合わさっているか。それだけで位置が読めます。

位置波形モータ波形意味
大動脈圧波形パルス状適正な位置
心室圧波形フラットポンプが心室内に入りすぎ
大動脈圧波形フラットポンプが大動脈内に出てしまっている

覚えるのは、いちばん上の行だけで足ります。

「大動脈圧波形」と「パルス状」がそろっていれば、位置は正しい。

そして、どちらかがフラットになっていたら、位置がずれています。心室圧波形なら入りすぎ、大動脈圧波形のままフラットなら出すぎ。ここだけ押さえておけば、画面を見て「おかしい」と言えます。

LV波形は、計算で出しているものです

画面にはもうひとつ「位置波形(LV)」が出ることがあります。これは直接測った値ではなく、Ao波形とモータ波形から算出したものです。

ハンドブックには、はっきりこう書かれています。

位置波形(LV 位置波形)は診断目的で使用しないでください

見てはいけないという意味ではありません。それだけで判断してはいけないということです。

Q4. 位置がずれると、どうなりますか?

アラームが出ます。たとえば「ポンプ位置 大動脈内」のとき、画面の指示はこうなります。

  1. 画像が利用できるまで、P-2にする
  2. 画像を用いて位置を調整する
  3. 任意の補助レベルに設定し、画像で位置を確認する

位置の調整は、画像を見ながら医師が行います。看護師がすることは、気づいて呼ぶこと、そして補助レベルを下げる指示に対応することです。

そして位置がずれやすい場面は決まっています。体位変換のあと、ベッドを動かしたあと、検査から戻ったあと。動かしたら波形を見る、を習慣にしておくと早く気づけます。

Q5. 心エコーでは、何を見ているのですか?

位置を確かめる方法は、波形だけではありません。心エコーでは距離を見ています。

  • Impella CP ── 吸入部から大動脈弁まで 約3.5cm
  • Impella 5.5 ── 吸入部から大動脈弁まで 約5.0cm

この数字を知っていると、医師がエコーで何を測っているのかが分かります。

不適正な位置の例も、ハンドブックに載っています。吸入部が乳頭筋に接触している心室に入りすぎている吐出部が大動脈弁に近すぎる。どれも、うまく吸えなくなったり、弁に負担がかかったりする状態です。

Q6. 数字は「今」ではなく「動き」で見ます

ここまで見てきた数字は、どれも1回の値では意味が決まりません。

  • 補助流量が、設定した目標を下回ってきていないか
  • モータ消費電流が、じわじわ下がっていないか
  • パージ圧が、上がってきて/下がってきていないか
  • CPOが、0.6を切ってきていないか

どれも「さっきと比べてどうか」で読みます。だから、勤務のはじめに一度、数字を控えておくことに意味があります。

比べる相手がないと、変化には気づけません。

まず、この5つから

  • 位置波形とモータ波形の組み合わせ(大動脈圧波形+パルス状なら適正)
  • 補助流量が目標を下回っていないか
  • パージ流量とパージ圧
  • CPO(0.6を切っていないか)
  • 電源プラグが抜けていないか

全部を一度に覚える必要はありません。まず波形の組み合わせだけ、と決めても十分です。

おわりに

Impellaの画面は、情報が多く見えます。でも、見るところを決めてしまえば、そんなに多くありません。

波形が2つそろっているか。流れているか。パージが動いているか。電源がつながっているか。

そして、さっきと違わないか。

機械の数字を読むことは、機械のためではありません。その向こうにいる患者さんの体が、いまどうなっているかを知るためです。

それぞれの詳しい話は、こちらに

圧と流量をあわせて見るCPOは、インペラ(Impella)のCPOとは|数値の見方と看護アセスメントにまとめています。

いちばんよく出会うサクションは、インペラ(Impella)のサクションアラーム|原因と看護の対応をどうぞ。

パージ液のことは、インペラのパージ液|なぜブドウ糖なのか、濃度で何が変わるのかに書いています。

アラームが鳴ったときは、インペラ(Impella)のアラーム対応早見表|原因と最初にやることを引いてください。

どんな患者さんに使う機械なのかは、インペラ(Impella)の適応とは|どんな患者さんに使うのか、看護師目線で整理にまとめています。

観察項目の全体像は、インペラ(Impella)看護Q&A完全ガイド|観察項目・アラーム対応まとめにあります。

わたしは、看護が好きです。
だからこそ、看護の価値を問い続けていたいと思っています。

参考にした資料

  • Impella テキストブック(2022年版・日本アビオメッド)── 制御装置の表示画面、ポンプ位置モニタリングの仕組み、位置波形とモータ波形の組み合わせ、位置関連アラームの対応、心エコーによる位置確認の基準、心拍出量と補助流量の関係

※この記事は一般的な情報であり、個別の医療判断に代わるものではありません。表示や数値は機種・ソフトウェアのバージョンによって異なります。位置の調整や補助レベルの変更は、必ず主治医・臨床工学技士・院内の基準にしたがってください。