あなたは、声をかける前に感じることがありますか。
患者さんの部屋に入ると、真っ先に目がいくのは患者さんです。
目線が合えば、そこから自然に会話は始まります。
けれど、患者さんが必ず看護師を見るとは限りません。
天井を見ていること。
窓の外に視線を流していること。
テレビを見ていること。
目を閉じていること。
眠っていること。
鎮静薬で意識がないこともあります。
たくさんの場面の中で、躊躇なく会話が始まることのほうが、実は少ないのかもしれません。
私がここで伝えたいのは、会話から始めない看護がある、ということです。
あえて声をかけない。
その前に、患者さんを見て、感じる時間を持つ。
「第一印象」という言葉があります。
救急外来や初診では当たり前に用いられる診察の手法です。
看護師の言葉で言うならば、
第一印象は直感ではない。
五感と知識と経験が融合した、瞬時の全身評価である。
患者と出会った最初の数秒から数十秒で、五感を総動員して行う全体評価。
・意識
・呼吸
・循環
・表情、姿勢、動き
・その場の空気感や違和感
それらを一瞬で統合する、瞬間的な全身スクリーニングです。
第一印象は、当たります。 何度も一瞬で緊張感が最大になり、自分の意識や行動を集中させたことがあります。危険だと感じた患者さんは、やはり危険な状態であることが多い。 会話もしていない。 触れてもいない。 バイタルも測定していない。 それでも、見て感じることには確かな相関があると、私は臨床で学んできました。
そしてもう一つ。
身体だけではなく、心の第一印象もあります。
ぼんやりしている様子。
何かに集中している様子。
その瞬間の姿は、患者さんが隠そうとしても隠しきれない「今」を映しているように感じます。
声をかける前に感じることを優先するのは、長年染みついた観察の習慣だからです。
もう一つの理由は、その場面そのものが、患者さんの本当を見せてくれるから。
声をかけてしまえば、空気は動きます。
けれど、かける前の静止した時間には、その人のありのままがある。
私はその時間を、できるだけ丁寧に受け取りたいと思っています。
私は、いつも自分に問いかけています。
「今、看護師としてそこに立っていますか。」
ちゃんと観察できていますか。
ちゃんと気づけていますか。
自分を“看護師にする”ための言葉です。
日常でも、第一印象という言葉は使われます。
面接では身なりを整え、清潔感を大切にする。
けれど、そこで語られる第一印象と、私がここで言う第一印象は少し違います。
根拠のある第一印象。
目線が合わないのは、意識障害の可能性があるのではないか。
呼吸の浅さは、何かの前触れではないか。
感覚だけではなく、知識と結びついた印象です。
こんなところにも、看護はある。
そう思うから、私は「看護とは何か」を問い続けることができます。
今日もまた、たくさんの場面に出会いました。
声をかける前の、あの静かな一瞬に。
あなたの感じる瞬間は、どこにありますか。


